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「このミステリーがすごい!」完全読破 No.679
『楽園の蝶』 柳広司
「このミス」2014年版 : 投票数0
受賞(候補) :
総合ランキング :
年度ランキング :
読始:2013.8.30~ 読終:2013.8.30
読んだ時期 : 「このミス」ランキング発表"前"
読んだ版 : 単行本 <2013年6月>
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大学在学中に学生運動に参加していた青年・朝比奈英一は、特高警察に捕まり転向宣言をしたものの日本には居づらくなり、満州へと渡り脚本家として満州映画協会で働くことに。
しかし、ドイツで実績を挙げて満州へとやって来た監督・桐谷サカエに渡す脚本は、酷評と共にことごとくボツ。
そんな折、現地中国人スタッフ・陳雲と仲良くなり、二人共同で脚本を作り上げることになったものの、撮影所内では奇妙な騒動が次々に起きて.....。
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というわけで本作ですが、1942年(戦時中)の満州を舞台とした歴史ミステリです。
当時の満州国(現在の中国東北部)というのは、実質日本が支配していたものの、建前上は日本人・中国人・満州人など多民族が共存する独立国家だったので、作品世界は国際色豊かな雰囲気で彩られています。
そんな満州に設立されたアジア最大の映画撮影施設・満州映画協会(満映)を舞台に、脚本家志望である主人公の悪戦苦闘ぶりが描かれていくのです。
映画制作に様々な形で携わる人々の仕事ぶりはとても活気に満ち溢れていて、映画撮影舞台裏物語としても面白いですし、そこに謎めいた事件や騒動が次々に持ち上がり、さらには当時の満州ならではの政治や人種や戦争などの要素が絡み合っていくので、“満映”が舞台だからこその魅力が込められた世界観が生み出されていたように思います。
そういった歴史ミステリだからといって、重厚で堅苦しいような作風ではなくて、主人公は軽くてひょうひょうとした性格ですし、コンビを組むことになる陳雲とのやり取りはコミカルで楽しく、桐谷監督や満映理事長の甘粕正彦(実在の人物)、軍医少将の石井四郎(こちらも実在の人物)を始め登場人物たちはみな個性豊かな面々なので、気軽に楽しめるエンタメ歴史ミステリとして仕上がっているのですね。
そして、近年の柳広司の(No.162「ジョーカー・ゲーム」シリーズ以外の)新刊の常として、“ジョーカー・ゲームシリーズ”と同様の魅力を期待して読む人が多く、そういった人にはかなり不評となってしまう傾向にあるのですが、本作も“ジョーカー・ゲームシリーズ”と同じような面白さを期待してしまうと物足りなく思う可能性が高そうです。
ただ本作の場合は、満州という実態が虚ろな国、映画という創作された世界を通して、現実と虚構、現実と幻影の対比を鮮やかに映し出していて、そんな揺らめく蜃気楼のようにも感じられる作品世界という(“ジョーカー・ゲームシリーズ”とは明らかに異なる)魅力を持つ作品なので、“ジョーカー・ゲームシリーズ”と同じ作者だということを全く意識せずに読めば、本作ならではの面白さを充分に堪能できるのではないでしょうか(それでも好き嫌い分かれやすいタイプかもしれませんが)。
> 個人的評価 : ★★★★★ ★☆☆☆☆
本格ミステリ度 : ★★★ 鬼畜グログロ度 : ★★
ビックリ驚愕度 : ★★ おどろおどろ度 : ★★★
熱アクション度 : ★★★ 主キャラ魅力度 : ★★★
恋愛ラブラブ度 : ★★ 人間味ドラマ度 : ★★★
下ネタエッチ度 : ★ 感涙ウルウル度 : ★★
衝撃バカミス度 : ★★★ 気軽に読める度 : ★★★
* <個人的評価&項目別評価>の説明はこちら!
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