『透明カメレオン』 道尾秀介 > 「このミス」完全読破 No.827
「このミステリーがすごい!」完全読破 No.827
『透明カメレオン』 道尾秀介
「このミス」2016年版 : 59位
受賞(候補) :
総合ランキング :
年度ランキング : 「ダ・ヴィンチ BOOK OF THE YEAR」
(小説ランキング) 34位
読始:2015.7.23~ 読終:2015.8.1
読んだ時期 : 「このミス」ランキング発表"前"
読んだ版 : 単行本 <2015年1月>
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道尾秀介は、終盤にどんでん返しのあるミステリ作品を次々と発表し、「このミス」を始めとした年末恒例ミステリランキングの常連となっていました。
しかし、2010年のNo.294「球体の蛇」以降は、どんでん返しがなくなったどころかミステリ要素自体が控えめとなり、エンタメというよりも文芸小説の方が近いような作風へガラリと変化したのです。
ただ本作は、作家生活10周年記念作品ということもあってか、“作家になってから初めて自分のためではなく読者のために”書いたそうで、そんなコメントが表すようにエンタメ小説の面白さが贅沢に詰め込まれた作品でした。
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主人公は美声の持ち主ながらそれに似合わぬ冴えない容姿にコンプレックスを抱えているラジオパーソナリティの桐畑恭太郎で、行き付けのバー「if」でママや常連たちと楽しい一時を過ごすのが日課となっています。
しかしそんな恭太郎たちは、ある日偶然店に迷い込んで来た三梶恵に弱みを握られてしまったため、恵が計画する危険な作戦に参加させられてしまうのですね。
恭太郎ら常連たちの会話ややり取りは読んでいるこちらまで楽しくなるほどにコミカルで面白いですし、恵が素性を明かさず計画の目的についても(恭太郎たちに)教えないので真相が気になる謎が作品全体を覆っていますし、アクションシーンあり、終盤でのサプライズありと、やはりエンタメ的な魅力に満ち溢れた内容となっていました。
しかもそれだけでなく、“if”や“嘘”をキーワードとして、心に染み入ったり気持ちを揺さぶられたりするようないくつものエピソードが(主人公がラジオパーソナリティだからこその演出で)描かれていくなど、ドラマ性の面でも深い読み味があります。
ただ、主人公たちが参加させられる計画の目的が不明なこともあってか途中までは物語の軸が分かりづらくて手応えを掴みにくい感じですし、終盤のサプライズも世界観が一変するような分かりやすいどんでん返しというタイプでもないので、No.117「カラスの親指」やNo.58「片眼の猿」などかつての(本作と似たタイプの)エンタメとして完成度の高かった作品と同様のものを期待してしまうとあまり良い感想にならないかもしれません、
とはいえ、終盤のサプライズにより(辛く悲しい物語に希望の一筋が灯されるという)『球体の蛇』以降の作品で描かれてきたテーマ性が感動的に浮かび上がってくることからも、文芸期を経た今だからこそ書くことの出来た新たな道尾エンタメ作品だと思うので、ミステリ期と文芸期のどちらか一方のみの道尾作品が好きだという人よりは、どちらの道尾作品も好きな人の方が本作を大いに堪能し感動できるのではないでしょうか。
> 個人的評価 : ★★★★★ ☆☆☆☆☆
本格ミステリ度 : ★★★ 鬼畜グログロ度 : ★★
ビックリ驚愕度 : ★★★★ おどろおどろ度 : ★★
熱アクション度 : ★★★ .主キャラ魅力度 : ★★★★
恋愛ラブラブ度 : ★★★ 人間味ドラマ度 : ★★★
下ネタエッチ度 .: ★★★ .感涙ウルウル度 : ★★★★
衝撃バカミス度 : ★★★ 気軽に読める度 : ★★★★
* 個人的評価は、減点方式ではなく加点方式となっています
<個人的評価&項目別評価>の詳しい説明・評価基準は
「このミス」完全読破 説明&読破本リストにてご確認ください
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> No.0121 「ラットマン」
> No.0117 「カラスの親指」
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> No.0058 「片眼の猿」
> No.0049 「シャドウ」
> No.0041 「向日葵の咲かない夏」
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