『黒野葉月は鳥籠で眠らない(少女は鳥籠で眠らない)』 織守きょうや > 「このミス」完全読破 No.838
「このミステリーがすごい!」完全読破 No.838
『黒野葉月は鳥籠で眠らない』 織守きょうや
* 文庫化の際に『少女は鳥籠で眠らない』に改題
「このミス」2016年版 : 19位
受賞(候補) :
総合ランキング :
年度ランキング : 「本格ミステリ・ベスト10」 18位
読始:2015.9.14~ 読終:2015.9.15
読んだ時期 : 「このミス」ランキング発表"前"
読んだ版 : 単行本 <2015年3月>
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織守きょうやは、講談社BOX新人賞Powersを受賞した『霊感検定』が2013年に(ラノベ色が強めのレーベルである)講談社BOXから発売されてデビューすると、その後も講談社BOXから『霊感検定2』『SHELTER/CAGE』を刊行。
そして今年(2015年)には"京谷"名義にて『記憶屋』で日本ホラー小説大賞(読者賞)を受賞したのですが(10月に発売予定)、そちらよりも先に本作で初の一般レーベルからの刊行となりました。
なお、本作収録の「三橋春人は花束を捨てない」は、本格ミステリ作家クラブが選ぶ2014年のベスト本格ミステリ短編&評論が収録された『ベスト本格ミステリ2015』に選出されています。
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というわけで本作は、「黒野葉月は鳥籠で眠らない」「石田克志は暁に怯えない」「三橋春人は花束を捨てない」「小田切惣太は永遠を誓わない」の4編を収録。
新人弁護士である木村龍一を主人公としたシリーズ作品集で、それほど大きな繋がりはなくどの話から読んでも楽しめる短編集のようではあるものの、主人公の成長物語的な側面があるので、全体を通しての連作集的な雰囲気があります。
主人公が所属する事務所では刑事事件を取り扱うことがあまりないため、先輩弁護士たちは面倒くさがって新人である主人公に(半ば押し付けるように)刑事事件を任せてしまうのですが、そんな経緯もあってか(主人公が)弁護を担当することになる刑事事件の被疑者や、民事事件の依頼者というのが、皆一様に(協力的ではあるけれど)重要な何かを隠しているような曲者揃いですし、そんな被疑者や依頼人と関わりの深い人物にも謎めいた部分が多いのです。
そんな事件に対して、事務所の稼ぎ頭である先輩弁護士・高塚の協力を得ながら主人公が挑んでいくリーガル・ミステリなのですが、事件自体の謎はもちろん、被疑者・依頼者が絡んだ人間ドラマの謎、特に被疑者・依頼者の(謎に包まれた)企みや思惑を解き明かすのに力が入っていて、真相が判明した途端に(展開されてきたドラマに)ズシリと重みが加えられる衝撃はかなりのものがありました。
それに、冷静に職務を遂行しなければならないのにどうしても被疑者・依頼者に感情移入して行動してしまう主人公の葛藤するドラマ性や弁護士としての成長ドラマ部分も、常に冷静で経験豊富な先輩弁護士との関係性や対比もあって惹き込まれますし、それによって事件が絡んだ物語の方にも心に刺激を与えるドラマ性が増していたように思います。
なので、タイトルや単行本の表紙はラノベ系作品のようではありますが、中身の方は(大作感や派手さはないものの)ミステリ的にもドラマ性でも良質な読み味となっていますし、法律の抜け道を見事に突いていくリーガル・ミステリとしての巧みさも素晴らしいので、“(2015年の)隠れた名作”といったポジションが似合いそうな作品でしたね。
> 個人的評価 : ★★★★★ ☆☆☆☆☆
本格ミステリ度 : ★★★★ 鬼畜グログロ度 : ★★
ビックリ驚愕度 : ★★★ おどろおどろ度 : ★★
熱アクション度 : ★★ .主キャラ魅力度 : ★★★
恋愛ラブラブ度 : ★★★ 人間味ドラマ度 : ★★★
下ネタエッチ度 .: ★★★ .感涙ウルウル度 : ★★
衝撃バカミス度 : ★★ 気軽に読める度 : ★★★★
* 個人的評価は、減点方式ではなく加点方式となっています
(★の数が少なくても面白くなかったということではありません)
<個人的評価&項目別評価>の詳しい説明・評価基準は
「このミス」完全読破 説明&読破本リストにてご確認ください
【 “織守きょうや” 関連記事 】
> No.898 「301号室の聖者」
> No.838 「黒野葉月は鳥籠で眠らない」
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