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「このミステリーがすごい!」完全読破 No.547
『双頭のバビロン』 皆川博子
「このミス」2013年版 : 12位
受賞(候補) :
総合ランキング : 「SUGOI JAPAN Award 2015」 ノミネート
年度ランキング : 「週刊文春ミステリーベスト10」 12位
読始:2012.6.8 ~ 読終:2012.6.17
読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"前"
読んだ版 : 単行本 <2012年4月>
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昨年発売されたNo.480「開かせていただき光栄です」が「このミス」「本ミス」「文春」で全て3位にランクインした皆川博子の、2012年新作です。
その「開かせて~」はさらに本格ミステリ大賞を受賞するほどで、かなりの高評価を受けたわけですが、年齢のことを言うのは失礼かもしれませんが、80歳を超えてなおこれだけの傑作を生み出してしまったことにも驚きでした。
しかしそんな驚きも序の口でして、そのわずか翌年に、さらに物語のスケール感もボリュームもアップした本作を発表するのですから、もはや驚くことすら失礼なのかもしれませんね。
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というわけで本作ですが、19世紀末のオーストリアに生まれた双子の物語となっています。
生まれて間もなく引き離されたこの双子は、一方は名家の跡取りとして、一方は抹消された存在として、それぞれ数奇な人生を歩んでいくことになるのですが、そんな物語が、欧州戦乱に向かっていく世紀末のオーストリア、サイレント映画からトーキーへの変革直前のハリウッド、そして中華社会と欧米社会が混在する大都市・上海を舞台に繰り広げられていくのです。
この双子の出生の秘密自体がゴスチックな妖艶さがあるのですが、それ以後の物語も、重厚な翻訳小説のような読み応えがありつつ、色気の漂う艶麗で退廃的で狂騒的な幻想雰囲気に溢れた、これぞ皆川作品といった世界観で包まれているのですね。
そういった妖美で幻想的な世界観や少年同性愛的な雰囲気(あくまで“雰囲気”です)など、「開かせて~」以上に濃厚となっているため、作品のボリューム(ページ数)もあって、やはり人を選ぶ作品だと思います(特に男性読者は好き嫌いが激しく分かれるかも)。
しかし、この圧倒的な作品世界と運命的なストーリー展開は圧巻ですし、ミステリ要素は「開かせて~」と比べれば薄めですが、別方向に向かっていた物語が次第に濃密に絡み合っていく仕掛けが物語にさらなる厚みをもたらしているので、こういった世界観が好きな人ならばこの物語にどっぷりと浸かってしまうくらいに堪能できるのではないでしょうか。
> 個人的評価 : ★★★★★ ★☆☆☆☆
本格ミステリ度 : ★★★ 鬼畜グログロ度 : ★★★
ビックリ驚愕度 : ★★★ おどろおどろ度 : ★★★★
熱アクション度 : ★★ 主キャラ魅力 度 : ★★★★
恋愛ラブラブ度 : ★★ 人間味ドラマ度 : ★★★★
下ネタエッチ度 : ★★ 感涙ウルウル度 : ★★★
衝撃バカミス度 : ★★ 気軽に読める度 : ★★
* <個人的評価&項目別評価>の説明はこちら!
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> No.547 「双頭のバビロン」
> No.480 「開かせていただき光栄です」
> No.137 「倒立する塔の殺人」
> No.007 「死の泉」
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