『神宿る手』 宇神幸男 > 「このミス」完全読破 No.506
「このミステリーがすごい!」完全読破 No.506
『神宿る手』 宇神幸男
「このミス」1991年版 : 19位
受賞(候補) :
総合ランキング :
年度ランキング :
読始:2011.11.19 ~ 読終:2011.11.27
読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"後"
読んだ版 : 文庫本 <1993年4月>
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宇神幸男の作家デビュー作です。
そして、「消えたオーケストラ」「ニーンベルクの城」「美神の黄昏」へと続いていく、“音楽ミステリー四部作”の1作目でもあります。
宇神幸男は、作家活動と並行してクラシック音楽の評論家としての活動も行っていまして、その二つの活動を存分に活かした作品が、クラシック音楽ミステリの本作であり、この四部作ということなのですね。
ちなみに、本作では幻のピアニストの復活劇が描かれていくわけですが、実際に宇神幸男も本作刊行前に、ピアニストであるエリック・ハイドシェックの再デビューコンサートを企画し実現させ、日本にハイドシェイクブームを巻き起こすきっかけを作るなど、作中と同じような復活劇を現実世界でも演出していたそうです。
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幻のピアニスト・バローの40年ぶりに新録音されたCDが発売され、またたく間に大ベストセラーに。
しかし、仕掛け人である謎の美女や、姿を現さないバロー本人、そしてCD発売の前後に周囲で数々のスキャンダルが起こるなど、この騒動には謎の部分が多いため、主人公である音楽雑誌編集部員がこの騒ぎに巻き込まれつつも真相を探っていきます。
というわけで音楽ミステリーなのですが、音楽小説的に見ると、音楽雑誌の編集部を中心にしていることもあり、音楽業界で働く人間達の奮闘ぶりや、幻の巨匠が復活までの(同じ業界内の立場から見た)軌跡、世間にまで広がるブーム的な盛り上がりなど、演奏シーンや演奏者・指揮者の物語というよりは、音楽業界の裏側からこの物語を追っていく部分により魅力がありましたね。
ただ、20年以上前のバブル期における作品なので、現在とは音楽業界を取り巻く状況は全くといっていいほど違っているので、この巨匠のCDを巡っての盛り上がりには今読むとさすがに違和感あると思うので、そこはもう“そういう時代だったんだ”と納得して読むのがよいでしょう。
そしてミステリ的には、とにかくこの巨匠自身にしても、仕掛け人である美女にしても、CD発売までの経緯やそのCDの中身、そして周囲で起きる騒動などなど、疑惑に包まれた謎が次から次へとやってくるので、それが音楽業界的物語や主人公の物語、そしてエンタメ的な盛り上がりと絡むことで、この作品独特の音色を作中に響かせていたように感じました。
> 個人的評価 : ★★★★☆ ☆☆☆☆☆
本格ミステリ度 : ★★★ 鬼畜グログロ度 : ★★
ビックリ驚愕度 : ★★★ おどろおどろ度 : ★★
熱アクション度 : ★★★ 主キャラ魅力度 : ★★★
恋愛ラブラブ度 : ★★★★ 人間味ドラマ度 : ★★★
下ネタエッチ度 : ★★ 感涙ウルウル度 : ★★★
衝撃バカミス度 : ★★★ 気軽に読める度 : ★★★
* <個人的評価&項目別評価>の説明はこちら!
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