『影の中の影』 月村了衛 > 「このミス」完全読破 No.844
「このミステリーがすごい!」完全読破 No.844
『影の中の影』 月村了衛
「このミス」2016年版 : 12位
受賞(候補) :
総合ランキング :
年度ランキング :
読始:2015.10.6~ 読終:2015.10.7
読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"前"
読んだ版 : 単行本 <2015年9月>
影の中の影 月村了衛 新潮社 2015-09-18 売り上げランキング : 22645 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
エンタメ小説の中には“冒険小説”というジャンルがありますが、“冒険”という字面の印象からすると映画『インディ・ジョーンズ』のような財宝探しアドベンチャー的な世界観の探検小説をイメージしてしまうかもしれません。
しかし(少なくともここ数十年の日本における)冒険小説はそういった探検小説だけでなく、(バトルやハードボイルドなどの要素が絡んだ)激しいアクションシーンがメインとなる作品も含まれる、というか作品数の割合からするとアクション系の方がメインとなっているジャンルなのです。
そんな冒険小説ですが、「このミス」初期(80-90年代)にはランキングの上位に多数の作品を送り込むなどエンタメ小説界の中心的ジャンルだったものの、00年代に入ると次第に刊行数が目に見えて減るなど衰退していき、このジャンルの象徴的存在であった日本冒険小説協会も設立者であった内藤陳の死去により2012年に解散となり、同時に日本冒険小説協会大賞も終了しています。
ただそんな中で”冒険小説”というジャンルにこだわって作品を発表しているのが月村了衛で、昨年(2014年)には日本推理作家協会賞を受賞し「このミス」6位&本屋大賞5位のNo.782「土漠の花」、そして今年(2015年)はNo.821「槐(エンジュ)」に本作と、評価の高い冒険小説を次々と発表しているのですね。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ジャーナリストである仁科曜子が、(中国の人民解放軍による暴虐から逃れるため)日本に潜伏しているウイグル人コミュニティーの隠れた実力者と取材のため極秘に接触しようとしたところ、その場に襲撃して来た何者かがそのウイグル人を殺害して逃亡。
この事件をきっかけにして仁科は(同じく日本に潜伏中の)ウイグル人グループがアメリカに亡命するのを手助けすることになったのですが、ウイグル人に対する悪行を世間に広められたくない中国側は暗殺専門の特殊部隊を刺客として送り込み、仁科たちに向かって襲い掛かって来ます。
それに対して仁科は、取材対象である暴力団・矢渡組の幹部である菊原哲治に気に入られていることもあり、事情を知った菊原に命じられた若頭の新藤を始めとした精鋭たちに護衛されることになるので、“日本のヤクザ vs 中国の暗殺部隊”という構図に。
そのため、現代日本を舞台にしていながら、お互いに(日本社会の法律・常識・ルールなど完全に無視した)拳銃あり武器あり肉弾戦ありの激しすぎる戦闘となりますし、それが次々と場所を変えながら(タイムリミットもありつつ)ほぼ全編に渡って繰り広げられていくので、とにかく(読んでいて)圧倒されていることに気づく間もないくらいに怒涛の勢いでバトルアクション満載の物語が突き進んでいくのですね。
そこにさらに、ベタ過ぎて先の展開が読めてしまうのだけれど、分かっていながら興奮したりドキドキワクワクしたり感動してしまうような人間ドラマも加わり、そこで油断していると思わぬサプライズに驚かされてしまったりもするので、まさにエンタメ小説のあらゆる魅力をド迫力&ド直球に描いたノンストップ・バトルアクション作品でした。
ただ、『土漠の花』に比べると物語的な読み応えや濃厚さでは劣りますし、ベタな展開が好きでない人だとあまりのめり込むことが出来ないかもしれないので、そこら辺で好みの差が出てしまうかもしれませんが、ただこんなシンプルながら単純に心の底から楽しめてしまうエンタメアクション作品を今書ける作家は月村了衛しかいないと思うので、物語に対して身を委ねるような感じでもいいので本作ならではの魅力を堪能してほしいですね。
> 個人的評価 : ★★★★★ ★★★☆☆
☆☆☆★★ : 本格ミステリ度
☆☆★★★ : ビックリ驚愕度
★★★★★ : 熱アクション度
☆☆★★★ : 鬼畜グログロ度
☆☆★★★ : 主キャラ魅力度
☆☆★★★ : 人間味ドラマ度
☆★★★★ : 感涙ウルウル度
☆☆☆★★ : 下ネタエッチ度
☆☆★★★ : 衝撃バカミス度
☆★★★★ : 気軽に読める度
* 個人的評価は、減点方式ではなく加点方式となっています
(★の数が少なくても面白くなかったということではありません)
<個人的評価&項目別評価>の詳しい説明・評価基準は
「このミス」完全読破 説明&読破本リストにてご確認ください
【 “月村了衛”関連記事 】
> No.1077 「悪の五輪」
> No.1051 「東京輪舞」(後日更新予定)
> No.0994 「機龍警察 狼眼殺手」(後日更新予定)
> No.1001 「機龍警察 火宅」
> No.0972 「追想の探偵」
> No.0909 「水戸黄門 天下の副編集長」(後日更新予定)
> No.0880 「ガンルージュ」
> No.0844 「影の中の影」
> No.0821 「槐(エンジュ)」
> No.0782 「土漠の花」
> No.0777 「ミステリマガジン700 【国内篇】」
> No.0722 「機龍警察 未亡旅団」
> No.0586 「機龍警察 暗黒市場」
> No.0492 「機龍警察 自爆条項」
> No.0390 「機龍警察」
「怪盗グリフィン対ラトウィッジ機関」法月綸太郎 <<< PREV
NEXT >>> 「赤い博物館」大山誠一郎
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
>>> 「このミス」完全読破 説明&読破本リスト <<<
« ◎名古屋GP(2015年)穴馬予想&結果 | トップページ | ◎兵庫GT(2015年)穴馬予想&結果 »
「01.「このミス」完全読破(ミステリ小説)」カテゴリの記事
- 「このミステリーがすごい!2022年版」ランキング(順位)予想(2021.02.03)
- 「このミス2022年版」月別ランクイン候補作品(2021年2月)(2021.01.31)
- 「このミス」ランクイン作品文庫化リスト(2021年1月)(2021.01.21)
- 「このミス2022年版」月別ランクイン候補作品(2021年1月)(2021.01.09)
- 「このミス」ランクイン作品文庫化リスト(2020年12月)(2020.12.20)