『ブラックライダー』 東山彰良 > 「このミス」完全読破 No.689
「このミステリーがすごい!」完全読破 No.689
『ブラックライダー』 東山彰良
「このミス」2014年版 : 3位
受賞(候補) : (「日本推理作家協会賞」候補)
(「星雲賞」候補)
総合ランキング : 「SUGOI JAPAN Award 2015」 ノミネート
年度ランキング : 「AXNミステリー 闘うベストテン」 1位
「キノベス!」 11位
「ミステリが読みたい!」 12位
「ベストSF2013」 18位
読始:2013.9.20~ 読終:2013.9.24
読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"前"
読んだ版 : 単行本 <2013年9月>
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バード・ケイジは、56歳ながら192cm/108kgの巨体でならず者共を取り締まる、元追い剥ぎのカンザスシティ連邦保安官。
畜産家のローランド・デュカキスから、列車強盗に奪われた馬40頭を取り戻すよう依頼を受け、犯人であるレイン兄弟とその仲間のクロウ・フィッシュを追うことに。
一方でレイン兄弟の三男・ロミオと五男・スノーは、盗んだ馬を売ってスノーが抱える大借金を返済するため、幼なじみのアイザイア・ケンプ、そして途中から仲間に加わったクロウとその姉・マンデーと共にメキシコへと向かっていて.....。
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といった感じで簡単なあらすじを書くと、19世紀後半の西部開拓時代を舞台としたウエスタン小説のようですが、実際には、一度世界が崩壊して、旧世界(現代)のような文明に徐々にではあるけれど戻りつつある近未来の世界が舞台です。
この時代における(本作の中心地となる)アメリカやメキシコでは、開拓地で馬に騎乗し銃やナイフで武装したカウボーイのようなならず者たちが暴れているため、まさに西部劇の世界なのですが、人が人を襲って食べるのが普通だったり、人と牛の雑交種である“ユダの牛”が存在しているなど、より危険で凶暴で混沌とした無法地帯となっているのです。
この西部開拓時代と近未来SFとがミックスされた世界観がとにかく凄まじくて、クエンティン・タランティーノやロバート・ロドリゲスの作品をさらに過剰にさらに荒唐無稽にしたようなとんでもない世界なのに、(他人事とは思えないような真に迫るリアルさが物語全体から湧き出ているため)現代世界と時間軸が繋がっている世界であることが実感出来てしまうのですからね。
そんな狂った世界において飛び抜けた存在感を誇示するバードやレイン兄弟、そして“ユダの牛”であるジョアン・メロヂーヤが魅力溢れるキャラクターであることは必然的で、そんな人物たちにバイオレンスやバトルやノワールや活劇アクションやパンデミックなどの展開が絡み、人生観や宗教や神話や虐殺や無秩序や絶望や狂気や暴力や希望や愛などの要素が溢れんばかりにぶち込まれているので、まあ読んでいる間はいやおうなしに圧倒されっぱなしでした。
とはいえ、大まかなジャンル分けをしたら同じ場所に分けられそうな貴志祐介のNo.126「新世界より」や高野和明のNo.459「ジェノサイド」などと比べると、わかりやすいエンタメ的な面白さや演出は控えめで読者に優しい作風とはいえないので、好き嫌いは激しく分かれそうですし、文章がぎっしりと詰まった600ページで税別2,600円と文量的にも値段的にも気楽には手を出しにくいので(後日追記:単行本版の事です)、誰もが楽しむことが出来る作品というわけではないでしょう。
ただ、これまでの東山作品のあらゆる魅力全てを最大限に放つことの出来る世界を作り上げた奇跡のような作品だと個人的には思うので、東山作品好きの人にお薦めなのはもちろんですが、まだ東山作品を読んだことがない人にも、まあ値段やページ数からして強くは薦められないけれど、東山作品の魅力を味わってみたいと言うならば間違いなく本作を薦めますね。
> 個人的評価 : ★★★★★ ★★★☆☆
本格ミステリ度 : ★★ 鬼畜グログロ度 : ★★★
ビックリ驚愕度 : ★★ おどろおどろ度 : ★★★★
熱アクション度 : ★★★★★ 主キャラ魅力度 : ★★★★★
恋愛ラブラブ度 : ★★★ 人間味ドラマ度 : ★★★
下ネタエッチ度 : ★★★ 感涙ウルウル度 : ★★
衝撃バカミス度 : ★★★ 気軽に読める度 : ★
* <個人的評価&項目別評価>の説明はこちら!
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> No.0689 「ブラックライダー」
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