『教団X』 中村文則 > 「このミス」完全読破 No.804
「このミステリーがすごい!」完全読破 No.804
『教団X』 中村文則
「このミス」2016年版 : 34位
受賞(候補) :
総合ランキング : 「SUGOI JAPAN Award 2016」 ノミネート
年度ランキング : 「本屋大賞」 9位
「キノベス!」 9位
「ダ・ヴィンチ BOOK OF THE YEAR」
(小説ランキング) 16位
「週刊文春ミステリーベスト10」 20位
「ミステリが読みたい!」 20位
読始:2015.3.10~ 読終:2015.3.24
読んだ時期 : 「このミス」ランキング発表"前"
読んだ版 : 単行本 <2014年12月>
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中村文則は、ミステリ/サスペンス的な題材を扱いながらも純文学的な作風で描いているため、これまで受賞したのも新潮新人賞・野間文芸新人賞・芥川龍之介賞・大江健三郎賞といった純文学系の文学賞です。
とはいえ、ここまでで最もミステリ/サスペンス色の強かったNo.705「去年の冬、きみと別れ」により「このミス」と「週刊文春ミステリーベスト10」で初ランクインを果たしています。
それに、『掏摸』の英訳版『The Thief』が、アメリカのウォール・ストリート・ジャーナル紙で2012年ベスト10小説に選出されたり、ロサンゼルス・タイムズ・ブック・プライズのミステリー・スリラー部門で最終候補に入っているので、ジャンルや国の枠など超越した作家として年々存在感が増しているのですね。
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急に姿を消した恋人・立花涼子を追って楢崎透が(立花が関わっていたとされる)宗教施設を訪れると、そこは宗教というよりは思想家・松尾正太郎を慕い集まった人々のグループで、楢崎は松尾の説法を(ビデオ映像で)聴くことに。
この松尾が語りかける説法というのが、宗教や科学や哲学など様々な分野の専門知識を屈指して築かれ、細胞レベルから宇宙レベルまでという途方もなく膨大なスケール感があり、それらを大胆に結びつけながら人間やこの世について解き明かしていこうというとてつもないものなのです。
その一方で、松尾を裏切り自ら教祖となった沢渡が生み出した教団についての物語も描かれていきまして、こちらはカリスマ教祖を頂点とした独裁組織で犯罪性があり性的快楽に溺れているというまさしくカルト宗教なのです。
さらには貧困や格差やテロなど社会問題を絡めながらサスペンス的な展開へと突入していくのですが、(読む人が)松尾の説法などから知識や情報を提示され、同時に登場人物たちの行動を見せられることにより、(人間が持つ)感情や思想や本能や欲望など内に秘めた部分が無防備なほどに生々しく曝け出されていき、それが登場人物それぞれの物語の中で危険なほどに爆発していくので、(専門分野の説明に関しては難しい部分もあったものの)とにかく圧倒されっぱなしのとんでもない迫力がありました。
それに、イスラムの過激派組織ISILによる日本人拘束殺害事件が発生して日本でそれを真似た少年犯罪が起きたり、オウム真理教による地下鉄サリン事件から20年ということで特集番組が数多く放送されるなど、今年(2015年)1~3月には本作の大きなテーマである“テロ”と“宗教”に関わる話題が多かったので、そんな現在の社会問題を絶妙な時期にえぐり取り発表した“今読んでこその作品”ともいえそうです。
とはいえ、ストーリー重視のサスペンス的な部分は少なめで、概念的な話や作者による主張・問題提起部分が多いため、「このミス」の対象となりそうなエンタメ寄りの作品として期待してしまうとガッツリとした読み応えを感じられないかもしれませんね。
> 個人的評価 : ★★★★☆ ☆☆☆☆☆
本格ミステリ度 : ★★ 鬼畜グログロ度 : ★★★
ビックリ驚愕度 : ★★ おどろおどろ度 : ★★★
熱アクション度 : ★★★ 主キャラ魅力度 : ★★★
恋愛ラブラブ度 : ★★★ 人間味ドラマ度 : ★★★
下ネタエッチ度 : ★★★★★ 感涙ウルウル度 : ★★
衝撃バカミス度 : ★★★ 気軽に読める度 : ★★
* 個人的評価は、減点方式ではなく加点方式となっています
<個人的評価&項目別評価>の詳しい説明・評価基準は
「このミス」完全読破 説明&読破本リストにてご確認ください
【 “中村文則” 関連記事 】
> No.919 「私の消滅」
> No.831 「あなたが消えた夜に」
> No.804 「教団X」
> No.705 「去年の冬、きみと別れ」
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