『鳩の撃退法』 佐藤正午 > 「このミス」完全読破 No.801
「このミステリーがすごい!」完全読破 No.801
『鳩の撃退法』 佐藤正午
「このミス」2016年版 : 11位
受賞(候補) : 「山田風太郎賞」 受賞
総合ランキング :
年度ランキング : 「dacapo BOOK OF THE YEAR」 4位
「闘うベストテン 場外乱闘篇」 5位
「Twitter文学賞」 7位
「週刊文春ミステリーベスト10」 8位
「ミステリが読みたい!」 16位
読始:2015.2.12~ 読終:2015.2.25
読んだ時期 : 「このミス」ランキング発表"前"
読んだ版 : 単行本(上・下) <2014年11月>
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佐藤正午の作品はこれまで1作しか読んでいなかったのですが、その唯一読了済みのNo.257「身の上話」の内容や未読作品のあらすじなどを見た感じでは、ミステリ/サスペンス的な題材を純文学的な文体で描いた作品が多いようです。
そんなジャンルの枠にハマらない作家で、「このミス」にもランクイン(20位以内)実績がないのですが、それでも『Y』で39位(1999年版)、『ジャンプ』で28位(2001年版)、『身の上話』で22位(2010年版)と40位以内には3度も入っていて、「週刊文春ミステリーベスト10」では『ジャンプ』が7位にランクインしているので、広義ミステリが対象のランキングでは(作風を考えれば)高い評価を得ています。
そして『身の上話』以来5年ぶりの新作となったのが本作ですが、2014年11月発売ということで「このミス」や「文春」など対象作品の刊行締め切りが9~10月であるランキングでは翌年度(2015年末に発表)の対象であるものの、12月が締め切りのランキングでは「dacapo BOOK OF THE YEAR」で4位、「闘うベストテン 場外乱闘篇」で5位、「Twitter文学賞」で7位とすでに結果を出していることからも、その評価の高さが窺えますね。
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主人公は元小説家で現在は風俗店の送迎ドライバーとして働いている津田伸一(『5』にも登場)で、偶然ドーナツ店で相席した男がその日の夜に突然家族共々失踪したことから、この神隠し事件に興味を持ち始めます。
それから約1年後、(腐れ縁となっていた)古本屋店主の訃報と共に形見のキャリーバックが津田の元に届けられ、その中から大量の札束が出てきたため喜んだものの、これがきっかけで津田は物騒な騒動に巻き込まれていくのです。
この札束を巡る騒動には、状況が二転三転していき手に汗握るほどのスリル溢れる展開を味わうことが出来ますし、そこにさらに神隠し事件が絡んできて、そんな事件や騒動の中に散りばめられてきたいくつもの謎が見事な軌跡を描いて集約していくなど、ミステリ系サスペンスとしての物語にグイグイと惹き付けられてしまうほどの魅力がありました。
ただ本作から放たれる一番の魅力というのは、そんなサスペンス劇を王道なエンタメ演出で描くのではなく、いいかげんでダメ人間なんだけれど憎めない主人公の心の声に多くの文章を割いていたり、そんな主人公が出会っていく登場人物たちと思わずニヤリとしてしまうような脱力系のやり取りを繰り広げるなど、むしろ純文学作品的な味わいが感じられる文調(描き方)の方にあるのです。
しかも、事件や騒動の詳細が書かれているのか主人公の小説の中の世界として書かれているのかがはっきりとしていないため読んでいて惑わされてしまったり、時間軸が行ったり来たりするためストーリーがより複雑に感じられ翻弄されてしまったりと、物語の構成も凝りに凝っているので、一筋縄ではいかない読み応えとなっているのですね。
なので、ストーリー重視のエンタメ(サスペンス)物語を読みたい人だと文調や構成などから勿体ぶっている感じがして読み進め辛いかもしれませんが、ジャンル分けなど意味がないほどに“小説”として一級品だと思いますし、小説だからこそ生み出せる遊び心や魅力が存分に詰め込まれているので、ジャンルにこだわらない読み方が出来るのであればこの奇妙で味わい深い作品世界にどっぷりと浸かれるのではないでしょうか。
> 個人的評価 : ★★★★★ ★★☆☆☆
本格ミステリ度 : ★★★ 鬼畜グログロ度 : ★★
ビックリ驚愕度 : ★★ おどろおどろ度 : ★★
熱アクション度 : ★★ 主キャラ魅力度 : ★★★★
恋愛ラブラブ度 : ★★★★ 人間味ドラマ度 : ★★★
下ネタエッチ度 : ★★★★ 感涙ウルウル度 : ★★
衝撃バカミス度 : ★★★ 気軽に読める度 : ★★★
* 個人的評価は、減点方式ではなく加点方式となっています
<個人的評価&項目別評価>の詳しい説明・評価基準は
「このミス」完全読破 説明&読破本リストにてご確認ください
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> No.257 「身の上話」
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