『片桐大三郎とXYZの悲劇』 倉知淳 > 「このミス」完全読破 No.856
「このミステリーがすごい!」完全読破 No.856
『片桐大三郎とXYZの悲劇』 倉知淳
「このミス」2016年版 : 7位
受賞(候補) :
総合ランキング :
年度ランキング : 「本格ミステリ・ベスト10」 2位
「週刊文春ミステリーベスト10」 6位
「ミステリが読みたい!」 12位
「黄金の本格ミステリー」 選出
読始:2015.11.7~ 読終:2015.11.8
読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"前"
読んだ版 : 単行本 <2015年9月>
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倉知淳は、1994年のデビュー以来、“猫丸先輩シリーズ”を始めとした本格ミステリ作品を次々と発表し、『壷中の天国』で本格ミステリ大賞を受賞するなど高い評価を受けていました。
しかし、2005年の『猫丸先輩の空論』以降しばらく作品の発表が途絶え、同じく2005年を最後に新作が出なくなった麻耶雄嵩と共に本格ミステリ系寡作作家の代表格的存在に。
そして2010年になってようやく短編作品集No.524「なぎなた」とNo.523「こめぐら」を発表すると(ちなみに麻耶雄嵩も同年に久々の新刊を2作発表)、2013年には2カ月連続でライトなミステリ短編集『シュークリーム・パニック ‐生チョコレート‐』 『シュークリーム・パニック ‐Wクリーム‐』を発売し、本作にて久々の(長編/連作形式として)本格的なミステリ作品の発表となりました。
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というわけで本作ですが、「冬の章 ぎゅうぎゅう詰めの殺意」「春の章 極めて陽気で呑気な凶器」「夏の章 途切れ途切れの誘拐」「秋の章 片桐大三郎最後の季節」の中編4編を収録した連作集です。
若い時から活躍している国民的大俳優であり大御所時代劇スターであった片桐大三郎は、突然聴覚を失ったため役者業を引退し、現在は芸能プロダクション会社“片桐プロモーション”の社長(通称:座長)に。
野々瀬乃枝はこの会社の新米社員で、座長(片桐)に常に付き従いながらノートパソコンとタブレットを使って座長の耳の役割を担っているのですが、その座長というのが犯罪捜査に首を突っ込み事件を解決したがる趣味を現役時代から続けているので(そして未解決事件を見事に解決するなどの実績があるため)、乃枝も座長の探偵趣味に自然と付き合わされることになるのですね。
乃枝と座長を中心としたやり取りはとてもコミカルで、(三船敏郎や松平健など何人もの実在大物俳優を掛け合わせたような)大御所の役者である座長の経歴を活かしたエピソードの数々も興味深くて面白いので、作品全体が楽しい雰囲気で覆われています。
それらを基に展開されていく本格ミステリ劇は当然の如く(豪快さと繊細さとが混じり合った)超一級品ですし、それがコミカルなやり取りやエピソードとも絶妙に絡み合うだけでなく、かなりエグい場面もあるなど、読めば本格派ながら一筋縄ではいかない倉知ミステリの魅力を満足なほどに味わうことできるのではないでしょうか。
そして本作を語るうえで忘れてはならないのが、タイトルや設定などからも予測できるように、エラリー・クイーン(バーナビー・ロス)の“悲劇4部作(『Xの悲劇』『Yの悲劇』『Zの悲劇』『レーン最後の事件』)にオマージュを捧げていることで、オマージュ元をいかに踏襲しつつ違いを生み出しているのかが一番の読み所でもあるため、未読の場合は先に“悲劇4部作”を読んでおいた方が本作をより堪能できると思います(本作を先に読むと“悲劇4部作”のネタバレにもなりますし)。
> 個人的評価 : ★★★★★ ☆☆☆☆☆
本格ミステリ度 : ★★★★★ 鬼畜グログロ度 : ★★
ビックリ驚愕度 : ★★★★ おどろおどろ度 : ★★
熱アクション度 : ★★ 主キャラ魅力度 : ★★★★
恋愛ラブラブ度 : ★ 人間味ドラマ度 : ★★
下ネタエッチ度 .: ★ .感涙ウルウル度 : ★★
衝撃バカミス度 : ★★★ 気軽に読める度 : ★★★
* 個人的評価は、減点方式ではなく加点方式となっています
(★の数が少なくても面白くなかったということではありません)
<個人的評価&項目別評価>の詳しい説明・評価基準は
「このミス」完全読破 説明&読破本リストにてご確認ください
【 “倉知淳” 関連記事 】
> No.1002 「皇帝と拳銃と」
> No.0856 「片桐大三郎とXYZの悲劇」
> No.0524 「なぎなた」
> No.0523 「こめぐら」
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「01.「このミス」完全読破(ミステリ小説)」カテゴリの記事
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