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「このミステリーがすごい!」完全読破 No.581
『猫間地獄のわらべ歌』 幡大介
「このミス」2013年版 : 13位
受賞(候補) :
総合ランキング : 「時代小説 マストリード100」 選出
年度ランキング : 「本格ミステリ・ベスト10」 14位
読始:2012.9.13 ~ 読終:2012.9.14
読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"前"
読んだ版 : 文庫本 <2012年7月>
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幡大介は、デビュー以来時代小説のみを書いている作家です。
出した作品の多くがシリーズ化されていて、しかも“天下御免の信十郎シリーズ”は2008年6月からの約3年半で8作、“独活の丙内密命録シリーズ”は2009年4月からの約1年半で5作、“大富豪同心シリーズ”は2010年1月からの約2年半で10作などなど(いずれも2012年9月現在)、とにかく精力的に作品を発表しているのですね。
そして本作は、そんな幡大介が初めて挑む本格ミステリ作品なのです。
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猫間藩の江戸中屋敷で御使番を務めている藤島内侍之介が、藩主側室の和泉ノ方に呼ばれたため下屋敷に向かうと、御広敷番組頭が密室と化した書物蔵で切腹していて大騒ぎ状態。
そこで和泉ノ方から命ぜられたのは、組頭が死んだのは自殺ではなく他殺だと見せかけるため、密室を破るトリックを考えろ、というもので.....。
というわけでやはり舞台設定はお得意の時代物なのですが、いきなり密室事件が登場しますし、その後も見立て殺人あり、首無し死体あり、館での殺人事件ありと、本格ミステリ的な事件が次々に発生していきます。
しかし、冒頭の密室事件は通常とは違って“密室殺人をでっち上げる”というものだし、その後に起こる事件もやはりどこか変。
それに、物語中に突然に登場人物たちが、現代的なミステリ談義を始めたり、時代小説とミステリとの関連性を語り出すなど、いわゆるメタ・フィクション的な会話を繰り広げるので、これはもう完全にバカミス作品なのです。
例えるなら、探偵的本格ミステリをパロディ化したNo.06「名探偵の掟」東野圭吾の時代小説版、といったタイプでして、サッと読むとバカバカしく感じるものの、そんなトリックにしても会話にしても、定番的な本格ミステリのガジェットや展開に対して愛のあるイジリやツッコミとなっていますし、それが時代物の舞台だからこそのパロディとして見事に成功しているのですね。
なので、本格ミステリ作品を多く読んでいる人ほど楽しむことが出来ると思うのですが、ただ本作は明らかなバカミス作品でもあるので、普通の本格ミステリや普通の時代小説の面白さを期待してしまうと、楽しめないどころか怒りだしてしまう人がいるかもしれません。
とはいえ、楽しい遊び心が作品全体から溢れ出ていますし、こういったタイプの作品だと認識したうえで読み始めれば本作の面白さを気楽に味わえると思うので、バカミス好きの人には大いにお薦めなのはもちろん、そうでない人にも恐る恐るではありますがお薦めしたいです。
ちなみに自分は、通常とは違った意味合いの『読者への挑戦状』を目にした時点で、この作品を読んで本当に良かった!と心から強く思いましたねェ。
> 個人的評価 : ★★★★★ ★★☆☆☆
本格ミステリ度 : ★★★★ 鬼畜グログロ度 : ★★
ビックリ驚愕度 : ★★★★ おどろおどろ度 : ★★
熱アクション度 : ★★ 主キャラ魅力 度 : ★★★
恋愛ラブラブ度 : ★★ 人間味ドラマ度 : ★★
下ネタエッチ度 : ★★ 感涙ウルウル度 : ★★
衝撃バカミス度 : ★★★★★ 気軽に読める度 : ★★★★
* <個人的評価&項目別評価>の説明はこちら!
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