『蛍の森』 石井光太 > 「このミス」完全読破 No.730
「このミステリーがすごい!」完全読破 No.730
『蛍の森』 石井光太
「このミス」2015年版 : 81位
受賞(候補) :
総合ランキング :
年度ランキング :
読始:2014.3.13~ 読終:2014.3.14
読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"前"
読んだ版 : 単行本 <2013年11月>
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香川県の雲岡村で、90歳を超えた村人二人が忽然と姿を消した神隠し事件が発生。
東京で医療関係の仕事をしている水島は、この事件の重要参考人ながらずっと黙秘を続けている父・乙彦から真相を聞き出すため、生まれて初めて父の故郷である雲岡村へ。
村へと着き、父と会う前に事件の詳細や村の様子を見聞きしていると、以前父から教えられた、父が子供時代にこの村で体験した凄絶で残酷な出来事との関連がいくつも浮かび上がって来て.....。
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石井光太は、国内外の貧困・医療・戦争などをテーマに、常識にとらわれない様々な表現方法で作品を手掛けているノンフィクション作家でして、その表現方法を巡って論争が起きるほどに(ノンフィクション作家として)革新的な存在となっています。
そして本作が初のフィクション(小説)作品なのですが、今回の大きなテーマとなるのは、顔など外見に表れる症状や病気に対する偏見から長い間患者が差別の対象とされてきたハンセン病(らい病)です。
舞台となる村は、四国(八十八箇所)遍路道の近くにあるのですが、かつてハンセン病患者は(病気が発覚すると)故郷を追われて行き場所がなくなってしまうこともあり(生きていくために職業として)四国遍路を行う人が多かったので、本作の舞台となる村でもハンセン病患者と深い関わりがありました。
しかしその関係というのは人権蹂躙レベルでの差別的なもので、本作中でもハンセン病患者に対して人間を相手にしているとは思えないほどの残虐非道で凄絶すぎるエピソードが描かれていくので、読んでいると哀しみと共に胸が痛みますし、このような差別的行為が現実にもほんの数十年前に起きていたのだろうと思うとやるせない想いで一杯になってしまうのですね。
そんな感じでこの重く辛いテーマ性はひしひしと伝わってくるものの、現代を舞台とした神隠し事件は真相の意外性や驚愕の展開などあるわけではないですし、テーマ性の部分と事件ミステリ/サスペンス部分とががっちりと絡み合うまでにはあと少し何かが足りない印象もありました。
なので、(あくまで「このミス」にランクインするような傑作と比べるならば)物語(社会派ミステリ/サスペンス小説)としての圧倒されるほどの読み応えはそこまででもなかったように思います(もちろん比較対象のレベルが高すぎるからなのですが)。
とはいえ、あまりにも過剰すぎるのではと感じるほどの鬼畜的所業や、重く辛い物語の中から放たれる希望&感動の光など、フィクション(小説)であればこそ描くことが出来た(であろう)部分も多いので、読めば“ノンフィクション作家が書いたフィクション作品”ならではの魅力や筆力を感情が揺さぶられるほどに堪能できるのではないでしょうか。
> 個人的評価 : ★★★★★ ☆☆☆☆☆
本格ミステリ度 : ★★ 鬼畜グログロ度 : ★★★★★
ビックリ驚愕度 : ★★ おどろおどろ度 : ★★★★
熱アクション度 : ★★ 主キャラ魅力度 : ★★
恋愛ラブラブ度 : ★★ 人間味ドラマ度 : ★★★★★
下ネタエッチ度 : ★★★★ 感涙ウルウル度 : ★★★★
衝撃バカミス度 : ★ 気軽に読める度 : ★
* 個人的評価は、減点方式ではなく加点方式となっています
<個人的評価&項目別評価>の詳しい説明・評価基準は
「このミス」完全読破 説明&読破本リストにてご確認ください
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