『インドクリスタル』 篠田節子 > 「このミス」完全読破 No.836
「このミステリーがすごい!」完全読破 No.836
『インドクリスタル』 篠田節子
「このミス」2016年版 : 32位
受賞(候補) : 「中央公論文芸賞」 受賞
総合ランキング :
年度ランキング :
読始:2015.9.3~ 読終:2015.9.9
読んだ時期 : 「このミス」ランキング発表"前"
読んだ版 : 単行本 <2014年12月>
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主人公は、人工水晶を製造・開発する会社の社長であるものの、未だに実権を握っている会長(元社長)の娘婿という立場もあって社長としての地位は名目上のものである藤岡。
そのため社長でありながら世界各地に足を延ばしてマザークリスタル(天然水晶の大型原石)の買い付けを担当しているのですが、現在会社が依頼を受けている“惑星探査機用の超高品質水晶振動子”の開発に必要な透明度の高い天然水晶がインドにあることが分かったため、藤岡はインドへ向かうことに。
しかし、ブラジル・中国・ロシア・アフリカなど様々な地での商談経験を持つ藤岡であってしても、他のどの国とも大きく異なるインドの国民性・風習・制度・社会・職業観などの前に大苦戦することになるのですね。
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というわけで本作は、ビジネス小説的な物語が中心となっているのですが、“他では決して手に入らない天然水晶を(定期的に)手に入れる”という主人公の目的が(読者にも)はっきりと提示されていますし、そのビジネスの舞台となるのが商取引に対する倫理観や形式など日本の常識が通じないインドということで難易度の高さもわかりやすいので、用語が少々難しくてもすぐに話に入り込むことが出来ると思います。
それに、主人公のビジネスマンとしての行動を追う中で、カースト制度の影響が残る差別社会や、貧富や生活環境の差が激しい格差社会、文明から隔離された生活を送る部族や暴力を意に介さない反政府勢力・テロリストの存在など、様々な面を見せる混沌としたインドという国の社会問題や現状が隠し事なくさらけ出すかのように描かれていくので、社会派ドラマとしての読み応えも圧倒的です。
ただそれだけでなく、藤岡によって不遇な状況から助け出された少女・ロサが驚異的な才能と神秘的なキャラクターの持ち主で、藤岡に対して神懸かり的な影響を与えていきますし、手に汗握るサスペンス的な展開を始めとして冒険活劇・土俗ホラー・暗黒小説など様々なエンタメ要素が詰め込まれているので、圧巻のエンタメ作品でもあるのですよね。
とはいえ基本は“社会派&ビジネス小説”なのでエンタメ要素のみを期待してしまうと(単行本で二段組500ページ超というボリュームもあり)他の部分に入り込めずに読む進め辛いかもしれませんが、ビジネス小説と社会派サスペンスとエンタメとがフルパワーでぶつかり合いながら一つの作品として奇蹟的に完成した傑作だと思うので、読めばインドが舞台だからこそ生まれ得た骨太の物語に圧倒されつつその面白さを堪能出来るのではないでしょうか。
> 個人的評価 : ★★★★★ ★★☆☆☆
本格ミステリ度 : ★ 鬼畜グログロ度 : ★★★
ビックリ驚愕度 : ★★ おどろおどろ度 : ★★★
熱アクション度 : ★★★ .主キャラ魅力度 : ★★★
恋愛ラブラブ度 : ★★ 人間味ドラマ度 : ★★★★
下ネタエッチ度 .: ★★★ .感涙ウルウル度 : ★★
衝撃バカミス度 : ★★ 気軽に読める度 : ★★
* 個人的評価は、減点方式ではなく加点方式となっています
(★の数が少なくても面白くなかったということではありません)
<個人的評価&項目別評価>の詳しい説明・評価基準は
「このミス」完全読破 説明&読破本リストにてご確認ください
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> No.693 「ブラックボックス」
> No.409 「廃院のミカエル」
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