『死神の浮力』 伊坂幸太郎 > 「このミス」完全読破 No.672
「このミステリーがすごい!」完全読破 No.672
『死神の浮力』 伊坂幸太郎
「このミス」2014年版 : 5位
受賞(候補) : (「山田風太郎賞」候補)
総合ランキング :
年度ランキング : 「週刊文春ミステリーベスト10」 5位
「ダ・ヴィンチ BOOK OF THE YEAR」
(小説ランキング) 5位
「ミステリが読みたい!」 7位
「AXNミステリー 闘うベストテン」 10位
読始:2013.7.30~ 読終:2013.7.31
読んだ時期 : 「このミス」ランキング発表"前"
読んだ版 : 単行本 <2013年7月>
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伊坂幸太郎作品は、「このミス」で1位に輝き山本周五郎賞や本屋大賞も受賞したNo.125「ゴールデンスランバー」(2007年)を境として、“第1期”と“第2期”とに分けられます。
これは正式にというわけではもちろんなく、両者の違いというのは作者自身による意識の差のようなものらしいのですが、実際にそれぞれの時期に発表された作品を読み比べてみれば、自然と作風の変化に気付かされるのではないでしょうか。
しかし、第1期の作品であるNo.381「グラスホッパー」の続編No.384「マリアビートル」を発表したり、明らかに第1期の頃の作風な No.618「残り全部バケーション」を発表するなど、ここ最近は以前ほどには“第2期”らしい作品にこだわっていないように感じられます。
それで本作ですが、第1期における人気作の1つであるNo.627「死神の精度」の続編なので、やはり第1期に近い作品といえるのかもしれませんね。
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前作は6編からなる連作集でしたが、今回は長編となります。
主人公である死神の千葉は、1週間後に死ぬ運命にある人間を調査・観察し、死ぬべき人間か否かを判定する調査部の一員で、調査対象の人間とは死神としてではなく(仮の姿をした)人間として接触します。
今回の調査対象は、小学生の娘を殺されて絶望の淵にいる作家の山野辺遼で、無罪判決を受けた犯人に対して、妻・美樹と共に復讐を果たそうとしているため、千葉はそれに同行することに。
犯人の本城崇が知能指数の高いサイコパスで、山野辺夫婦が企む復讐から逃れようとするどころか逆に残忍な罠を仕掛けてくるため、この復讐劇は悲壮感や切迫感が漂っています。
しかし、そんな復讐劇に同行するのが、クールなのだけれど人間の感情や微妙な言い回しを理解できないため言動が常識からズレていてことごとくかみ合わない千葉なので、緊迫感溢れる中にもほのぼのとした雰囲気やコミカルさが生まれ、このシリーズならではの魅力が作られていました。
そして、前作では連作ということもあり対象者は6人いたのに対し、本作では長編なので調査対象者は1人(一夫婦)のみとなるため、千葉目線による物語としてだけでなく、山野辺夫妻の物語としてもじっくりと描かれていきますし、死生観やサイコパスについての哲学的ともいえるやり取りも多いので、“第2期”的な読み応えもあったように思います。
それに、連作集だった前作と比べると、短編ならではの切れの良さがないため、このシリーズの大きな魅力の一つが欠けているように感じたりもしました。
ただ、それでも千葉のクールでズレた言動は相変わらずの面白さですし、(死神が主人公の)生と死にまつわる物語としても長編だからこそ描くことの出来る魅力を堪能できると思うので、短編集である前作との比較で優越を決めようとしないのであれば、本作を大いに楽しめるのでは(もちろん本作の方が前作より好きだという人も多くいるでしょう)。
> 個人的評価 : ★★★★★ ☆☆☆☆☆
本格ミステリ度 : ★★ 鬼畜グログロ度 : ★★
ビックリ驚愕度 : ★★ おどろおどろ度 : ★★★
熱アクション度 : ★★★ 主キャラ魅力度 : ★★★★★
恋愛ラブラブ度 : ★ 人間味ドラマ度 : ★★★
下ネタエッチ度 : ★ 感涙ウルウル度 : ★★
衝撃バカミス度 : ★★★ 気軽に読める度 : ★★★
* <個人的評価&項目別評価>の説明はこちら!
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> No.672 「死神の浮力」
> No.627 「死神の精度」
> No.618 「残り全部バケーション」
> No.612 「夜の国のクーパー」
> No.528 「PK」
> No.384 「マリアビートル」
> No.381 「グラスホッパー」
> No.367 「バイバイ、ブラックバード」
> No.312 「蝦蟇倉市事件 1」
> No.310 「オー! ファーザー」
> No.289 「SOSの猿」
> No.125 「ゴールデンスランバー」
> No.084 「アヒルと鴨のコインロッカー」
> No.021 「重力ピエロ」
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