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「このミステリーがすごい!」完全読破 No.747
『名探偵の証明』 市川哲也
「このミス」2014年版 : 35位
受賞(候補) : 「鮎川哲也賞」受賞
総合ランキング :
年度ランキング : 「本格ミステリ・ベスト10」 17位
読始:2014.5.17~ 読終:2014.5.21
読んだ時期 : 「このミス」ランキング発表"後"
読んだ版 : 単行本 <2013年10月>
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屋敷啓次郎は、数々の難事件を研ぎすまされた推理力で次々と解決し、新本格ブームを生み出し各メディアで引っ張りだことなるほどの人気者であった名探偵。
しかし、ある事件の影響で実質引退状態となったまま老境を迎えようかという歳になり、世間ではアイドル探偵・蜜柑花子が(若き頃の屋敷のように)活躍している現状。
そんな屋敷の元にかつての相棒である元刑事の武富竜人が訪ねて来て、知人である資産家の元に蜜柑を名指しした脅迫状が送られてきたので(屋敷も資産家の別荘に赴いて)蜜柑と対決してほしい、と言い出して.....。
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というわけで本作ですが、鮎川哲也賞を受賞したデビュー作です。
本格ミステリ小説内の世界ならではの探偵が二人登場しまして、一人は栄光が過去のものとなっているベテラン老探偵、もう一人は今がまさに旬なアイドル的人気の若手女性探偵と、その探偵像は対照的です。
そんな新旧探偵を対比させつつ(いかにも本格ミステリといった感じの)密室殺人事件の謎に迫っていくのですが、両探偵が同じ比重で扱われれているのではなく、(表紙絵とは違って)旧探偵の方が中心となっています。
そのため、老いによる探偵力(推理力や体力など)の衰えや、過去の栄光と現在の落ちぶれた状況との落差、ブランクがあったことによる不安などが、現代的な探偵との比較により描かれていくことで、かつての名探偵の苦悩が哀愁と共に浮かび上がってくるので、ハードボイルド探偵的なキャラクターのような雰囲気をまとっているのです。
そういったキャラクター的な魅力がある一方で、事件の謎はそれほど本格的であったり独創的であったりするわけではなく、名探偵二人の推理対決が繰り広げられるのかと思いきやそうはならなかったりするので、本格ミステリとしての期待を高めてしまうと読み応えを感じられないかもしれませんし、同じテーマでベテラン本格ミステリ作家が書いた方が(または同じ作者でも実績を積み上げた後で書いていた方が)大傑作に仕上がっていたのではないかと思ってしまいます。
とはいえ、現代的な探偵との比較でリタイア寸前の探偵の悲哀を浮き彫りにしたり、(辛く苦しい部分にも焦点を当てて)探偵としての宿命を描くなど、意欲的な狙いや試みは単純に面白いですし、変に小難しくならずに勢いよくすっきりと読み進め楽しむことが出来るのはデビュー作ならではとも言えるので、あまり本格ミステリ的な要求を高めすぎずにこの“名探偵の生き様物語”を味わってほしいですね。
> 個人的評価 : ★★★★★ ☆☆☆☆☆
本格ミステリ度 : ★★★★ 鬼畜グログロ度 : ★★
ビックリ驚愕度 : ★★★ おどろおどろ度 : ★★
熱アクション度 : ★★ 主キャラ魅力度 : ★★★
恋愛ラブラブ度 : ★★ 人間味ドラマ度 : ★★
下ネタエッチ度 : ★★★ 感涙ウルウル度 : ★★
衝撃バカミス度 : ★★★ 気軽に読める度 : ★★★★
* 個人的評価は、減点方式ではなく加点方式となっています
<個人的評価&項目別評価>の詳しい説明・評価基準は
「このミス」完全読破 説明&読破本リストにてご確認ください
【 “市川哲也” 関連記事 】
> No.803 「名探偵の証明 密室館殺人事件」
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