『人間の尊厳と八〇〇メートル』 深水黎一郎 > 「このミス」完全読破 No.488
「このミステリーがすごい!」完全読破 No.488
『人間の尊厳と八〇〇メートル』 深水黎一郎
「このミス」2012年版 : 37位
受賞(候補) : 「日本推理作家協会賞(短編部門)」
受賞作 『人間の尊厳と八〇〇メートル』 収録
総合ランキング :
年度ランキング : 「週刊文春ミステリーベスト10」 16位
「本格ミステリ・ベスト10」 19位
読始:2011.9.30 ~ 読終:2011.10.4
読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"前"
読んだ版 : 単行本 <2011年9月>
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日本推理作家協会賞短編部門を受賞した表題作「人間の尊厳と八〇〇メートル」を含む、ノンシリーズの短編集です。
ただ、今年(2011年)の深水黎一郎は、この受賞よりも、ミステリ以外のことで名前が知れ渡ることになりました。
というのも、今年の夏には、俳優・高岡蒼甫によるTwitterでの韓流ブーム批判発言をきっかけとして、フジテレビに対して抗議デモが行われるまでに騒ぎが拡大したわけですが、この騒動に関連する意見を深水黎一郎もTwitter上に載せ、それがかなり大々的に取り上げられることになったのです。
ただそれは、別に悪い意味で炎上したというわけではありませんでして、そのツイート内容がフジテレビの偏向報道についてとても的確でわかりやすかったため、フジテレビ批判派に良い意味で受け止められ話題になった、ということなのですね。
ちなみに、ツイート内容(フジテレビの韓流問題に関して テレビの偏向を叩くべき(togetter)参照)を見てもらえばわかりますが、“韓流ブーム”に対して批判的な意見を述べているというよりも、“偏向報道”についての批判的な意見を述べています。
さらにちなみに、本作には1作だけ書き下ろし作品が収録されているのですが、その作品の中に“偏向報道批判”がちょこっとだけ出てくるので、この騒動(Twitter発言)を知っていれば、読んでいて思わずニヤリとしてしまうのではないでしょうか。
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というわけで本作は、受賞作&表題作「人間の尊厳と八〇〇メートル」の他に、「北欧二題」「特別警戒態勢」「完全犯罪あるいは善人の見えない牙」「蜜月旅行 LUNE DE MIEL」という、計5つの短編が収録されています。
まずは受賞作ですが、あるカウンター式のバーを舞台に、登場人物の会話だけという、かなりシンプルな設定の作品です。
そこで交わされる会話というのが、“人間の尊厳”と“八〇〇メートル”という全く接点のないような二つの言葉がいかにして結びつくのか、という興味深いものなのですが、やはりその会話の最後には、驚くべき展開が待ち受けているのです。
このラストも、“あ~そうだったのか”といった軽い感想で済ませてしまいそうなものであるのですが、このラストを踏まえて全体を振り返ってみた途端に、その真相が生み出す衝撃や作品のテーマ性がまたたく間に浮かび上がってきて、体がゾクゾクっとするほどの刺激を受けてしまったのですね。
その他の作品も、カタカナを一切用いずに表意文字(漢字)を使うというNo.251「花窗玻璃 シャガールの黙示」と同じ試みで書かれた「北欧二題」や、完全犯罪を知り尽くした人間がなぜ完全犯罪に失敗したのかを描く「完全犯罪あるいは善人の見えない牙」など、派手さはないけれど奥深くに鋭く綿密な仕掛けが施されているという、深水ミステリの魅力が込められた通好みの作品揃いなので、短編集とはいえ読み応えは充分にあるのではないでしょうか。
> 個人的評価 : ★★★★★ ★★☆☆☆
本格ミステリ度 : ★★★★★ 鬼畜グログロ度 : ★
ビックリ驚愕度 : ★★★★ おどろおどろ度 : ★★
熱アクション度 : ★ 主キャラ魅力度 : ★★★
恋愛ラブラブ度 : ★★★ 人間味ドラマ度 : ★★★
下ネタエッチ度 : ★★ 感涙ウルウル度 : ★★★
衝撃バカミス度 : ★★ 気軽に読める度 : ★★★★
* <個人的評価&項目別評価>の説明はこちら!
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