『狩場最悪の航海記』 山口雅也 > 「このミス」完全読破 No.489
「このミステリーがすごい!」完全読破 No.489
『狩場最悪の航海記』 山口雅也
「このミス」2012年版 : 21位
受賞(候補) :
総合ランキング :
年度ランキング :
読始:2011.10.4 ~ 読終:2011.10.7
読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"前"
読んだ版 : 単行本 <2011年9月>
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普通のミステリ好きとミステリマニアとで、評価や知名度などが最もかけ離れている作家といえば、この山口雅也なのではないでしょうか(まあこれは、ミステリ界に関してほとんど知らない自分が勝手に思ったことなので、勘違いな可能性もありそうですが)。
日本推理作家協会賞受賞というミステリ作家としての実績があるのはもちろん、特に「このミス」における実績が凄くて、デビュー作No.51「生ける屍の死」は、“過去10年のベスト20(「このミス1998年版」で実施)”で1位、“20年のベストオブベスト(2008年に発表)”で2位と、長きに渡って評価されています。
さらに、“キッド・ピストルズ シリーズ”は90年代に発売された4作品全てがランクインしていますし、No.28「ミステリーズ」は「1995年版」で堂々の1位に輝いています。
そんな凄すぎる実績を踏まえてみると、世間一般的な評価・知名度はおろか、普通のミステリ好きにさえも、それほど評価されていないどころか、その存在すらあまり知られていないように感じるのですよね。
その原因としましては、発表する作品がいずれも奇抜で実験的な設定で、しかもバカミス作家の枠に入れられてしまうくらいに常識外れな内容なので、完全にマニア向けな作風だからなのではないでしょうか。
というわけで本作ですが、18世紀に書かれた「ガリヴァー旅行記」の幻の続編という、やはり奇抜で常識外れな作品となっているのです。
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“「ガリヴァー旅行記(以下「旅行記)」の幻の続編”というのをもうちょっとだけ詳しく説明しますと、これは「旅行記」の作者であるガリヴァー(ジョナサン・スウィフト)自身によって書かれたもので、なぜか未発表となっていたものが、2001年にとある地下室から偶然発見されたのです。
その内容は、「旅行記」のその後、というわけではなくて、作者の判断から「旅行記」には書かなかった部分(具体的には、日本を訪れた際の未発表エピソードと、その後に行った最悪の航海)をまとめたもの。
もちろんこんな続編など現実には発見されてなどいないのですが、それがあたかも現実であるかように見せかけようとする仕掛けや遊び心が、なんとも山口作品らしくて、本編が始まる前からなんだかわからないワクワクさを感じてしまいました。
そんな虚構と現実とが混じり合った世界は本編でも繰り広げられまして、徳川綱吉の時代の日本を足掛かりとして、想像を絶するような奇想ファンタジーアドベンチャーともいうべき大冒険が語られていくのです。
ミステリ要素としては、一応二つの殺人事件が起きて、探偵のようなことをある人物が行うのですが、どちらの場面も結構あっさりと終わってしまうので、ミステリ要素のほとんどないとんでも冒険譚、といった感じでしょうか。
なので本作は、ミステリ的な面白さを期待してしまうとガッカリしてしまいそうですが、先に進むにつれてぶっ飛んで行く世界観や、読み応えのありすぎる数多くの注釈など、この作品・この設定だからこその面白さが満載だと思うので、やはりマニア向けではあると思いますが、ちょっと(かなり)変わった冒険アドベンチャー小説を楽しみたい時などは、本作をお薦めしたいですね。
ちなみに、章の頭にはその章の簡単なあらすじが添えられているのですが、これを先に読んでしまうとこれからの大体の話の流れがわかってしまうし、これを読んでいくことで後に何らかの効果・仕掛けがもたらされるということもないので、これは無視して本文を読んでいった方が良いかもしれません。
> 個人的評価 : ★★★★☆ ☆☆☆☆☆
本格ミステリ度 : ★★ 鬼畜グログロ度 : ★★
ビックリ驚愕度 : ★★★ おどろおどろ度 : ★★
熱アクション度 : ★★★★ 主キャラ魅力度 : ★★★
恋愛ラブラブ度 : ★ 人間味ドラマ度 : ★★
下ネタエッチ度 : ★ 感涙ウルウル度 : ★★
衝撃バカミス度 : ★★★★★ 気軽に読める度 : ★★★
* <個人的評価&項目別評価>の説明はこちら!
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