『笑うハーレキン』 道尾秀介 > 「このミス」完全読破 No.617
「このミステリーがすごい!」完全読破 No.617
『笑うハーレキン』 道尾秀介
「このミス」2014年版 : 139位
受賞(候補) :
総合ランキング :
年度ランキング :
読始:2013.1.9~ 読終:2013.1.9
読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"前"
読んだ版 : 単行本 <2013年1月>
笑うハーレキン (中公文庫) 道尾 秀介 中央公論新社 2016-01-21 売り上げランキング : 10273 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
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道尾秀介の2013年最初の新作は、読売新聞で昨年(2012年)1~10月に連載されていた長編作品です。
ここ最近の道尾作品の記事では毎度のように同じことを書いていますが、元々は読者を鮮やかに騙すどんでん返しトリックが込められた作品で高評価を得ていたものの、2009年末のNo.294「球体の蛇」以降は、どんでん返しはなく、ミステリ要素自体も少なめだったりほとんどなかったりするような、文学的な作品に路線チェンジしています。
もちろん文学寄りの(ミステリ度の低い)作品も面白いのですが、やはりかつてのどんでん返しトリックをまた味わいたい気持ちもあるので、道尾秀介の新作が発売される度に、今回のミステリ度はどのくらいのものなのか、そして果たしてどんでん返しはあるのかどうか、といった部分も物語的内容以上に気になってしまうのですね。
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本作の主人公は、チラシ投函や飛び込みなど地道な営業で仕事を取っている家具職人でありながら、実はホームレスでもある東口太一。
そんな主人公と、同じスクラップ置き場の住民であるホームレス仲間たち、そして突然弟子入り志願してきた若い女・奈々恵といった面々の日常が綴られていくのですが、赤の他人が共同生活を送っていたり、主人公たちの不遇な状況を明るく軽快に描いているところなど、No.117「カラスの親指」に近い読み応えがありました。
とてもコミカルでほのぼのとしたやり取りは読んでいてとても微笑ましいですし、ホームレスという同じ立場にいるからこそ生まれる交流や絆など心温まるものがあるものの、そんな中にも社会的弱者としての苦しみや葛藤などの悲哀さが漂っています。
そんな雰囲気の中で、深い傷を負った主人公の過去やその傷がぶり返して来る現在、謎の多い存在である奈々恵の行動、そして依頼された奇妙な仕事など、真相が気になるし先をすぐにでも読み進めたくなるような要素が次々に現れてくるため、一度読み始めてしまえばこの魅力的な物語世界にのめり込んでしまう可能性は高いのでは。
ミステリ的には、かつてのようなどんでん返しはないし、ミステリ要素を前面に押し出しているわけではないものの、作品全体に伏線が散りばめられていて、それが真相へと繋がっていたりもします。
それに、サスペンス的な要素による盛り上がりもあるなど、ここ最近の道尾作品と比べてもエンタメ度は格段に高いので、かつてのどんでん返しトリックや、No.311「光媒の花」・No.396「月と蟹」のような哀しくも感動的な物語を期待すると物足りないかもしれませんが、ほど良いエンタメとほど良いミステリとほど良い感動とで描かれる胸を打ち心躍る人間ドラマという、これまでの魅力と新たな魅力とが絶妙にブレンドされた道尾作品を味わうことが出来るのではないでしょうか。
> 個人的評価 : ★★★★★ ☆☆☆☆☆
本格ミステリ度 : ★★ 鬼畜グログロ度 : ★★
ビックリ驚愕度 : ★★★ おどろおどろ度 : ★★
熱アクション度 : ★★★ 主キャラ魅力度 : ★★★★
恋愛ラブラブ度 : ★★ 人間味ドラマ度 : ★★★
下ネタエッチ度 : ★ 感涙ウルウル度 : ★★
衝撃バカミス度 : ★★ 気軽に読める度 : ★★★★
* <個人的評価&項目別評価>の説明はこちら!
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> No.0396 「月と蟹」
> No.0340 「月の恋人~Moon Lovers~」
> No.0312 「蝦蟇倉市事件 1」
> No.0311 「光媒の花」
> No.0294 「球体の蛇」
> No.0233 「花と流れ星」
> No.0186 「龍神の雨」
> No.0169 「鬼の跫音」
> No.0121 「ラットマン」
> No.0117 「カラスの親指」
> No.0097 「ソロモンの犬」
> No.0058 「片眼の猿」
> No.0049 「シャドウ」
> No.0041 「向日葵の咲かない夏」
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