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2012年10月14日 (日)

『ソロモンの偽証』 宮部みゆき > 「このミス」完全読破 No.589

「このミステリーがすごい!」完全読破 No.589

 『ソロモンの偽証』 宮部みゆき

   「このミス」2013年版 : 2位

   受賞(候補) : (「大学読書人大賞」最終候補)

   総合ランキング : 「SUGOI JAPAN Award 2015」 ノミネート

   年度ランキング : 「週刊文春ミステリーベスト10」 2位
               「dacapo BOOK OF THE YEAR」 2位
               「ダ・ヴィンチ BOOK OF THE YEAR」
                 (文庫ランキング) 2位(第III部)
                 (文庫ランキング) 6位(第I・II部)
                 (小説ランキング) 7位(第I・II部)
                 (小説ランキング) 10位(第III部)
               「本屋大賞」 7位
               「AXNミステリー 闘うベストテン」 10位
               「ミステリが読みたい!」 14位
               「本格ミステリ・ベスト10」 22位

   読始:2012.8.23 ~ 読終:2012.10.12

   読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"前"

   読んだ版 : 単行本(全3巻)
           <2012年8月(第1部)・9月(第2部)・10月(第3部)>

ソロモンの偽証: 第I部 事件 上巻 (新潮文庫)ソロモンの偽証: 第I部 事件 上巻 (新潮文庫)
宮部 みゆき

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 「楽園」以来5年ぶりの現代ミステリーとなる、宮部みゆきの新作長編です(現代を舞台とした作品としてはNo.356「小暮写眞館」以来2年ぶり)。

 さらに本作は、構想15年&連載9年の末に完成された、作家生活25年の集大成となる超大作でもあります。

 それもあってか、(単行本は)3部構成3分冊で3ヶ月連続刊行、しかもそれぞれが700ページを超えるということで、とてつもないボリュームとなっているのですね。

 そして本作は、いじめが原因と思われる校舎からの飛び降り自殺事件が物語のきっかけとなるのですが、ちょうど大津市のいじめ自殺問題が世間を賑わせていた時期に第1部が発売になったということで、長い期間を掛けて書かれた作品だということを考えれば、この完成&発売のタイミングはまさに神憑りと言えるでしょう。

 なお、作中では物語の中心となる“あること”が行われまして、それは作品説明やあらすじにも普通に書かれていますし、帯には大きな文字で強調されてもいます。

 なので、その“あること”を知ったからといってネタバレにはならないのですが、ただその“あること”の話題が作中に出てくるのは第1部の終わり、つまりは物語が700ページ分進んでやっとその話題が出てくるのです。

 そのため、その“あること”を知らない方がその場面で“こんな展開になるとは!”と驚くことが出来るのは確実なので、繰り返し言いますがそれを知ったからといって別にネタバレになるわけではありませんが、今現在この記事を読んでいて“あること”が何なのかわからないのであれば、この記事のこれより下や他のサイト・書評、さらには単行本の説明や帯などを目にせずに、とりあえず第1部を読んでしまうことをお薦めします。

 あとついでですが、(単行本での)第2部&第3部の折り返し部分の人物相関図を本文より先に見てしまうと、第2部序盤で起きる状況変化のネタバレとなってしまうので、少なくとも第2部の中盤辺りまではこの人物相関図を目にしない方が良いと思います(第1部の人物相関図は問題ないです)。

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 というわけで、ここからはその“あること”を明かしたうえで簡単に説明していきますと、まず「第Ⅰ(1)部 事件」では、ある生徒の校舎からの転落死をきっかけとして巻き起こる、そのクラスメイトや先生など学校関係者を中心とした騒動が描かれていきます。

 ここでは、この事件に直接的・間接的に関係していく多くの人物の目線で群像劇のように語られていくのですが、目まぐるしく状況が変化していくストーリー展開はもちろん、登場人物たちそれぞれの物語にも、一つ一つを切り抜いてしまえば短編作品として面白く出来上るのではないかと思わされるくらいの読み応えがあるのです。

 「第Ⅱ(2)部 決意」では、校内裁判が行われることが決まってから、校内裁判の開催前日までの出来事が描かれていきます。

 ここでは、検事側と弁護側を中心に語られていきまして、事件と校内裁判とを繋ぐパートとなり、700ページというボリュームもあって中だるみしてしまいそうなところを、第1部の多重目線による群像劇が上手く活かされ、さらに第3部への期待と興味を強く掻き立てる役割を見事に果たしたうえで、事件の調査と裁判への準備というこの巻ならではの面白さも充分にありました。

 そして最後の「第Ⅲ(3)部 法廷」では、いよいよ校内裁判の様子が描かれていくのですが、前二巻で繰り広げられてきた人間ドラマがむき出しでぶつけられ、それによりさらなる人間ドラマが生み出されるほどの、圧巻で圧倒される法廷ドラマを期待通りに堪能できるはずです。

 まあ、宮部作品の定番なのですが、登場する少年少女たちの多くが大人顔負けの頭脳明晰さと行動力・表現力を持ち合わせていて、しかもほぼ中学生のみで裁判を実施するという設定なので、そこでリアリティを感じられずに話に入っていき辛いという人もいると思うのですが、そんな設定だからこそ生まれ得た作品なので、そこはあえて気にしないようにして読んだ方が良いでしょう。

 ミステリ的には、特に裁判においてなど、帯の説明文の影響もあって大きなポイントとなる場面についてある程度の推測が前もって出来てしまいますし(なのでなるべく事前に帯等を目にしない方が.....)、常識を超えるほどの驚きやどんでん返しなどはないので、ミステリ的な読み方をするよりも、この校内裁判を巡るドラマ的な部分を楽しむつもりで読むべきかもしれません。

 そんなわけで、発売前から話題性の高い作品でしたが、それ故にハードルが必要以上に上がってしまう期待を易々と超えるほどの面白さでしたし、三巻合計で2100ページを超えるボリュームでありながらそれを感じさせずに読み終えてしまうくらいの惹き付けられる魅力が作品全体から放たれているので、間違いなく2012年を代表する傑作となるでしょうね。


  > 個人的評価 : ★★★★★ ★★★☆☆


   本格ミステリ度  : ★★★       鬼畜グログロ度 : ★★
   ビックリ驚愕度  : ★★★       おどろおどろ度 : ★★
   熱アクション度  : ★★        主キャラ魅力度 : ★★★★★
   恋愛ラブラブ度 : ★★         人間味ドラマ度 : ★★★★★
   下ネタエッチ度 : ★          感涙ウルウル度 : ★★★
   衝撃バカミス度 : ★★        気軽に読める度 : ★

  * <個人的評価&項目別評価>の説明はこちら!


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