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2013年2月11日 (月)

『ルック・バック・イン・アンガー』 樋口毅宏 > 「このミス」完全読破 No.619

「このミステリーがすごい!」完全読破 No.619

 『ルック・バック・イン・アンガー』 樋口毅宏

   「このミス」2014年版 : 投票数0

   受賞(候補) :

   総合ランキング :

   年度ランキング :

   読始:2013.1.16~ 読終:2013.1.16

   読んだ時期 : 「このミス」ランキング発表"前"

   読んだ版 : 単行本 <2012年11月>

ルック・バック・イン・アンガールック・バック・イン・アンガー
樋口毅宏

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 樋口毅宏といえば、歴史的著名人や流行りの有名人などを作中で話題にしたり紛れ込ますことを得意としています。

 それは、実名や具体的な固有名詞だったり、あくまでボカシてはいるものの誰だかわかるような表現だったりしながら、時にリスペクトやオマージュを、時に揶揄や蔑視を込めて物語の中に溶け込ませているため、その荒唐無稽でイカレた物語に現実感が歪な形で挿し入れられ、独特の読み味を生み出しているのです。

 ところが本作は、そういった実在の著名人や実在の有名エピソードはこれまでの作品ほどには積極的に組み入れていないのですね。

 とはいえ、本作はアダルト本出版社を舞台としているのですが、作者自身がタブーなき芸能スキャンダル雑誌『BUBUKA』の編集をしていたという経歴が活かされた内容ということもあり、内情を知っているからこそのエピソードや人物描写の数々のどこまでがリアルでどこまでがフィクションなのかが読んでいて掴めないのです。

 なので、今回は誰もが知っている有名人やそのエピソードではなく、内情を知る人しか真実がわからない閉ざされた世界における物語ではあるものの、現実感と非現実感との境を蹂躙されたような樋口作品独特の読み応えは健在でした。

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 というわけで本作は、あるアダルト本出版社に勤める4人の人物の物語を、連作形式で描いていきます。

 出版社の編集部を舞台にしているとあって、もちろん編集方針を巡るぶつかり合いや部内での派閥争い、そして禁断の社内恋愛など、普通の職業小説にあるような人間ドラマが繰り広げられます。

 とはいえ、本作は過激なアダルト本の編集部が舞台ですし、それにやはり樋口作品なので、描かれていく業界的人間ドラマの中身といえば、エログロ全開で狂気の無法地帯という、普通の職業小説で見ることは決してないようなものなのですね。

 まあとにかく登場してくる人物たちがかなり強烈な個性の持ち主たちで、特に各章でメインとなる人物は、その内に秘める狂気や暴力性や変態性を、仕事や私生活や恋愛などに制御なく大放出してしまうような、とんでもないキャラクターたちばかりなのです。

 そんな人物たちが繰り広げるエピソードの数々は刺激の強すぎるものばかりで、出版社を舞台にしているとは思えないような狂乱の世界が描かれていくのです。

 そんな感じで、歪んでいて尖っていて狂っていてエロくて暴力的でと、樋口作品の魅力がてんこ盛りの出版社物語なので、多くの人にお薦めすることはさすがに出来ませんが、これまでの樋口作品好きの人ならば期待通りの面白さを文句なく堪能できるのではないでしょうか。


> 個人的評価 : ★★★★☆ ☆☆☆☆☆

 本格ミステリ度  : ★        鬼畜グログロ度 : ★★★
 ビックリ驚愕度  : ★★       おどろおどろ度 : ★★★
 熱アクション度  : ★★       主キャラ魅力度 : ★★★
 恋愛ラブラブ度 : ★★★★    人間味ドラマ度 : ★★
 下ネタエッチ度 : ★★★★★  感涙ウルウル度 : ★
 衝撃バカミス度 : ★★★     気軽に読める度 : ★★

  * <個人的評価&項目別評価>の説明はこちら!


  【 “樋口毅宏”関連記事 】

  > No.619 「ルック・バック・イン・アンガー」
  > No.562 「二十五の瞳」
  > No.445 「民宿雪国」
  > No.444 「雑司ヶ谷R.I.P.」
  > No.253 「さらば雑司ヶ谷」


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