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「このミステリーがすごい!」完全読破 No.734
『黒富士』 柄澤齊
「このミス」2015年版 : 投票数0
受賞(候補) :
総合ランキング :
年度ランキング :
読始:2014.3.19~ 読終:2014.3.29
読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"前"
読んだ版 : 単行本 <2013年12月>
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柄澤齊は、木口木版画を中心に多様な作品を手掛けている、日本を代表する木版画家です。
そんな高名な美術家が、2002年に小説作品(しかも本格ミステリ小説)を発表すると、下野文学大賞を受賞し、「このミス」で8位、「週刊文春ミステリーベスト10」で9位にランクインするなど、(全くの他分野で活躍している人物の作家デビュー作としては)異例の高評価を受けたのですね。
それでもやはり本職は木版画家なので、その後に作家としての活動は(表に見える形では)なかったのですが、本作にて11年ぶりとなる待望の小説第二作目の発表となったのです。
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空木蓑太は、俳句の師匠でもあった亡き父に頼まれたある物を届けるため、富士の裾野にある山峰苑へと向かう途中、道に迷った挙句にノラ犬に襲われ気絶。
目覚めてみると、謎の老女三人組に助けられていて、しかも蓑太が寝かされていたのはラーメン屋の仕込み小屋だとわかり.....。
といった感じで物語は始まるのですが、そこから主人公が出逢っていくのは、いずれもがぶっ飛んだ性格や言動や容姿を持つエキセントリックな人物たちで、しかも主人公が次々に訪れることになるのは、(それぞれの特徴は大きく異なるにも関わらず)禍々しいほどの豪華さで外連味たっぷりに装飾されたようなとんでもない舞台(建物や景観)ばかりなのです。
そういった人物や舞台が、色鮮やかながら異様で混沌とした前衛的芸術性を感じさせて視覚はおろか嗅覚をも刺激してくるという、文章から三次元のイメージが湧き上がって来るほどの美術家らしい表現方法によって演出されているので、読み始めれば得体の知れないパワーに圧倒させられ続けること間違いなしです。
ただやはり、そういった作品舞台や状況の説明描写に多くの筆が割かれていることもあり、ストーリーの進みは遅めですし、常に芸術性が高くて想像するのが難しい作中のイメージを頭の中で描きながら読まなければならないため、スイスイと読み進められるようなタイプではないですし、物語を理解するのも難解なのではないでしょうか。
現に自分もなかなかページが進まず読むのに苦労したのですが、それでも本作でしか味わうことが出来ないであろう想像の限界を超えた世界観にわけも分からず魅了されて、圧巻のクライマックスでは“こりゃとんでもないものを読んでしまった!!”と感銘を受けたほどなので、積極的にはお薦めできないものの、常道や王道から外れたアバンギャルドな作品を読んでみたいという人には本作をお薦めしたいですね。
> 個人的評価 : ★★★★★ ★★☆☆☆
本格ミステリ度 : ★★ 鬼畜グログロ度 : ★★
ビックリ驚愕度 : ★★★ おどろおどろ度 : ★★★
熱アクション度 : ★★★ 主キャラ魅力度 : ★★★★
恋愛ラブラブ度 : ★★★ 人間味ドラマ度 : ★★
下ネタエッチ度 : ★★ 感涙ウルウル度 : ★★
衝撃バカミス度 : ★★★★ 気軽に読める度 : ★
* 個人的評価は、減点方式ではなく加点方式となっています
<個人的評価&項目別評価>の詳しい説明・評価基準は
「このミス」完全読破 説明&読破本リストにてご確認ください
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