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「このミステリーがすごい!」完全読破 No.596
『うそつき』 戸松淳矩
「このミス」2013年版 : 投票数0
受賞(候補) :
総合ランキング :
年度ランキング :
読始:2012.10.29~ 読終:2012.10.29
読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"前"
読んだ版 :単行本 <2012年9月>
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戸松淳矩は、1979年にジュブナイル作品でデビューし、翌年にはシリーズ続編を発表したものの、デビュー3作目が発表されたのは2作目から24年も後のことでした。
そのデビュー3作目にして初のジュブナイル以外の作品となった「剣と薔薇の夏」は、日本推理作家協会賞を受賞するなど大変高い評価を得たのですが、次の新作である本作が発売されるまでにはまたもや8年という長いブランクが出来たのですね(その間にジュブナイルシリーズの未単行本作品を改題・改稿して刊行しています)。
これだけ期間が空いた理由というのは本書に掲載の「あとがき」に書いてありまして、制作過程で3回の入院と2回のパソコンクラッシュがあり、不手際から1200枚超の原稿が消えてしまうなどのトラブルがあったのだとか。
ただ、それだけの苦労の末に完成したのが本作、というわけではありませんでして、本作は苦労を重ねた作品とは別に、昨年(2011年)8月からの10ヶ月ほどの短期間に書き上げた作品なのだそうです。
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鎌倉に住む石館朋也は、大学を6年かかって卒業した後に司法試験のため法科大学院に入ると言いながら、勉強もろくにせず3年もぶらぶらと遊び暮らしている男。
現在は叔父が経営する不動産会社に週三日だけ勤務する生活をしているものの、夜遅くに売家の補修作業をした帰り道のトンネルで、人が争う音と殺人死体に遭遇し、落ちていたバッグを盗み去ったことから、事態は思わぬ方向へと進んでいくことに.....。
というわけで、主人公はかなりのダメ人間で、さらには見栄っ張りと自意識過剰からくる極度の虚言癖もありまして、この事件と偶然にも関わることになったのをきっかけとして、自分に都合の良い方向に進むように得意の舌先三寸を使いつつ、事件関係者に肉薄し場を掻きまわしていくのです。
ところがやはり、自分を良く見せるために嘘を嘘で固めているので徐々にボロが出始め、どつぼにはまっていくわけですが、主人公が虚言癖を発症させる心理描写がかなりリアルですし、機転の利いた見事な嘘で自らの状況を好転させ、それがやがて崩れ始めて破滅へと向かっていく過程も、なかなかの読み応えがありました。
そしてその一方で、同人雑誌に参加している小説家志望者の物語も並行して語られまして、この二つの物語が徐々に重なり合っていくことで、驚きの仕掛けが炸裂したりするのですね。
まあ、先の展開が比較的読みやすいですし、驚きの仕掛けもそこまでの衝撃はないため、ミステリ的には派手な演出はなく淡々と読ませるタイプで、ガッツリした読み応えや読後の満足感はそれほどないのではないかと思います。
ただ、嘘が連鎖し物語が動いていく構成や虚言癖男の描写は見事でしたし、観光地としてではなく山間の住宅地としての鎌倉が臨場感溢れるほどに描かれていたので、酔いが回ってくるような独特な世界観が創られていてとても味わい深かったです。
> 個人的評価 : ★★★☆☆ ☆☆☆☆☆
本格ミステリ度 : ★★★ 鬼畜グログロ度 : ★★
ビックリ驚愕度 : ★★★ おどろおどろ度 : ★★★
熱アクション度 : ★★ 主キャラ魅力度 : ★★★
恋愛ラブラブ度 : ★★ 人間味ドラマ度 : ★★★
下ネタエッチ度 : ★★★ 感涙ウルウル度 : ★
衝撃バカミス度 : ★★★ 気軽に読める度 : ★★★
* <個人的評価&項目別評価>の説明はこちら!
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