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「このミステリーがすごい!」完全読破 No.832
『ラプラスの魔女』 東野圭吾
「このミス」2016年版 : 54位
受賞(候補) :
総合ランキング :
年度ランキング : 「ダ・ヴィンチ BOOK OF THE YEAR」
(小説ランキング) 3位
読始:2015.8.21~ 読終:2015.8.25
読んだ時期 : 「このミス」ランキング発表"前"
読んだ版 : 単行本 <2015年5月>
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東野圭吾は、今更説明することでもないですが、もう何年にも渡ってベストセラー作品を連発していて、エンタメ小説界における総売り上げでは他作家の追撃を許さないどころか年々突き放しているほどの超売れっ子作家です。
しかも、それだけのベストセラー作家でありながら、未だに毎年必ず何らかの作品がミステリランキングに入るなど評価を受け続けているのだから凄いですよね。
ただ「このミス」においては、2006年版以降は“加賀恭一郎シリーズ”か“ガリレオシリーズ”のどちらか、2010年版以降は“加賀恭一郎シリーズ”しかランクインしていなかったため、(発売時点でノンシリーズ作品だったNo.479「マスカレード・ホテル」が2012年版で22位とあと一歩のところまで行ったりはしましたが)ランクインという結果だけを見ればここ数年はシリーズ的な偏りが強く出ていました。
とはいえ、昨年(2015年版)にはどちらのシリーズでもないNo.757「虚ろな十字架」がランクインし、(人気と実績を兼ね備えた)キャラクターに頼らずとも結果を出したということで、その錆付くどころか一層磨きのかかった実力を改めて証明した、といったところでしょうか。
そんな東野圭吾による2015年の新作である本作は、通算80作目&作家デビュー30周年記念&KADOKAWA創業70周年記念作品で、著者自ら『これまでの私の小説をぶっ壊してみたかった。そしたらこんな作品ができました。』とコメントするほどの意欲作です。
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物語は、温泉地で起きた硫化水素による死亡事故をきっかけとして始まり、この事故の原因究明を依頼された研究者、被害者の(歳の離れた)若い妻、その妻に疑惑の目を向ける刑事、ある少女のボディーガードを務めることになった元警官など、多くの人物の目線によって群像劇のように進んでいきます。
なので、最初の方は誰が話の中心となり何が話の軸となるのか分からない(読み手にとって)不安定な読み応えなのですが、それらが集約されて物語の方向性が掴めてからも、研究者と刑事がそれぞれのやり方で事故の真相に迫る調査・捜査ミステリが繰り広げられたり、超常現象的な能力や近未来科学などSF要素が組み込まれたり、犯罪サスペンス的な展開にもなるなど、様々なジャンルの要素やいくつものエピソードを絡めながら描かれていくのです。
そんな物語を普通の作家が書けば複雑でゴチャゴチャして理解しにくいものが出来上がってしまいそうなのに対し、本作はそんな複雑さを感じずに話がスッと頭に入って読みやすいので、そんな巧みな描写や構成からも“さすが東野作品”といった貫禄のようなものを感じられるのでは。
そして内容の方も相変わらずの面白さなので今回も水準以上の読み味を多くの人が堪能できると思うのですが、作品の性質上一つのテーマや事件に対してじっくりと掘り下げていくようなタイプではないですし、『これまでの私の小説をぶっ壊してみたかった~』というコメントの意図が分かりやすく伝わってくるようでもないので、圧倒的なドラマ性や過去の東野作品に類を見ない革新性などを期待しすぎない方が良いかもしれません。
個人的には、ある登場人物が(自分の体験した)残酷な過去について綴ったブログの内容やそこからの意外な展開がのめり込むほどに面白かったので、この部分だけ抜き取ったうえで多少アレンジして独立した作品として書いてほしいな~なんて思いましたね。
> 個人的評価 : ★★★★★ ☆☆☆☆☆
本格ミステリ度 : ★★★ 鬼畜グログロ度 : ★★
ビックリ驚愕度 : ★★★ おどろおどろ度 : ★★
熱アクション度 : ★★★ 主キャラ魅力度 : ★★★★
恋愛ラブラブ度 : ★★ 人間味ドラマ度 : ★★★
下ネタエッチ度 .: ★ .感涙ウルウル度 : ★★★
衝撃バカミス度 : ★★ 気軽に読める度 : ★★★
* 個人的評価は、減点方式ではなく加点方式となっています
<個人的評価&項目別評価>の詳しい説明・評価基準は
「このミス」完全読破 説明&読破本リストにてご確認ください
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> No.0784 「マスカレード・イブ」
> No.0757 「虚ろな十字架」
> No.0720 「疾風ロンド」
> No.0690 「祈りの幕が下りる時」
> No.0655 「夢幻花」
> No.0598 「禁断の魔術 ガリレオ8」
> No.0580 「虚像の道化師 ガリレオ 7」
> No.0537 「ナミヤ雑貨店の奇蹟」
> No.0526 「歪笑小説」
> No.0479 「マスカレード・ホテル」
> No.0457 「真夏の方程式」
> No.0437 「麒麟の翼」
> No.0418 「鳥人計画」
> No.0377 「白銀ジャック」
> No.0342 「プラチナデータ」
> No.0285 「カッコウの卵は誰のもの」
> No.0266 「魔球」
> No.0236 「新参者」
> No.0184 「パラドックス13」
> No.0130 「聖女の救済」
> No.0085 「流星の絆」
> No.0053 「赤い指」
> No.0045 「容疑者Xの献身」
> No.0022 「超・殺人事件」
> No.0010 「秘密」
> No.0006 「名探偵の掟」
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