『さよなら妖精』 米澤穂信 > 「このミス」完全読破 No.817
「このミステリーがすごい!」完全読破 No.817
『さよなら妖精』 米澤穂信
「このミス」2005年版 : 20位
受賞(候補) :
総合ランキング :
年度ランキング : 「本格ミステリ・ベスト10」 22位
読始:2015.5.22~ 読終:2015.5.26
読んだ時期 : 「このミス」ランキング発表"後"
読んだ版 : 文庫本 <2006年10月>
さよなら妖精 (創元推理文庫) 米澤 穂信 東京創元社 2006-06-10 売り上げランキング : 9424 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
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米澤穂信は、年末恒例ミステリランキングの上位常連となるなど今では日本を代表するミステリ作家の一人となっています。
ただデビュー作『氷菓』と2作目『愚者のエンドロール』(いずれも“<古典部>シリーズ”)は、ライトノベルレーベルである角川スニーカー文庫内で新たに創設された(角川スニーカー文庫より対象年齢を少し上げた)“スニーカー・ミステリ倶楽部”から発売されたので、元々はラノベ系作家としてデビューしていました。
そして“<古典部>シリーズ”の3作目にして完結編として構想していた作品が、“スニーカー・ミステリ倶楽部”の終了、さらには大本の角川スニーカー文庫で出すにはレーベルの対象と作品のテーマ性とがかけ離れていたことから、出版が難しくなったのですが、“<古典部>シリーズ”としての設定を外して書き直したうえでようやく東京創元社から発売となりまして、その作品というのが本作なのです。
そんな著者初の一般レーベル作品となった本作は、いきなり「このミス」で20位、「本ミス」で22位にランクインという結果を出し、その後に続く快進撃の最初の一歩を踏み出したのですね。
ちなみに、この作品の続編にあたる短編(そのうち1編はNo.315「蝦蟇倉市事件2(街角で謎が待っている)」に収録)がいくつか発表されているため、それらも合わせて“〈ベルーフ〉シリーズ”と呼ばれているのですが、シリーズ2作目の単行本No.828「王とサーカス」の刊行が発表されたので、まずは未読だった1作目の本作から読んでみました。
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舞台となるのは1991年のとある地方都市で、藤柴高校に通う守屋路行を中心に、太刀洗万智・白河いずる・文原竹彦といった同級生たちと共に過ごす日常の中で起きた謎について描かれていく、“日常の謎”系青春ミステリです。
そしてもう一人重要な役割を果たす人物というのが外国からやって来た少女・マーヤで、守屋たちは(異国の地で困っていた)マーヤと偶然出会って日本での生活の世話をし、その後も行動を共にすることに。
日本の高校生たちの中に(日本とは文化や生活様式がかけ離れた)遠い国で生きてきた少女が加わることで、守屋たちが当たり前のように過ごして来た日常の中にも魅力的な謎が生まれますし、そんな謎が提示の仕方や解き明かし方や青春物語との絡め方など(後の著者の活躍が伺えるほどの)巧みさで描かれていくのですね。
そういった青春ミステリが進んでいく中で徐々に存在感を増していくのが、マーヤの母国であるユーゴスラビア(作中ではユーゴスラヴィアと表記)に関する話です。
ユーゴスラビアというのは、サッカーの代表チームのキャプテンとして、さらにJリーグ・名古屋グランパスの選手・監督としても活躍したドラガン・ストイコビッチを通じて知っている人も多いと思いますが、6つの共和国から成る連邦国家で、独立を巡って激しい内戦・紛争が繰り広げられた今は亡き国です。
その詳細などは作中にも書かれているので省略しますが、ユーゴスラビアにとって、そしてマーヤにとって最も激動的な時期に、日本の一般の高校生である主人公たちがこの遠き地で起きている社会情勢に(マーヤを通して身近な存在として)触れることにより、社会的なテーマ性がより強く提示されますし、特に主人公が受けた影響によって青春物語にも深みや凄みが生み出されていました。
なので、もちろん王道的な青春物語としての面白さがありながら、普通の青春物語では決して味わうことのないような読み応えある味付けが加えられているという、まさに(次々と傑作が生まれていく)米澤作品の原点とも言える作品ですし、そういった著者の作品の流れとは関係なく単純に一つの作品としても満足なまでに楽しむことが出来る作品だったように思います。
なお、本作の後に続く短編やシリーズ2作目の『王とサーカス』を先に読んでしまうと本作の(ストーリー的な)ネタバレとなってしまうので、まずは本作を読んでしまうことをお薦めします。
> 個人的評価 : ★★★★★ ☆☆☆☆☆
本格ミステリ度 : ★★★★ 鬼畜グログロ度 : ★
ビックリ驚愕度 : ★★★ おどろおどろ度 : ★★
熱アクション度 : ★★ 主キャラ魅力度 : ★★★★
恋愛ラブラブ度 : ★★★ 人間味ドラマ度 : ★★★★
下ネタエッチ度 : ★ 感涙ウルウル度 : ★★★
衝撃バカミス度 : ★★ 気軽に読める度 : ★★★
* 個人的評価は、減点方式ではなく加点方式となっています
<個人的評価&項目別評価>の詳しい説明・評価基準は
「このミス」完全読破 説明&読破本リストにてご確認ください
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> No.1050 「本と鍵の季節」
> No.0961 「犬はどこだ」(後日更新予定)
> No.0942 「いまさら翼といわれても」
> No.0872 「真実の10メートル手前」
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> No.0777 「ミステリマガジン700 【国内篇】」
> No.0748 「満願」
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> No.0402 「折れた竜骨」
> No.0366 「ふたりの距離の概算」
> No.0365 「遠まわりする雛」
> No.0315 「蝦蟇倉市事件2(街角で謎が待っている)」
> No.0250 「秋期限定栗きんとん事件」
> No.0227 「追想五断章」
> No.0140 「儚い羊たちの祝宴」
> No.0076 「インシテミル」
> No.0044 「ボトルネック」
> No.0040 「夏期限定トロピカルパフェ事件」
> No.0039 「春期限定いちごタルト事件」
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