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2015年1月27日 (火)

『金魚鉢の夏』 樋口有介 > 「このミス」完全読破 No.788

「このミステリーがすごい!」完全読破 No.788

 『金魚鉢の夏』 樋口有介

   「このミス」2015年版 : 67位

   受賞(候補) :

   総合ランキング :

   年度ランキング :

   読始:2014.11.10~ 読終:2014.11.20

   読んだ時期 : 「このミス」ランキング発表"前"

   読んだ版 : 単行本 <2014年6月>

金魚鉢の夏金魚鉢の夏
樋口 有介

新潮社 2014-06-20
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 近未来の日本を描いた作品ですが、その近未来設定が少々変わっています。

 舞台となるのは北朝鮮からミサイルが撃ち込まれてから10年後の日本で、その10年の間にはこのミサイル事件をきっかけにして、生活保護制度が廃止されたり、ホームレスが刑罰化されたり、定められた金額を払えない犯罪者は刑務所ではなく無人島に島流しになり刑期の間サバイバル生活を送るなど、予算削減を名目に社会福祉や刑事処罰方面で大胆な改革が行われています。

 社会的弱者に厳しい改革であるため格差社会がさらに顕著になったものの、低賃金での労働者が増えたことで海外進出していた企業の国内回帰を促し、戦後最大の好景気を迎えて経済大国に返り咲くことにもなったのです。

 現実世界とそう変わらない近未来ということを考えれば荒唐無稽な日本社会のようにも見えるのですが、昨今の近隣諸国との関係や国内社会(福祉)情勢を考えれば全くありえないとは言えないようにも思えてしまいますし、そんなネット掲示板などで特に罵詈雑言が飛び交っているような話題の根の部分に大胆な改革を施すことで現在とは姿を変えた日本国像を作り上げているなど、他作品では味わえないような興味深い近未来の日本に設定されているのですね。

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 主人公の一之瀬幸祐は定年退職した元刑事で、(警察組織も予算削減を余儀なくされていることもあり)退職後も委託という形で捜査を請け負っているのですが、今回は生活保護廃止に伴い設置された生活困難者用福祉施設“希望の家”で起きた死亡事件を捜査するため、孫娘である女子大生・愛芽と共に事件現場へと向かうことに。

 ただ刑事捜査にも改革が行われていて、被害者の素性により事件をA・B・Cランクに分けられ、Aランクの事件は警察の総力をあげて捜査するのに対し、Cランクの場合は(経費削減のため)なるべく殺人事件ではなく事故として処理されるような捜査が行われます。

 今回の事件は福祉施設の住民が被害者なのでもちろんCランクとなり、幸祐も(元同僚の)現役刑事から事故として処理できるような捜査を依頼されているのですが、“希望の家”の職員や住民に怪しい人物が多く、しかも事件自体も事故として片付けるには謎が多過ぎるため、殺人事件として捜査を続けていくのですね。

 この幸祐による捜査が中心になっていくものの、孫との話や恋愛話などが絡んできますし、施設に住む少年と少女の物語も主役級となるほどに浮き上がってくるなど、直球で本格的な捜査ミステリとはならずになんとも掴みどころのない不思議な読み味のミステリ作品となっているのです。

 なので、ガッツリとした読み応えのミステリ作品を期待してしまうと物足りなさが残ってしまうと思うのですが、(この作品の近未来設定のみを書くいていくだけでブログの一記事程度なら全て埋まってしまいそうなほどに)設定作りに力の入った作品世界こそが一番の読み所なので、そんな作品世界の中で起きるミステリ展開を楽しむつもりで読むのが最良なのではないでしょうか。


> 個人的評価 : ★★★★★ ☆☆☆☆☆


 本格ミステリ度  : ★★      鬼畜グログロ度 : ★★
 ビックリ驚愕度  : ★★       おどろおどろ度 : ★★★
 熱アクション度  : ★★      主キャラ魅力度 : ★★★
 恋愛ラブラブ度 : ★★★     人間味ドラマ度 : ★★★
 下ネタエッチ度 : ★★★     感涙ウルウル度 : ★★
 衝撃バカミス度 : ★★★     気軽に読める度 : ★★★

 * 個人的評価は、減点方式ではなく加点方式となっています
  <個人的評価&項目別評価>の詳しい説明・評価基準は
  「このミス」完全読破 説明&読破本リストにてご確認ください


  【 “樋口有介” 関連記事 】

  > No.788 「金魚鉢の夏」
  > No.264 「ぼくと、ぼくらの夏」
  > No.225 「捨て猫という名前の猫」


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