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「このミステリーがすごい!」完全読破 No.621
『七つの会議』 池井戸潤
「このミス」2014年版 : 投票数0
受賞(候補) :
総合ランキング :
年度ランキング : 「ダ・ヴィンチ BOOK OF THE YEAR」
(小説ランキング) 25位
読始:2013.1.19~ 読終:2013.1.24
読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"前"
読んだ版 : 単行本 <2012年11月>
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池井戸潤は、「果つる底なき」で江戸川乱歩賞を受賞しデビューすると、その後も企業小説を中心に作品を発表し続けています。
その内容は、銀行勤務や金融コンサルタント業などの経歴を生かした銀行・金融業界の物語、そして談合やリコールなど企業による犯罪を描いた物語が中心となるのですが、ジャンルというかテーマが比較的絞られているにも関わらず、作品を発表する度に話題性と評判が湧き上がってくるところが凄いですね。
そして、「空飛ぶタイヤ」で直木賞候補、「鉄の骨」で吉川英治文学新人賞受賞&直木賞候補、「下町ロケット」で直木賞受賞と、文学賞でも高い評価を受けているので、今や人気と実力を兼ね備えた一流作家の一人といえそうです。
ただ、ミステリ新人賞である乱歩賞でデビューした割には、「このミス」を始めとしたミステリランキングなどで名前を見ることはなく、すっかりエンタメ方面へと行ってしまったようではあるものの、ミステリ色の強い企業小説だった「鉄の骨」は「このミス」で30位(2010年版)とランクインまであと一歩というところまで票を集めていたので、ミステリ作家としてもまだまだ期待できそうです。
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というわけで本作ですが、「居眠り八角」「ねじ六奮戦記」「コトブキ退社」「経理屋稼業」「社内政治家」「偽ライオン」「御前会議」「最終議案」という8編を収録した連作集です。
中堅メーカー・東京建電を中心に描かれていく企業小説ですが、エリート課長が歳上の万年係長からパワハラで社内委員会に訴えられ、誰が見ても不可解に思う裁決が下されたことをきっかけに、物語は大きく動き出していきます。
とはいえそれは連作としての大きな流れでして、各章で主人公は異なり、その主人公を中心とした物語、それは営業だったり経理だったり顧客対応室だったり下請けの町工場だったりと中心となる舞台も変わるのですが、それぞれが独立した物語が繰り広げられていくのです。
自分は池井戸作品を本作で初めて手にしたのですが、企業小説ということでリアルなほどの人間描写や人間関係などからくる重厚で遊びのない内容なのかと想像していたものの、実際に本作を読んでみれば、各キャラクターはみな個性的な魅力が分かりやすく作られていますし、そのやり取りも軽快さがあり読みやすいので、さすがはエンタメ作家として評価が高いだけあるんだなと、読む前と後での印象の変化から感じられました。
ただそれでも、描かれていく企業的エピソードの数々はどれもリアルなほどに迫ってきますし、仕事に対する各人物の熱意や苦悩などもまさに自分がその仕事に携わっているかのように伝わって来て、そこで深く考えさせられたり感動させられたりもしたので、そんなリアリティーある企業小説という面でもやはり流石だなと思ってしまいましたね。
そしてそれらの物語は、第一章で生まれた謎をリレーのように受け渡しながら繋がれていくことで、連作としての物語も大きく膨らんでいくのですが、そんな群像劇ミステリ的な演出が加えられていることで、エンタメ小説としての物語も企業小説としての社会性も話が進むにつれて盛り上がっていくので、そんな構成の妙にもさすがはミステリ新人賞出身作家だなと感心してしまいました。
というわけで、一般的な人気も評価も高いのにこれまで全く読む機会のなかった作家ということもあり、そして読む前と後での印象が大きく異なっていたこともあり、本作自体が面白かったのはもちろんですが、それ以上に作家としての池井戸潤に対する興味が大きくなりましたねェ。
> 個人的評価 : ★★★★★ ☆☆☆☆☆
本格ミステリ度 : ★★ 鬼畜グログロ度 : ★
ビックリ驚愕度 : ★★ おどろおどろ度 : ★★
熱アクション度 : ★★ 主キャラ魅力度 : ★★★
恋愛ラブラブ度 : ★★★ 人間味ドラマ度 : ★★★★
下ネタエッチ度 : ★ 感涙ウルウル度 : ★★★
衝撃バカミス度 : ★★ 気軽に読める度 : ★★★★
* <個人的評価&項目別評価>の説明はこちら!
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