『ロマンス』 柳広司 > 「このミス」完全読破 No.463
「このミステリーがすごい!」完全読破 No.463
『ロマンス』 柳広司
「このミス」2012年版 : 35位
受賞(候補) :
総合ランキング :
年度ランキング : 「ミステリが読みたい!」 15位
読始:2011.7.7 ~ 読終:2011.7.8
読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"前"
読んだ版 : 単行本 <2011年4月>
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“ジョーカー・ゲーム シリーズ”でお馴染みの柳広司の新作です。
この出だし文でもわかるように、今ではこの“ジョーカー・ゲーム シリーズ”が柳広司の代名詞となっているのですが、ただそれが、このシリーズ後に発売された作品に関しては、多少ならずとも弊害になっている感じなのですよね。
“ジョーカー・ゲーム シリーズ”は、1作目のNo.162「ジョーカー・ゲーム」が2009年版2位、2作目のNo.243「ダブル・ジョーカー」が2010年版2位と、「このミス」では2年連続で2位になるほどに評価されていて、もちろん「このミス」以外でも大変高い評価を受けている人気シリーズです。
そのため、「ジョーカー・ゲーム」で柳広司を知った読者の多くには、“柳広司=ジョーカー・ゲーム”という図式が自然と出来上ってしまって、それ以後に発売された新作にも同じタイプの面白さを、やはりどうしても期待してしまうことになります。
その影響もあって、昨年発売されたNo.339 「キング&クイーン」は、“ジョーカー・ゲーム シリーズ”とは違った魅力を持ち合わせた作品で、「このミス」でもランクインこそ逃したものの次点の22位と評価されたものの、一般的には“ジョーカー・ゲーム シリーズ”と同様の魅力を期待して読んだ人が多かったためか、ネット上では酷評が多く見られることになってしまいました(まあこれは帯の煽り文句に問題があったのも大きいですが)。
そして2011年の新作である本作も、“ジョーカー・ゲーム シリーズ”とは違う魅力を持つ作品なので、“柳広司=ジョーカー・ゲーム”という図式を頭から消去してから読むことをお薦めします(ちなみに本作の帯にも「今年度No.1ミステリーの大本命!」という本作の作風からしたらマイナスになりそうな煽り文句が書かれていますね)。
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舞台となるのは、昭和8年の東京。
子爵家に生まれた主人公は、その家柄の恩恵にあずかることで職に就くこともなく遊んで暮らしていたのですが、ある時、伯爵家の長男である友人から助けを求められることに。
駆け付けてみると、友人に殺人の疑いがかけられていたのですが、半ば強引な推理により友人の疑いを晴らすことに成功したものの、それをきっかけにして主人公は、奥深き事件の渦中へと引き込まれていくのです。
作中世界の舞台背景を簡単に説明してみますと、満州事変が起きた2年後で、これから日中戦争、そして太平洋戦争と、国を挙げての大戦へと今まさに進もうとしているという、そんな情勢の日本における物語です。
そして、子爵・伯爵を含む華族社会がすでに衰退の道を歩み始めている時代でもあるので、そんな退廃的にも感じられる世相&華族社会を背景に語られていく作品の雰囲気が、本作ならではの魅力を生み出していたように感じました。
ミステリ的には、主人公が素人探偵となって事件の真相に迫っていくというよりは、事件や騒動に巻き込まれていくうちに真相が浮かび上がっていく、といった感じで、直球な本格ミステリではないし、ガッツリとした読み応えもありません。
ただ、この作品世界の雰囲気に、次第に狂気をまとっていく主人公、そして作品タイトルが意味を成してくる展開などが絡み合うことで、ミステリ作品としても味わい深いものとなっていますし、その結末も感慨深いものとなっているのですけどね。
というわけで、ミステリとしても作風的にも派手さはなくむしろ地味な印象だし、この作品舞台や雰囲気も好き嫌いが分かれそうではありますが、ただそういった作品が好きなのであれば、そして“ジョーカー・ゲーム シリーズ”の魅力を期待せずに読むことができるのならば、本作を充分に堪能しつつ楽しむことができるのではないでしょうか。
> 個人的評価 : ★★★★★ ☆☆☆☆☆
本格ミステリ度 : ★★★★ 鬼畜グログロ度 : ★★
ビックリ驚愕度 : ★★★ おどろおどろ度 : ★★
熱アクション度 : ★★ 主キャラ魅力度 : ★★★
恋愛ラブラブ度 : ★★★★★ 人間味ドラマ度 : ★★★
下ネタエッチ度 : ★★ 感涙ウルウル度 : ★★★
衝撃バカミス度 : ★★★ 気軽に読める度 : ★★★★
* <個人的評価&項目別評価>の説明はこちら!
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> No.463 「ロマンス」
> No.339 「キング&クイーン」
> No.243 「ダブル・ジョーカー」
> No.172 「虎と月」
> No.162 「ジョーカー・ゲーム」
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