『死と砂時計』 鳥飼否宇 > 「このミス」完全読破 No.863
「このミステリーがすごい!」完全読破 No.863
『死と砂時計』 鳥飼否宇
「このミス」2016年版 : 13位
受賞(候補) : 「本格ミステリ大賞」受賞
総合ランキング :
年度ランキング : 「本格ミステリ・ベスト10」 9位
「ミステリが読みたい!」 9位
「黄金の本格ミステリー」 選出
読始:2015.12.3~ 読終:2015.12.7
読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"前"
読んだ版 : 単行本 <2015年1月>
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鳥飼否宇は(デビュー以来毎年1作は新作を発表しているとはいえ)多作という印象はあまりないのですが、昨年(2015年)は1~3月に3ヶ月連続で新作を発表するという驚きのリリースラッシュとなりました。
しかもその内容というのが、1月発売の本作こそノンシリーズ作品だったものの、2月にはバカミス作家としての人気&評価向上に多大な貢献を果たして来た“綾鹿市シリーズ”の最新作No.861「絶望的 寄生クラブ」、3月にはデビュー作以来続いているライフワーク的な“観察者シリーズ”の最新作『生け贄』と、著者を代表するシリーズの新作が並び立つことに。
さらに10月には、(はっきりとは公表してはいませんが)碇卯人名義で発表しているテレビドラマ『相棒』のオリジナル小説シリーズの最新作『杉下右京の多忙な休日』を発売しているので、大げさに言ってしまえば“2015年の新作を全て読めば鳥飼作品のあらゆる魅力を一気に堪能できる!”といった状態でした。
そしてそんな中、唯一のノンシリーズ作品であった本作にて、「このミス」ではNo.62「痙攣的」以来10年ぶり2作目となるランクインを果たし、「本格ミステリ・ベスト10」ではNo.118「官能的」以来2作目となるベスト10入りを果たすなど、著者の代表作となるほどの高い評価を受けたのですね。
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というわけで本作ですが、「魔王シャヴォ・ドルマヤンの密室」「英雄チェン・ウェイツの失踪」「監察官ジェマイヤ・カーレッドの韜晦」「墓守ラクパ・ギャルポの誉れ」「女囚マリア・スコフィールドの懐胎」「確定囚アラン・イシダの真実」から成る連作集です。
舞台となるのは、世界各国から集められた死刑囚を収容・処刑する(ジャリーミスタン首長国の)終末監獄で、親殺しの罪により収監された青年・アランが主人公。
そしてこの監獄には“監獄の牢名主”と呼ばれ看守や囚人たちから一目置かれている老人・シュルツがいて、頭脳明晰な推理力を持っていることから監獄内で起きた奇妙な事件の謎解きを頼まれたりもするのですが、アランはそんなシュルツに可愛がられていることもあり、助手役(ワトソン役)となって事件の謎に迫っていくことになります。
監獄内で起きていく事件は、思わずグッと食いついてしまうほどのインパクトある謎の提示がまずありますし、事件に関わる囚人や看守たちはいずれも強烈なキャラクターたちで、展開される推理劇や明かされる真相も(読む人の)体を痺れさせるほどの刺激が生み出され、連作としての身震いするほどに衝撃的なクライマックスが待ち受けているなど、まさに全編が“奇想”で覆われているような作品なのです。
そういった奇想ミステリというのは(バカミス作家としての一面を持つ)著者の魅力を最大限に活かせるものなのですが、それが世界中から様々なタイプの凶悪犯が集う終末監獄という特殊舞台&設定で繰り広げられることにより、非現実的ともいえる奇想的な要素も物語の中で自然に溶け込んでいますし、その一方で魅力的な奇想性が(制限をかけられることなく)伸び伸びと物語内で暴れまくっているようにも感じました。
つまりは、一般のミステリ好きの人でも楽しめる内容でありながら、従来の(バカミス系作品を中心とした)鳥飼作品のぶっ飛びまくった面白さも全開で入っているということなので、鳥飼作品を初読みしてみよう!と思った際に手にするのにこれ以上ないくらいに最適な作品なのではないでしょうか。
> 個人的評価 : ★★★★★ ★☆☆☆☆
☆★★★★ : 本格ミステリ度
☆★★★★ : ビックリ驚愕度
☆☆★★★ : 熱アクション度
☆☆★★★ : 鬼畜グログロ度
☆☆★★★ : 主キャラ魅力度
☆☆☆★★ : 人間味ドラマ度
☆☆☆★★ : 感涙ウルウル度
☆☆★★★ : 下ネタエッチ度
☆★★★★ : 衝撃バカミス度
☆☆★★★ : 気軽に読める度
* 個人的評価は、減点方式ではなく加点方式となっています
(★の数が少なくても面白くなかったということではありません)
<個人的評価&項目別評価>の詳しい説明・評価基準は
「このミス」完全読破 説明&読破本リストにてご確認ください
【 “鳥飼否宇” 関連記事 】
> No.863 「死と砂時計」
> No.861 「絶望的 寄生クラブ」
> No.439 「杉下右京の事件簿」("碇卯人"名義)
> No.296 「このどしゃぶりに日向小町は」
> No.122 「爆発的 七つの箱の死」
> No.118 「官能的 四つの狂気」
> No.062 「痙攣的 モンド氏の逆説」
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