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2013年1月11日 (金)

『冷血』 髙村薫 > 「このミス」完全読破 No.613

「このミステリーがすごい!」完全読破 No.613

 『冷血』 髙村薫

   「このミス」2014年版 : 15位

   受賞(候補) :

   総合ランキング :

   年度ランキング : 「週刊文春ミステリーベスト10」 6位

   読始:2012.12.17~ 読終:2012.12.28

   読んだ時期 : 「このミス」ランキング発表"前"

   読んだ版 : 単行本(上・下) <2012年11月>

冷血(上)冷血(上)
高村 薫

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 No.8「マークスの山」、「照柿」、「レディ・ジョーカー」、No.238「太陽を曳く馬」に続く、“合田雄一郎シリーズ”の5作目です。

 シリーズとはいえ、扱われる事件自体は別物なので、本作からはもちろん、(「太陽を曳く馬」以外なら)どの作品から読んでもそれほど問題はないかと思われます。

 ただ、シリーズとして捉えた場合、悩める合田刑事の心情・思考・立場の変化などに焦点が当てられているともいえるので、やはり1作目から順に読むのが一番良いのではないですかね。

 とはいえ、「太陽を曳く馬」は“福澤彰之シリーズ”の3作目でもあるので、どちらのシリーズも重量感ある作品揃いということを考えれば、順を追って読むと本作まで辿り着くのにかなり時間がかかってしまいそうではありますが。

 そして本作は、トルーマン・カポーティのノンフィクション小説『冷血』の現代版ともいうべき内容でして、その繋がりの大きさは本作連載時のタイトルが『新・冷血』だったことからも窺えるほどなので、両書を比較しながら読んでみるのも面白いかもしれません。

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 本作は、2002年のクリスマスに起きた一家4人殺人事件に関する物語です。

 髙村薫といえば、ミステリ要素も込められたサスペンス作品を数多く発表し、「このミス」のランキングでも毎年のように上位に入っていたのですが、2002年の「晴子情歌」以降(=“福澤彰之シリーズ”の3作品)は、人間の心理面を中心とした難解でエンタメ要素の限りなく薄い作風に変わっています。

 ところが、事件直前までの加害者二人組の行動と被害者一家の生活がそれぞれ描かれる本作の第一章では、かつての高村作品を彷彿とさせるようなサスペンス劇が繰り広げられるのですね。

 しかし続く第二章では、合田刑事を中心とした事件捜査が描かれていくのですが、意外性のある展開や犯人との駆け引き、逃亡劇&追跡劇などの、捜査ミステリやサスペンス的な要素はほとんどなく、まるでドキュメンタリー作品を読んでいるかのように感じるほどの地道で真に迫った捜査が行われていきます。

 さらに下巻の全てを占める第三章では、犯人二人組の取り調べや裁判のシーンが描かれていくものの、これまたエンタメ的な盛り上がりや衝撃的な展開などはほとんどなく、ただひたすらに殺人者や合田刑事たちの“心”が綴られていくのです。

 そんなノンフィクションに近い描き方だからこそ、この真実が明らかになっていくにつれて異様さが不気味に浮かび上がってくる殺人事件&殺人犯がリアルなほどに感じられますし、事件や殺人犯を通して見えてくる虚しさや“人間とは何なのか”といった命題が、圧倒的な存在感でもって迫ってきていたように思います。

 というわけで、“福澤彰之シリーズ”と比べれば格段に読みやすい内容ではあるものの、捜査ミステリや事件サスペンスなどのエンタメ要素を期待してしまうと拍子抜けしてしまうと思うのですが、そんなエンタメ要素を極力排して描いた殺人事件物語だからこそ見えてくる人間ドラマはやはり圧巻なので、以前の髙村作品とはまた違った魅力、そして以前と変わらぬ読み応えを味わうことが出来るのではないでしょうか。


> 個人的評価 : ★★★★★ ☆☆☆☆☆

 本格ミステリ度  : ★★       鬼畜グログロ度 : ★★★★
 ビックリ驚愕度  : ★★       おどろおどろ度 : ★★★
 熱アクション度  : ★★       主キャラ魅力度 : ★★★★
 恋愛ラブラブ度 : ★         人間味ドラマ度 : ★★★★
 下ネタエッチ度 : ★        感涙ウルウル度 : ★★★
 衝撃バカミス度 : ★        気軽に読める度 : ★★

  * <個人的評価&項目別評価>の説明はこちら!


  【 “髙村薫” 関連記事 】

  > No.613 「冷血」
  > No.238 「太陽を曳く馬」
  > No.008 「マークスの山」


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