『女王』 連城三紀彦 > 「このミス」完全読破 No.795
「このミステリーがすごい!」完全読破 No.795
『女王』 連城三紀彦
「このミス」2015年版 : 9位
受賞(候補) :
総合ランキング :
年度ランキング : 「週刊文春ミステリーベスト10」 15位
読始:2015.1.2~ 読終:2015.1.5
読んだ時期 : 「このミス」ランキング発表"後"
読んだ版 : 単行本 <2014年10月>
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昨年(2014年)のミステリ界を振り返ってみますと、まず作品としては、主要ミステリランキング4誌(「このミス」「本ミス」「文春」「早ミス」)のうち3誌で1位(残り1誌は次点の2位)のNp.748「満願」(米澤穂信)、そしてそんな「満願」を唯一上回り(「本ミス」1位)他の3誌でも全てベスト3入りとなったNo.765「さよなら神様」(麻耶雄嵩)の2作が“年度代表ミステリ小説”といえるでしょう。
そして作家別に見てみれば、直木賞受賞作であるNo.745「破門」と受賞第一作である「後妻業」のどちらもが高い評価と話題性を得た黒川博行と共に、この連城三紀彦の名が自然と上がってくるのではないでしょうか。
2013年に亡くなったレジェンド作家ですが、昨年(2014年)にはそれまで単行本化されていなかった作品が3作も発売され、そのうち3月に発売された短編集No.742「小さな異邦人」は主要ミステリランキング4誌全てでベスト4入りするなど高い評価を受けました。
そしてミステリランキングにおける投票対象の締め切りギリギリ(「早ミス」だけは来年版の対象)の10月にはNo.789「処刑までの十章」と本作の長編2作が発売され、発売時期や票割れなどの不利を物ともせずにそれぞれランクイン(「処刑までの十章」が「本ミス」、本作が「このミス」「文春」にランクイン)という結果を出しています。
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特に本作は、10月末という本当に締め切りギリギリの発売で、500ページを超える大ボリューム、しかも同月にボリュームある長編がもう1作出ていたので、“読みたかったけれど投票前までに読めなかった”という投票者が(他作品と比べれば)結構多い割合でいたと思うのですが、それでも「このミス」でベスト10、「文春」でベスト20という結果となったのだから、その評価の高さが窺えますね。
それに、90年代に連載を終えていたもののこれまで単行本化されてこなかった“幻の作品”なので、連城ファンとしては待ちに待った待望の刊行でもあるのです。
そんな本作ですが、幼き頃に記憶喪失となった過去があり、しかも明らかに生前の出来事である東京大空襲の記憶をなぜか持つ荻葉史郎が、自身の記憶をめぐる謎と、旅先で死去した祖父・祇介の謎について探っていきます。
そこからは、南北朝や邪馬台国などが絡んでくる時代を超えるほどのスケール大な謎と物語が繰り広げられていきますし、そんな中で日本の歴史上で最大の謎である“邪馬台国が存在した場所の謎”についても史料を基に大胆な仮説が提示されたりもするので、奇想的な歴史ミステリとなっているのですね。
そのため、連城ファンの中でも評価が大きく分かれそうなくらいに読む人を選ぶ内容ということもあって、合わない人なら“追悼票でランクインしたんじゃないの?”なんて口が悪いことを言ってしまいたくなるかもしれません。
とはいえ、インパクトある謎を随所に散りばめ、それをとんでもないスケールの物語で飲み込みつつも、刺激的な仕掛けと衝撃的な展開とで真相へと繋がる道を切り開いていくという、大胆さと繊細さが絡み合った連城三紀彦だからこそ書き得た超大作奇想歴史ミステリに仕上がっているので、好きな人であれば作品世界に心地よく翻弄されつつハマり込んでしまうのではないでしょうか。
なお、巻末には結果的に人生最後となったインタビューと『わが人生最高の10冊』が特別掲載されています。
> 個人的評価 : ★★★★★ ☆☆☆☆☆
本格ミステリ度 : ★★★ 鬼畜グログロ度 : ★★
ビックリ驚愕度 : ★★★ おどろおどろ度 : ★★★
熱アクション度 : ★★ 主キャラ魅力度 : ★★★
恋愛ラブラブ度 : ★★★ 人間味ドラマ度 : ★★★
下ネタエッチ度 : ★★★ 感涙ウルウル度 : ★★
衝撃バカミス度 : ★★★★ 気軽に読める度 : ★
* 個人的評価は、減点方式ではなく加点方式となっています
<個人的評価&項目別評価>の詳しい説明・評価基準は
「このミス」完全読破 説明&読破本リストにてご確認ください
【 “連城三紀彦”関連記事 】
> No.795 「女王」
> No.789 「処刑までの十章」
> No.743 「小さな異邦人」
> No.449 「どこまでも殺されて」
> No.167 「人間動物園」
> No.136 「造花の蜜」
> No.036 「黄昏のベルリン」
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