『ビッグデータ・コネクト』 藤井太洋 > 「このミス」完全読破 No.824
「このミステリーがすごい!」完全読破 No.824
『ビッグデータ・コネクト』 藤井太洋
「このミス」2016年版 : 23位
受賞(候補) :
総合ランキング :
年度ランキング : 「本の雑誌 2015年上半期ベスト1」 1位
「ミステリが読みたい!」 15位
「週刊文春ミステリーベスト10」 17位
読始:2015.7.8~ 読終:2015.7.14
読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"前"
読んだ版 : 文庫本 <2015年4月>
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藤井太洋は、セルフパブリッシング(自己出版)という形で『Gene Mapper -core-』を電子書籍販売すると、デビュー前の作家の個人出版作品としては異例の大ヒット作に。
続いて大幅に増補改稿して長編に仕上げたNo.653「Gene Mapper -full build-」を紙の本(文庫本)で発売すると、「SFが読みたい!」で4位にランクインし日本SF大賞の候補に選ばれるなど高評価を得て、セルフパブリッシング出身作家の第一人者として一躍注目を集めました。
ただそんな盛り上がりも今から思えば嵐の前の小雨程度なものでして、昨年(2014年)に発売したデビュー2作目のNo.744「オービタル・クラウド」は、日本SFの二大頂点である日本SF大賞&星雲賞をダブル受賞し「ベストSF2014」で1位に輝くなど(SF界では)これ以上はないほどの特大評価を受け、さらには「週刊文春ミステリーベスト10」で9位、「ミステリが読みたい!」で14位とミステリ系のランキングにも登場。
そして今年(2015年)9月には第18代日本SF作家クラブ会長に就任したということで、(自己出版による)電子書籍でデビューしてからわずか3年で早くも日本SF界の中心的存在(の一人)となったのですね。
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京都府警のサイバー特別捜査官・万田警部は、官民複合施設“コンポジタ”のシステム設計・開発プロジェクトリーダーが誘拐された事件の捜査を命じられることに。
万田が抜擢されたのは、かつて担当したXPウイルス事件において(容疑者として逮捕されたものの)不起訴処分となったITエンジニアの武岱修が今回の事件にも関わっている疑いがあるためで、万田は武岱の動向を探る目的もあり(IT知識の豊富な)武岱に捜査の協力を要請し、疑惑を晴らしたい武岱と利害関係が一致したことにより、共に事件解決へ向けて動き出すことになるのですね。
とにかくこの武岱のキャラクターが凄まじくて、ITを知り尽した凄腕のハッカーというだけでなく、(冤罪事件により有名人となってしまったため)顔を整形し、巨体を鍛え上げて戦闘能力が高く、街中などでも常に監視カメラに映らないよう行動したりカード類を使わないなど個人情報の漏洩に細心の注意を払い、相棒である弁護士の赤瀬香歩里と共に法律を盾に理論武装して身を守っていたりと、容姿も行動もエキセントリックで不気味で怪人的。
そんな“味方になれば心強いけれど敵に回せば恐ろしすぎる”男が、実際に万田たちにとって味方なのか敵なのか謎のまま話が進んでいくので、行動を共にしながら緊迫感が張り詰めている万田たちと武岱との関係性を追っていくだけでもゾクゾクするほどの面白さを堪能出来るはずです。
今回はSF要素としてはIT技術が進んだ極近未来社会といったくらいなもので、警察小説としての読み味が強いのですが、最新のIT技術が(付け焼刃ではなく)高度な専門性を基に取り入られているのでかなりリアルに感じられますし、今話題のマイナンバー制度など個人情報における危険性への警告やITエンジニアの過酷な労働環境などが描かれるなど社会派サスペンスとしての読み応えもあり、もちろんエンタメ作品としての完成度も高いので、まさに藤井太洋にしか生み出すことのできない、あらゆる面で本格派の“サイバー犯罪警察小説”といえるのではないでしょうか。
> 個人的評価 : ★★★★★ ☆☆☆☆☆
本格ミステリ度 : ★★ 鬼畜グログロ度 : ★★
ビックリ驚愕度 : ★★★ おどろおどろ度 : ★★
熱アクション度 : ★★★★ 主キャラ魅力度 : ★★★★
恋愛ラブラブ度 : ★ 人間味ドラマ度 : ★★
下ネタエッチ度 : ★ 感涙ウルウル度 : ★★
衝撃バカミス度 : ★★ 気軽に読める度 : ★★★
* 個人的評価は、減点方式ではなく加点方式となっています
(★の数が少なくても面白くなかったということではありません)
<個人的評価&項目別評価>の詳しい説明・評価基準は
「このミス」完全読破 説明&読破本リストにてご確認ください
【 “藤井太洋”関連記事 】
> No.824 「ビッグデータ・コネクト」
> No.744 「オービタル・クラウド」
> No.653 「Gene Mapper -full build-」
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