『絶望的 寄生クラブ』 鳥飼否宇 > 「このミス」完全読破 No.861
「このミステリーがすごい!」完全読破 No.861
『絶望的 寄生クラブ』 鳥飼否宇
「このミス」2016年版 : 投票数0
受賞(候補) :
総合ランキング :
年度ランキング : 「本格ミステリ・ベスト10」 28位
読始:2015.11.24~ 読終:2015.11.25
読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"前"
読んだ版 : 単行本 <2015年2月>
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『本格的』、『太陽と戦慄』、No.62「痙攣的」、『逆説探偵』、No.118「官能的」、No.122「爆発的」、No.296「このどしゃぶりに日向小町は」に続く“綾鹿市シリーズ”の8作目です。
このシリーズは大まかな舞台(綾鹿市)が一緒で共通して登場する(主役級ではない)人物がいるという繋がりがあるくらいなものなので、刊行順に読んでいく必要はありません。
さらに本作はそんな“綾鹿市シリーズ”の中でも、『本格的』に収録の「変態」、そして『官能的』に続く、増田米尊が主人公のシリーズの3作目でもあります。
こちらのシリーズとしても、別に前作までのネタバレやストーリー的に重要な繋がりなどないのでいきなり本作から読んでも問題ないですが、前作『官能的』は世界バカミス☆アワードを受賞し、「本格ミステリ・ベスト10」でベスト10に入り、日本推理作家協会賞の候補となるなど、バカミス作品としても本格ミステリ作品としても大変高い評価を得たので、どうせならそちらから読んでみてはいかがでしょうか。
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まず主人公の増田米尊について簡単に説明してみますと、(中年ながら独身&童貞の)綾鹿科学大学大学院・准教授(数学者)なのですが、得意とするのがストーキングや(男女の営みの)覗きなどを基にしたフィールドワークでして、本人は真面目に調査・研究しているものの、傍から見れば変態でしかないのです。
ただ単なる変態准教授(変態学者)というわけでもなくて、快楽的刺激を受けた途端に頭脳が活性化され超絶天才的な発想力や推理力を得るほどに変貌を遂げるため、“動物が成長の過程で形態に大きな変化を生じる”という意味での“変態”にも掛かっています。
そんな増田米尊准教授ですが、今回は異常なほどのモテ期を迎え、監視者の気配を常々感じ、さらには学会で発表するために用意していた原稿が何度も(作者不明の)小説に入れ替わるなど、身の回りに不思議な出来事がいくつも起きたことから、(その謎を解いていくというよりは)翻弄され続けていきまして、終盤では鳥飼作品らしいとんでもない展開へと突き進んでいくのです。
そして本作の一番の特徴というのが、これまでに雑誌やアンソロジー作品集で発表していた短編3作(「処女作」「問題作」「失敗作」)と書き下ろし短編1作(「出世作」)を本作の中に組み入れていることでしょう。
それぞれが(バカミスとしてもエログロ作品としても)強烈すぎるインパクトを放つ独立した短編でありながら、見事なアイデアと手腕によってこの長編の中に溶け込ませていまして、その分長編作品としての完成度は下がっているかもしれないものの、そんな物語としての歪さもバカミス的にはかえって変態的な魅力となっているようでもありますからね。
なので、同年に発売されたNo.863「死と砂時計」は「本ミス」「早ミス」でベスト10入りし「このミス」にもランクインするなどかなり高い評価を受けましたが、本作の方をより偏愛しているという鳥飼作品(のバカミス)好きの人も(自分を含めて)結構な割合でいるのではないでしょうか。
> 個人的評価 : ★★★★★ ★☆☆☆☆
☆★★★★ : 本格ミステリ度
☆☆★★★ : ビックリ驚愕度
☆☆☆★★ : 熱アクション度
☆☆★★★ : 鬼畜グログロ度
☆★★★★ : 主キャラ魅力度
☆☆☆★★ : 人間味ドラマ度
☆☆☆☆★ : 感涙ウルウル度
★★★★★ : 下ネタエッチ度
★★★★★ : 衝撃バカミス度
☆☆☆★★ : 気軽に読める度
* 個人的評価は、減点方式ではなく加点方式となっています
(★の数が少なくても面白くなかったということではありません)
<個人的評価&項目別評価>の詳しい説明・評価基準は
「このミス」完全読破 説明&読破本リストにてご確認ください
【 “鳥飼否宇” 関連記事 】
> No.863 「死と砂時計」
> No.861 「絶望的 寄生クラブ」
> No.439 「杉下右京の事件簿」("碇卯人"名義)
> No.296 「このどしゃぶりに日向小町は」
> No.122 「爆発的 七つの箱の死」
> No.118 「官能的 四つの狂気」
> No.062 「痙攣的 モンド氏の逆説」
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