『函館水上警察』 高城高 > 「このミス」完全読破 No.499
「このミステリーがすごい!」完全読破 No.499
『函館水上警察』 高城高
「このミス」2010年版 : 12位
受賞(候補) :
総合ランキング :
年度ランキング :
読始:2011.11.4 ~ 読終:2011.11.6
読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"後"
読んだ版 : 単行本 <2009年7月>
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高城高は、1950・60年代に活躍した作家で、“日本で最初のハードボイルド作家”とも称されています。
学生時代にデビューし、北海道新聞で記者の仕事に就いてからは二足の草鞋で作家活動を続けて来ましたが、それも困難になってか、70年代以降は全く作品を発表しなくなってしまったため、“幻のハードボイルド作家”とも呼ばれていました。
そんな状態が何十年も続いた後の2006年、待望の作品集「X橋付近」が仙台の地方出版社である荒蝦夷から出版されると、地方出版というハンデなどものともせずに「このミス」でもベスト10にランクインするなど、高い評価を受けたのです。
特殊な発売形態ということもあり「X橋付近」は現在絶版となっていますが、2008年には「X橋付近」収録作品を中心とした全集(全4巻)が創元推理文庫から発売されたことで、何年にも渡って読むことが困難だった“幻のハードボイルド作家”の名作たちを、気軽に読むことが出来る状況になったのですね。
そしてその全集刊行と並行する形で、37年ぶりとなる新作をついに発表することになったのですが、その新作こそが本作なのです。
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というわけで本作は、「密猟船アークテック号」「水兵の純情」「巴港兎会始末」「スクーネル船上の決闘」という4つの短編から成る連作集です。
舞台となるのは明治24年の函館で、外国船が多数来航する国際貿易港に拠点を置く警察署を中心に、国際色豊かな事件が描かれていきます。
それぞれの話において、謎めいた殺人事件が起きたりもするので、ミステリ的な演出がなされているのですが、ただ本格ミステリ作品として読んでしまうと、少々手応えがない感じがしてしまうかもしれません。
本作はそういったミステリ部分よりも、この当時の函館の情景が目の前に広がって見えるかのような巧みな描写や、まだ不平等条約が改正される前という時代における日本と外国(日本警察と外国人犯罪者)との関係など、そういった時代性を感じられる部分こそに読み応えがあるのです。
それに、北海道最初の新聞である函館新聞で報じられた当時の事件やエピソードが随所に散りばめられているなど、歴史的な情報も面白く作中を彩っているので、まさに歴史警察小説としての魅力が溢れかえっている作品なのですね。
そして巻末には、森林太郎(森鴎外)がこの時期の函館に来ていたというわずかな情報から物語を膨らませて作られた「坂の上の対話―又は『後北游日乗』補遺」が収録されているのですが、本編「函館水上警察」と共通する部分も多くあるので、この作品も含めた連作集として楽しむことが出来るのではないでしょうか。
> 個人的評価 : ★★★★☆ ☆☆☆☆☆
本格ミステリ度 : ★★★ 鬼畜グログロ度 : ★★
ビックリ驚愕度 : ★★ おどろおどろ度 : ★★
熱アクション度 : ★★★★ 主キャラ魅力度 : ★★★★
恋愛ラブラブ度 : ★★ 人間味ドラマ度 : ★★★
下ネタエッチ度 : ★★ 感涙ウルウル度 : ★★
衝撃バカミス度 : ★★★ 気軽に読める度 : ★★
* <個人的評価&項目別評価>の説明はこちら!
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