『砂の街路図』 佐々木譲 > 「このミス」完全読破 No.840
「このミステリーがすごい!」完全読破 No.840
『砂の街路図』 佐々木譲
「このミス」2016年版 : 63位
受賞(候補) :
総合ランキング :
年度ランキング :
読始:2015.9.21~ 読終:2015.9.23
読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"前"
読んだ版 : 単行本 <2015年8月>
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佐々木譲は、80年代から00年代前半まではNo.344「ベルリン飛行指令」、No.401「エトロフ発緊急電」、No.024「ストックホルムの密使」の“第二次世界大戦秘話三部作”を始めとした冒険・歴史小説を中心に発表して高い評価を受けていました。
そして00年代半ば以降は警察小説を主に手掛けるようになり、横山秀夫・今野敏らと共に警察小説ブームの基盤を作り、今でもそれを引っ張る役割を担うほどの人気作家となっています。
そういったジャンル以外の特徴としては、出身地であり現在の住居地でもある北海道を舞台とした作品が多くあることでして、本作はそんな北海道に縁の深い作家ならではの魅力が込められた作品でした。
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20年前に突然北海道の地方都市へと向かった父がその地で事故死したという過去を持つ、高校教師の岩崎俊也が主人公。
父の死後に人が変わったように口数が少なくなった母が亡くなり四十九日を終えたのをきっかけに、常識人で大酒も飲まない父がなぜ家族に何も告げず学生時代を過ごした地へ行ったのか、そしてその時に何があって運河に落ち事故死することになったのかを調べるため、北海道の通称・運河町を訪れます。
そこからは、少ない手掛りを基に運河町内を歩き回りながら父や父の事件のことを知る人々を訪ねていくのですが、新たな人物と会って新たな情報や謎を得ていくごとに(遙か遠くにある)真相へと徐々に向かっていく展開はさすがの読み応えがありましたし、父や父の事件についてだけでなく、古さを未だ残す運河町の明暗伴う歴史をも掘り起こし浮かび上がらせていく描き方もベテラン作家らしい豊潤な読み味がありました。
しかし、主人公は町の人々が心の蓋を閉じたままにしておきたいような過去をほじくり返していくかのようですし、そうしてたどり着く真相は後味が悪いものですし、派手な展開や演出はなく、ミステリ的にもそこまで意外性はないので、過去の佐々木譲作品好きであればあるほど本作に対して物足りなさを感じてしまいそうではあります。
ただ、本作の一番の魅力といえば、見知らぬ町を地図片手に歩きまわる主人公の動きを(表紙の裏に書かれている)町内地図を見ながらたどることにより、あたかも主人公と共に町内を行動しているように感じられ、さらに主人公が町の人々と会ったり町の歴史を紐解いていくことで読み手の頭の中でもこの架空の町が徐々にリアルに浮き上がっていくという、町巡りを疑似体験出来る部分なのではないかと(個人的には)思うので、これから読む人は(これまでの佐々木譲作品と同様の期待を込めるのではなく)そういった楽しみ方を意識して読んでみてはいかがでしょうか。
> 個人的評価 : ★★★★★ ☆☆☆☆☆
本格ミステリ度 : ★★★ 鬼畜グログロ度 : ★★
ビックリ驚愕度 : ★★★ おどろおどろ度 : ★★
熱アクション度 : ★★ 主キャラ魅力度 : ★★★
恋愛ラブラブ度 : ★★★ 人間味ドラマ度 : ★★★
下ネタエッチ度 : ★★★ 感涙ウルウル度 : ★★
衝撃バカミス度 : ★★ 気軽に読める度 : ★★★
* 個人的評価は、減点方式ではなく加点方式となっています
(★の数が少なくても面白くなかったということではありません)
<個人的評価&項目別評価>の詳しい説明・評価基準は
「このミス」完全読破 説明&読破本リストにてご確認ください
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> No.685 「代官山コールドケース」
> No.615 「人質」
> No.563 「回廊封鎖」
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> No.505 「密売人」
> No.485 「警官の条件」
> No.424 「婢伝五稜郭」
> No.423 「五稜郭残党伝」
> No.401 「エトロフ発緊急電」
> No.344 「ベルリン飛行指令」
> No.298 「北帰行」
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> No.230 「廃墟に乞う」
> No.200 「警官の血」
> No.175 「暴雪圏」
> No.152 「警官の紋章」
> No.151 「警察庁から来た男」
> No.138 「うたう警官 (笑う警官)」
> No.048 「制服捜査」
> No.024 「ストックホルムの密使」
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