『フィルムノワール/黒色影片』 矢作俊彦 > 「このミス」完全読破 No.802
「このミステリーがすごい!」完全読破 No.802
『フィルムノワール/黒色影片』 矢作俊彦
「このミス」2016年版 : 17位
受賞(候補) :
総合ランキング :
年度ランキング : 「ミステリが読みたい!」 18位
読始:2015.2.26~ 読終:2015.3.3
読んだ時期 : 「このミス」ランキング発表"前"
読んだ版 : 単行本 <2014年11月>
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『リンゴォ・キッドの休日』 『真夜中へもう一歩』 No.800「THE WRONG GOODBYE ロング・グッドバイ」に続く“二村永爾シリーズ”の4作目です。
シリーズ1・2作目が発表されたのは70~80年代ということで歴史の古いシリーズですが、約20年ぶりのシリーズ復活となった3作目の『THE WRONG GOODBYE』は「このミス」で4位、「文春」で8位にランクインし、日本冒険小説協会大賞を受賞するなど、古風なハードボイルド作品ながら2000年代に入ってもなお高い評価を得ました。
そしてさらにそこから10年ぶりのシリーズ新作となったのが本作です。
主人公の立場の違いによりシリーズ前作(3作目)の一部分のネタバレになってしまうので、まっさらな状態で前作を読みたいのであればまず前作から読むことをお勧めしますが、ただこのシリーズに限っては些細な部分でしかないとも思うので、本作から読んでも問題ないのではないでしょうか(1・2作目は読んでいないので順番に読むべきかどうかはわかりません)。
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今回の二村は、ある女優から“幻のフィルムを購入するため日本を経ったまま姿を消した男”の捜索とその幻のフィルム自体の入手を依頼され、あまり乗り気ではなかったのですが、直後の捜査中に起きた殺人事件との関わりが出てきたため、香港へと飛んで事件と騒動の謎に迫っていきます。
(二村の庭とも言える横浜や横須賀が舞台だった前作とは違って)慣れない香港の地が舞台となるものの、二村は全く委縮することなく周囲を巻き込んだり巻き込まれたりしながら全力で暴れまくりますし、出会っていく(いずれも癖が強い個性派揃いの)人々と気障で渋カッコイイやり取りや会話を繰り広げるなど、“現代に甦った古き良きハードボイルドの主人公”キャラは健在でした。
そんな主人公を中心に展開されていく物語は、登場人物(主にアジア系)が多くて油断して読んでいるとすぐに誰が誰だかわからなくなり、事件の構図やストーリーが複雑で目まぐるしく変化するため一読しただけでは理解しにくいなど、読者に優しくはない描き方であるのですが、その難解さによって次第に刺激的で心地よい酩酊状態へと導かれていくのも前作同様です。
ただ本作はそんな古き良きハードボイルド要素に加え、日活映画を中心とした(これまた“古き良き”という修飾語が似合う)時代の映画に関係する題材や配役や小ネタやオマージュが作中に散りばめられていて、実在する某俳優(単行本の表紙絵を見ればバレバレですが.....)が重要な役で登場したりもしますし、実際に映画撮影の現場で働いた経験を持ち日活の総集編映画の監督を務めたこともある著者だからこそ描くことのできた“映画小説”となっているのですね。
とはいえ、ジャンル的にも作風的にも文章的にも読む人を厳選してしまうようなマニア好みとも言うべき内容なので、多くの人にお薦めすることは出来ないのですが、そんな作風が合う人であればこの香港を舞台としたハードボイルドな世界を心行くまで堪能出来ると思うし、このシリーズが好きな人ならなおのこと、この作品世界を新作という形で再び味わえることに感動するほどの読書的快感を体験出来るのではないでしょうか。
ちなみに、前作(3作目)と本作とでは個人的評価(★の数)に差がつきましたが、これは前作で矢作ハードボイルドの魅力(楽しみ方)をようやく理解できたうえで本作を読んだことが大きく影響したためなので、面白さの差がそこまであったわけではありません(逆に読んでいれば★の数も入れ替わっていた可能性も)。
> 個人的評価 : ★★★★★ ★★★☆☆
本格ミステリ度 : ★★ 鬼畜グログロ度 : ★★
ビックリ驚愕度 : ★★ おどろおどろ度 : ★★
熱アクション度 : ★★★★ 主キャラ魅力度 : ★★★★★
恋愛ラブラブ度 : ★★★ 人間味ドラマ度 : ★★★
下ネタエッチ度 : ★★ 感涙ウルウル度 : ★★★
衝撃バカミス度 : ★★★ 気軽に読める度 : ★
* 個人的評価は、減点方式ではなく加点方式となっています
<個人的評価&項目別評価>の詳しい説明・評価基準は
「このミス」完全読破 説明&読破本リストにてご確認ください
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> No.476 「引擎 engine」
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> No.399 「百発百中 狼は走れ豚は食え、人は昼から夢を見ろ」
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