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2013年3月26日 (火)

『夜の底は柔らかな幻』 恩田陸 > 「このミス」完全読破 No.635

「このミステリーがすごい!」完全読破 No.635

 『夜の底は柔らかな幻』 恩田陸

   「このミス」2014年版 : 69位

   受賞(候補) : (「直木三十五賞」候補)

   総合ランキング :

   年度ランキング :

   読始:2013.3.8~ 読終:2013.3.13

   読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"前"

   読んだ版 : 単行本(上・下) <2013年1月>

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恩田 陸

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 日本の中で治外法権の地となっている途鎖国。

 有元実邦は、在色者であることを隠しながら、自らが生まれ育った途鎖国に潜入しようと途鎖駅行きの列車に乗車。

 しかし終点の駅では、実邦が途鎖国から逃げ去る原因となった因縁深い相手、入国管理局の葛城晃が待ち受けていて.....。

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 No.508 「夢違」以来1年以上ぶりとなる恩田陸の長編新作は、上下巻の大作です。

 「在色者」「イロ」「ウラ」「闇月」「ソク」「タマゲ」など独自の用語が数多く出てくるのですが、物語の舞台としてはパラレルワールド的な日本なので現実感はあり、それでいて夢や幻など幻想的な要素で包まれてもいるので、タイトルが表すような掴み所のない雰囲気が漂っています。

 そして「イロ」とは超能力、「在色者」とは超能力者のことで、強力なイロを持つ在色者が数多く登場してくるのですが、途鎖国というのは元々在色者が多く、しかも年に一度の闇月の期間には在色者や犯罪者が密入国してまで集まってくるということで、超能力バトル的な展開になっていくのですね。

 そこに、実邦が途鎖国から逃げ去るきっかけとなった事件や、葛城との関係、入国時から付きまとって来る謎の男・黒塚弦の正体、そして各々が途鎖国にやって来て山を目指す目的など、数々の謎が魅力的に散りばめられています。

 そんな謎と暴力(バトル)と幻想性により、地から足が浮いているかのような抽象的な読み心地と、凝縮された狂気が一気に解き放たれたような読み応えが感じられるという、恩田作品らしいエンタメ性が存分に込められたSFダークファンタジーでした。

 まあ、それまでの魅力的な謎や伏線をきっちりとは解明・回収などせず、突飛なエンディングにモヤモヤ感が残るという、恩田作品特有の作風は変わりないので、過去作品のそういった部分に不満を持っていた人は、本作を読んでもやはりそこに文句を付けることになるだろうから、最初から本作を手にしない方がいいのかもしれません。

 個人的には、とんでも系展開や突飛なエンディングはむしろ大好物なのですが、山に入るまでの盛り上がりから、クライマックスではどれだけとんでもない超能力バトルが繰り広げられるのだろうと期待してしまったものの、結構あっさりと終わってしまったので、そこでちょっと物足りなさを感じてしまいました.....。


> 個人的評価 : ★★★★☆ ☆☆☆☆☆


 本格ミステリ度  : ★★       鬼畜グログロ度 : ★★
 ビックリ驚愕度  : ★★       おどろおどろ度 : ★★★
 熱アクション度  : ★★★★    主キャラ魅力度 : ★★★★
 恋愛ラブラブ度 : ★★       人間味ドラマ度 : ★★
 下ネタエッチ度 : ★★       感涙ウルウル度 : ★★
 衝撃バカミス度 : ★★★★    気軽に読める度 : ★★

  * <個人的評価&項目別評価>の説明はこちら!


  【 “恩田陸” 関連記事 】

  > No.1121 「ドミノin上海」
  > No.0954 「八月は冷たい城」(後日更新予定)
  > No.0953 「七月に流れる花」

  > No.0814 「EPITAPH東京」
  > No.0719 「雪月花黙示録」
  > No.0635 「夜の底は柔らかな幻」
  > No.0508 「夢違」
  > No.0317 「私の家では何も起こらない」

  > No.0209 「訪問者」
  > No.0161 「ブラザー・サン シスター・ムーン」
  > No.0131 「きのうの世界」
  > No.0065 「中庭の出来事」
  > No.0064 「Q&A」


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