『エウスカディ(殉狂者)』 馳星周 > 「このミス」完全読破 No.607
「このミステリーがすごい!」完全読破 No.607
『エウスカディ』 馳星周
* 文庫化の際に『殉狂者』に改題
「このミス」2011年版 : 17位
受賞(候補) :
総合ランキング :
年度ランキング :
読始:2012.11.23~ 読終:2012.11.30
読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"後"
読んだ版 :単行本(上・下) <2010年9月>
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馳星周は、これまでは日本やアジアを舞台とした暗黒ノワール小説を書いていて、欧米が舞台の作品でも登場するのはアジア人が中心でした。
ところが本作は、スペインが舞台で、登場するのもほぼスペイン人ということで、これまでの作品とは大きく作風が変わっているのです。
とはいえ、作品を貫くテーマ的な部分や破滅的なストーリーなど、これぞ馳作品といった要素は変わりないので、過去作に共通する魅力がありつつも舞台の変化による新鮮味が感じられましたね。
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時は1971年、日本赤軍メンバーであるワルテルこと吉岡良輝は、組織同士の協力関係を築く目的で、スペイン・バスク地方の民族組織・ETAに合流。
それから間もなく大仕事をやってのけたことから、ETAから信頼と尊敬の念を得たワルテルは、メンバーと共にテロ活動を行う一方で、ETA幹部から組織内にいる裏切り者を見つけ出す使命を極秘に頼まれて.....。
バスク地方というのは、スペインとフランスの国境をまたぐ形で広がる地域で、バスク人・バスク語というこの地方独自の人種・文化を守り続けていることもあり、現在も独立運動が活発に行われています。
そんなバスクで最も激しく独立運動が頻発していた時代のテロ組織に参加することになった日本人テロリストの物語なのですが、緊迫感と熱量とがハンパなくたぎっているアクションサスペンスが繰り広げられるのはもちろん、同じテロリストでもその行動理念・目的の違う主人公が紛れ込むことにより生じる人間ドラマも読み応えがありました。
そしてこれと並行して、2005年のスペインを舞台としたワルテルの息子・アイトール吉岡の物語も描かれていきまして、幼少時に死別した父親がテロリストだったことを知り、その真相を知るために動き出したところ、襲撃を受けたり母親が失踪するなど不穏な事件が勃発。
その黒幕がかつて父親が探し出そうとしていた組織の裏切り者であることに勘付くのですが、これにより過去(1971年)と現在(2005年)の両時代における(同一人物の)裏切り者探しが並行して語られていくので、この犯人探しというミステリ的な要素によって読んでいてグイグイ惹き付けられるほどの魅力が生み出されていましたね。
まあ、ストーリーが進むにつれて容疑者がどんどんと絞られていくので、黒幕の意外性や衝撃的な真相などを期待してしまうと物足りないとは思いますが、この演出によりサスペンス度も格段にアップしていますし、そこに馳作品特有の破滅的展開・暴力場面・激しい恋愛描写などが組み込まれ、さらにバスク独特の空気感とテロ小説というテーマ性で彩られているので、馳作品に馴染みのない人にもおすすめのバイオレンスアクション大作です。
> 個人的評価 : ★★★★★ ★★☆☆☆
本格ミステリ度 : ★★★ 鬼畜グログロ度 : ★★★
ビックリ驚愕度 : ★★ おどろおどろ度 : ★★★
熱アクション度 : ★★★★★ 主キャラ魅力度 : ★★★★
恋愛ラブラブ度 : ★★★★ 人間味ドラマ度 : ★★★
下ネタエッチ度 : ★★★★ 感涙ウルウル度 : ★★
衝撃バカミス度 : ★★ 気軽に読める度 : ★★
* <個人的評価&項目別評価>の説明はこちら!
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