『王とサーカス』 米澤穂信 > 「このミス」完全読破 No.828
「このミステリーがすごい!」完全読破 No.828
『王とサーカス』 米澤穂信
「このミス」2016年版 : 1位
受賞(候補) :
総合ランキング :
年度ランキング : 「週刊文春ミステリーベスト10」 1位
「ミステリが読みたい!」 1位
「本格ミステリ・ベスト10」 3位
「本屋大賞」 6位
「ダ・ヴィンチ BOOK OF THE YEAR」
(小説ランキング) 20位
読始:2015.8.5~ 読終:2015.8.8
読んだ時期 : 「このミス」ランキング発表"前"
読んだ版 : 単行本 <2015年7月>
![]() | 王とサーカス 米澤 穂信 東京創元社 2015-07-29 売り上げランキング : 1090 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
No.817「さよなら妖精」(以下"前作")に続くシリーズの2作目です。
シリーズ2作目とはいえ、前作の(主役ではなかった)登場人物を主人公に据えた短編が“〈ベルーフ〉シリーズ”として発表されていて、本作はそんな“〈ベルーフ〉シリーズ”の流れにある作品なので、大きなくくりで見れば本作は前作の続編となりますが、内容的には(続編ではなく)前作の姉妹編または派生シリーズといった感じがあります。
そのため本作から読んでも問題なく楽しむことが出来るものの、前作のストーリー的なネタバレがあるため、前作を今後読むつもりがあるのならばまずはそちらから読むことをお薦めします。
なお、(2015年8月現在で)“〈ベルーフ〉シリーズ”の短編はまだ一冊の作品集として発売されていませんが、「ナイフを失われた思い出の中に」はアンソロジー作品No.315「蝦蟇倉市事件2(街角で謎が待っている)」に収録されていて、(時間軸としては本作より後の話であるものの)ちょうど前作と本作との間を橋渡しするような役割(内容)となっているので、(前作と共に)この短編も前もって読んでおいた方がより本作の物語に入りやすいかもしれません(この短編にも前作のストーリー的なネタバレがあります)。
* 後日追記:「ナイフを失われた思い出の中に」も収録した“〈ベルーフ〉シリーズ”の短編集No.872「真実の10メートル手前」が同年(2015年)末に刊行されました。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
舞台となるのは(前作の10年後にあたる)2001年のネパール/カトマンズで、前作では高校生だった太刀洗万智はフリーの雑誌記者となり、事前取材と休暇を兼ねてこの地を訪れます。
すると間もなく、ネパールの国全体を大きく揺るがすほどの騒動(事件)が起き、しかも直後に万智の身近な所でも殺人事件が起きたことから、騒動や事件に巻き込まれつつ記者として取材活動を行っていくことになるのですね。
読んでいて強く印象に残るのは、ネパールの首都であるカトマンズという町の描写で、日本とは異なる風景・街並み・建造物・文化・生活習慣などが(この地を初めて訪れる)主人公の目線で丁寧に描かれていくことにより、(読んでいくうちに)カトマンズの町が本の中から浮き上がって来るので、(日本にいては知ることの出来ない)カトマンズでの生活を疑似体験しているかのように感じられるほどでした(あらかじめカトマンズの風景写真をネット等で見ていればより作中舞台をイメージしやすいかも)。
そして、(世間に発信する報道の内容を決める権限を持つ)ジャーナリストとしての使命・信念・判断について苦悩する様子やそれに伴う行動が(事件・騒動と密接に繋がりながら)展開されていくので、それらを基にした主人公自身の物語としてはもちろん、ジャーナリズム(知ること/伝えること)に関する問題提起的なテーマとしても力強くて深い読み応えがありました。
ミステリ的には、これまでの(ミステリ部分の評価が高かった)米澤作品と比べれば謎やトリックなど小粒に感じられますし、ミステリ展開とは関係ない場面が多めなので、本格ミステリ的な面白さのみを期待して読んでしまうと物足りないかもしれませんが、実際に当時のネパールで起きた事件を物語に組み入れたり、事件の真相が明かされることで(主人公や読者の)胸を突く衝撃を与えるなど、特に物語とミステリ要素との絡め方において著者ならではのミステリ的な巧みさを堪能できると思います。
そのため、ミステリ以外の部分をどれだけ楽しむことが出来るのかで、本作に対する評価(面白さ/好き嫌い)も大きく変わってくるのではないでしょうか。
> 個人的評価 : ★★★★★ ★☆☆☆☆
本格ミステリ度 : ★★★★ 鬼畜グログロ度 : ★★
ビックリ驚愕度 : ★★★ おどろおどろ度 : ★★
熱アクション度 : ★★ 主キャラ魅力度 : ★★★★
恋愛ラブラブ度 : ★ 人間味ドラマ度 : ★★★
下ネタエッチ度 : ★ 感涙ウルウル度 : ★★
衝撃バカミス度 : ★ 気軽に読める度 : ★★★
* 個人的評価は、減点方式ではなく加点方式となっています
<個人的評価&項目別評価>の詳しい説明・評価基準は
「このミス」完全読破 説明&読破本リストにてご確認ください
【 “米澤穂信” 関連記事 】
> No.1123 「巴里マカロンの謎」
> No.1099 「Iの悲劇」(後日更新予定)
> No.1050 「本と鍵の季節」
> No.0961 「犬はどこだ」(後日更新予定)
> No.0942 「いまさら翼といわれても」
> No.0872 「真実の10メートル手前」
> No.0828 「王とサーカス」
> No.0817 「さよなら妖精」
> No.0777 「ミステリマガジン700 【国内篇】」
> No.0748 「満願」
> No.0622 「リカーシブル」
> No.0402 「折れた竜骨」
> No.0366 「ふたりの距離の概算」
> No.0365 「遠まわりする雛」
> No.0315 「蝦蟇倉市事件2(街角で謎が待っている)」
> No.0250 「秋期限定栗きんとん事件」
> No.0227 「追想五断章」
> No.0140 「儚い羊たちの祝宴」
> No.0076 「インシテミル」
> No.0044 「ボトルネック」
> No.0040 「夏期限定トロピカルパフェ事件」
> No.0039 「春期限定いちごタルト事件」
「透明カメレオン」道尾秀介 <<< PREV/NEXT >>> 「流」東山彰良
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
>>> 「このミス」完全読破 説明&読破本リスト <<<
« 「モノノケハイブラッド」 斉藤尚武 > ジャンプNEXT!! 2015 vol.4 | トップページ | ◎小倉記念&レパードS(2015年)穴馬予想&結果 »
「01.「このミス」完全読破(ミステリ小説)」カテゴリの記事
- 「このミステリーがすごい!2022年版」ランキング(順位)予想(2021.02.03)
- 「このミス2022年版」月別ランクイン候補作品(2021年2月)(2021.01.31)
- 「このミス」ランクイン作品文庫化リスト(2021年1月)(2021.01.21)
- 「このミス2022年版」月別ランクイン候補作品(2021年1月)(2021.01.09)
- 「このミス」ランクイン作品文庫化リスト(2020年12月)(2020.12.20)