『貘の檻』 道尾秀介 > 「このミス」完全読破 No.749
「このミステリーがすごい!」完全読破 No.749
『貘の檻』 道尾秀介
「このミス」2015年版 : 11位
受賞(候補) :
総合ランキング : 「SUGOI JAPAN Award 2016」 ノミネート
年度ランキング : 「週刊文春ミステリーベスト10」 17位
「本格ミステリ・ベスト10」 18位
「ミステリが読みたい!」 19位
読始:2014.5.29~ 読終:2014.5.31
読んだ時期 : 「このミス」ランキング発表"前"
読んだ版 : 単行本 <2014年4月>
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心の病のため失職し妻とも別れた大槇辰夫は、(妻が親権を持つ)一人息子の俊也と公園で会って帰る途中、駅のホームで見覚えのある女性が電車に飛び込む事故を目撃。
その女性は、32年前に辰夫の父親が殺人事件を犯した直後に行方不明となっていた曾木美禰子と判明。
この事故をきっかけに32年前の事件の真相に興味を持った辰夫は、連休中の間に預かる予定だった俊也と共に、事件の舞台である信州の寒村を訪ねることに.....。
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道尾秀介は、かつてはどんでん返しトリックを仕掛けた本格ミステリ作品で高い評価を受けていましたが、2009年末に発売されたNo.294「球体の蛇」以降はミステリ要素の限りなく薄い作風へと完全にチェンジしています。
しかし本作は、田舎の因習や因縁を軸とした溝口正史的世界観で殺人事件が描かれていくという、ミステリ期の道尾作品以上に直球な本格ミステリ的舞台設定となっているのですね。
過去に起きた事件の真相を探っていく中で、現在進行形の事件も起きて、次第に隠されてきた新事実が浮かび上がっていき、最後には驚くべき真相が明かされて、といった感じでストーリー展開も本格ミステリの王道のようです。
とはいえ、苦悩を抱える主人公の心理描写やそこから生まれ出る幻想・幻惑的な描写に多くを割いているため、探偵役による謎解きが中心というわけではないですし、かつての道尾作品を彷彿させるようなどんでん返しがあるわけでもありません。
どちらかといえば、主人公が毎夜うなされる様に見る悪夢の謎、そして過去の事件や因縁が映し出す悪夢の謎を解いていく部分がメインであるかのようなので、本格ミステリ要素を期待してしまうとその幻想性から掴みどころを見つけられずに中途半端な読み応えとなってしまうかもしれないため、かなり好みが分かれる作風となっているのです。
それでも、閉鎖された田舎の陰鬱な情景や、微妙な心のズレがドラマ性を生み出す人間関係など、読者を強く惹き込むほどの描写力は相変わらずの素晴らしさですし、謎を解くことで人間に巣食う悪夢を取り払うというミステリとして変化球的な狙いも読み応えあるので、読み方さえ誤らなければ(好みに合うならば)、この新たな魅力で覆われた道尾ミステリを堪能できるのではないでしょうか。
> 個人的評価 : ★★★★★ ★☆☆☆☆
本格ミステリ度 : ★★★ 鬼畜グログロ度 : ★★
ビックリ驚愕度 : ★★★ おどろおどろ度 : ★★★★
熱アクション度 : ★★★ 主キャラ魅力度 : ★★★
恋愛ラブラブ度 : ★★ 人間味ドラマ度 : ★★★
下ネタエッチ度 : ★★★★ 感涙ウルウル度 : ★★
衝撃バカミス度 : ★★ 気軽に読める度 : ★★★
* 個人的評価は、減点方式ではなく加点方式となっています
<個人的評価&項目別評価>の詳しい説明・評価基準は
「このミス」完全読破 説明&読破本リストにてご確認ください
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> No.0682 「鏡の花」
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> No.0498 「水の柩」
> No.0432 「カササギたちの四季」
> No.0396 「月と蟹」
> No.0340 「月の恋人~Moon Lovers~」
> No.0312 「蝦蟇倉市事件 1」
> No.0311 「光媒の花」
> No.0294 「球体の蛇」
> No.0233 「花と流れ星」
> No.0186 「龍神の雨」
> No.0169 「鬼の跫音」
> No.0121 「ラットマン」
> No.0117 「カラスの親指」
> No.0097 「ソロモンの犬」
> No.0058 「片眼の猿」
> No.0049 「シャドウ」
> No.0041 「向日葵の咲かない夏」
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