『夏服パースペクティヴ』 長沢樹 > 「このミス」完全読破 No.600
「このミステリーがすごい!」完全読破 No.600
『夏服パースペクティヴ』 長沢樹
「このミス」2013年版 : 22位
受賞(候補) : (「本格ミステリ大賞」候補)
総合ランキング :
年度ランキング : 「本格ミステリ・ベスト10」 15位
読始:2012.11.2~ 読終:2012.11.3
読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"前"
読んだ版 :単行本 <2012年10月>
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長沢樹は、横溝正史ミステリ大賞を受賞したNo.510「消失グラデーション」で昨年(2011年)にデビュー。
するとそのデビュー作は「このミス」「本ミス」両方で6位にランクインするなど、新人としては破格の評価を受けたのですね。
そして本作は、デビュー2作目にして、デビュー作から続く“樋口真由"消失"シリーズ”の2作目となります。
なお、時間軸としては前作よりも過去になるため、本作から読んでも問題ないでしょう。
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映研部長である都筑台高校2年の遊佐渉は、動画サイトで見つけた才能溢れる作品群のアップ主が自分の通う高校の生徒だと推測し、それが1年生の樋口真由だと付きとめ、つれない態度を取られながらもなんとか部への勧誘に成功。
一方で、渉の幼なじみである御津矢秋帆が所属する葦原女学院の映研では、ネット動画で話題となっている女子高生アマチュア音楽ユニット“HAL”のビデオクリップをプロの映像作家・真壁梓と共に制作する企画が持ち上がり、渉は自分自身はもちろん、樋口にもこの企画に参加させたくて、スタッフオーディションを受けるよう促すが.....。
というわけで、本作では映研部による“映像制作”がテーマとなるのですが、作者は元々映像制作の仕事をしていることもあってか、撮影準備段階でのやり取りや撮影機材の扱われ方などとてもリアルに感じられますし、なによりドキュメンタリー問題作を作り続ける若手女性監督の突飛なキャラクターが、かなり強烈で個性的なのにも関わらず実在してもおかしくないようなリアル感がありました。
そして、このビデオクリップ撮影では、高校生による映像制作とは別に、その制作風景を真壁監督がドキュメンタリーとして撮影・制作するという企画も同時進行で行われまして、ドキュメンタリーといいつつ場を盛り上げるために参加者の一部にしか知らせていないドッキリ的演出が仕掛けられているので、これにより現実(リアル)と虚構(フィクション)が混在し、登場人物たちも読んでいる自分も疑心暗鬼に陥りながら物語が進んでいくのです。
それが後半に入ると、陸の孤島と化した屋敷(廃校)で連続して事件が起きるという本格ミステリの定番的展開となり、数年前に起きた猟奇事件と関連しながらより謎が深まり緊迫していく状況の中で、前作同様に樋口真由が素人探偵となって真相を導き出すのですね。
ミステリ的には、さすがに前作のようなガツンとくる衝撃はないものの、前半ではリアルとフィクションが創り出す心理戦、後半ではクローズド・サークル的本格ミステリと、前作の学園青春ミステリとはまた違った面白さを味わえますし、舞台や小道具だけでなくトリックにも映像・視覚的効果が使われているので、本作&作者ならではの魅力を楽しむことが出来ると思います。
ただ個人的には、前半の映像制作本番に向けた準備段階での展開や撮影中の心理戦がのめり込むほどに面白くてドキドキワクワクしながら読んでいたのに対し、後半のクローズド・サークルになったらもちろん面白かったもののそれ以上に熱いものは湧き上がって来なかったので、前半の撮影風景&心理戦のままで最後まで引っ張っていれば大傑作になったのではないかな~とも思ってしまいました。
> 個人的評価 : ★★★★☆ ☆☆☆☆☆
本格ミステリ度 : ★★★★ 鬼畜グログロ度 : ★★★★
ビックリ驚愕度 : ★★★ おどろおどろ度 : ★★★
熱アクション度 : ★★★ 主キャラ魅力度 : ★★★★
恋愛ラブラブ度 : ★★ 人間味ドラマ度 : ★★
下ネタエッチ度 : ★★★ 感涙ウルウル度 : ★★
衝撃バカミス度 : ★★★ 気軽に読める度 : ★★★
* <個人的評価&項目別評価>の説明はこちら!
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