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2013年8月25日 (日)

『決壊』 平野啓一郎 > 「このミス」完全読破 No.625

「このミステリーがすごい!」完全読破 No.625

 『決壊』 平野啓一郎

   「このミス」2009年版 : 13位

   受賞(候補) : 「芸術選奨文部科学大臣新人賞」受賞
            (「織田作之助賞」候補)

   総合ランキング :

   年度ランキング : 「ミステリが読みたい!」 12位
               「キノベス」 14位

   読始:2013.1.31~ 読終:2013.2.5

   読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"後"

   読んだ版 : 単行本(上・下) <2008年6月>

決壊〈上〉 (新潮文庫)決壊〈上〉 (新潮文庫)
平野 啓一郎

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 「このミス」は、意外に思うような他ジャンル作家の作品がランクインすることが度々あったのですが、ここ最近は以前に比べてジャンルの境界が曖昧になっているせいか、意外な作家による驚きのランクインというのはほとんどなくなってきました。

 そんな中にあって、2009年版で13位にランクインしたこの作品&著者は、かなりのインパクトがあったのではないでしょうか。

 平野啓一郎は、“三島由紀夫の再来”とも言われた「日蝕」で1998年にデビューすると、翌年には同作で芥川賞を受賞したのですが、(京都大学在学中の)当時最年少での芥川賞受賞だったことや、賛否両論激しく分かれるような内容から、文壇内や文学好きだけでなく一般レベルにおいてまで話題になるほどに、かなりセンセーショナルなデビューとなりました。

 その後も文学作品を発表し続けていたため、超有名作家であるものの「このミス」とは全く関係ない作家といっても過言ではなかったものの、初めて現代サスペンスというジャンルを手掛けた本作にて、驚きのランクインとなったのですね。

 なお、本作は単行本版でも文庫版でも表紙にあらすじが書かれているという珍しい装丁となっていますが(文庫版は裏表紙側にも別のあらすじが書かれています)、上巻に書かれているあらすじの内容は、上巻の後半以降になってやっと展開していく部分におけるものなので、あまり先の内容を知らずに読みたいという場合は、なるべくあらすじを目にせずに本文を読んでしまった方が良いと思います。

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 内容の方ですが、序盤においては、妻と息子を持つ一般的なサラリーマンである沢野良介、エリート公務員であり良介の兄でもある沢野崇、学校でも家庭でも孤立している中学生の北崎友哉、この3人を中心とした話が並行して語られていきます。

 この時点では事件は起きておらず、それぞれの日常生活が描かれていくのですが、良介は家庭の問題や兄へのコンプレックスにより精神的に疲労していきますし、崇は仕事も女性も不自由ないまさにエリートながらどこか冷めた得体の知れなさが感じられ、智哉の鬱屈したエピソードはかなりエグくて生々しいので、この時点でもすでに不気味で鋭利な雰囲気が漂っています。

 そして殺人事件が起きてから物語は一気に動き出しまして、次第に衝撃性が増してくる謎と猟奇性に満ちたこの事件と、それに巻き込まれる主要人物たちの人間ドラマとが絡み合い、壮絶で衝動的で狂気的な展開が繰り広げられていくのですね。

 事件自体にかなりの残虐性と鬼畜的猟奇性があり、現代社会に対する暴力的な問題提起もあり、それらが衣で覆うことなく剥き出しになって襲って来るような迫力ある文章や演出で描かれていくので、とにかく無防備に圧倒されてしまうほどの凄まじい力が作品から放たれていました。

 刺激の強すぎる問題作ですし、それをエンタメ的というよりもノンフィクションに近いようなリアルさで描いていくため、好みは激しく分かれそうではありますが、死生観や哲学論といった作者らしい要素も絡んでくるなど、平野啓一郎だからこそ生み出すことの出来たサスペンス作品なので、その読み応えはまさしく本物なのではないでしょうか。


> 個人的評価 : ★★★★☆ ☆☆☆☆☆


 本格ミステリ度  : ★★       鬼畜グログロ度 : ★★★★
 ビックリ驚愕度  : ★★★      おどろおどろ度 : ★★★★
 熱アクション度  : ★★       主キャラ魅力度 : ★★★
 恋愛ラブラブ度 : ★★★      人間味ドラマ度 : ★★★★
 下ネタエッチ度 : ★★★★    感涙ウルウル度 : ★★★
 衝撃バカミス度 : ★★★     気軽に読める度 : ★★

  * <個人的評価&項目別評価>の説明はこちら!


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