『命に三つの鐘が鳴る Wの悲劇'75(埼玉中央署 新任警部補・二条実房)』 古野まほろ > 「このミス」完全読破 No.478
「このミステリーがすごい!」完全読破 No.478
『命に三つの鐘が鳴る Wの悲劇'75』 古野まほろ
* 文庫化の際に『命に三つの鐘が鳴る 埼玉中央署 新任警部補・二条実房』に改題
「このミス」2012年版 : 31位
受賞(候補) :
総合ランキング :
年度ランキング : 「本格ミステリ・ベスト10」 11位
読始:2011.9.4 ~ 読終:2011.9.5
読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"前"
読んだ版 : 単行本 <2011年5月>
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“天帝シリーズ”を始めとして、これまで出してきた作品はほとんど講談社ノベルスからだった古野まほろですが、他社から出された作品としては、No.436「群衆リドル Yの悲劇'93」に続いて2作目となります。
ちなみに、来月(2011年10月)には、デビュー作「天帝のはしたなき果実」の文庫版に、“天帝シリーズ”の最新作「天帝のあまかける墓姫」が発売されますが、いずれも幻冬舎なので、やはり講談社とは喧嘩別れしたようですね(今さらな話かもしれませんが)。
そして前作が“Yの悲劇”、本作が“Wの悲劇”と、同シリーズのような副題が付いていますが、別に続編というわけではないですし、登場人物が共通しているわけでも、舞台が同じというわけでもありません。
それよりも、“天帝シリーズ”の登場人物の若かりし頃を描いた作品となっているので、“天帝シリーズ”との繋がりの方が強いようです。
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舞台となるのは、左翼革命組織の活動がまだ目立っていた1975年の東京で、学生時代に組織で活動していた過去を持つ新人エリート警察官・二条実房が主人公。
そんな主人公の元に、現在も組織活動を活発に行っている学生時代の親友・我妻雄人がやって来て、直前に殺人を犯したことを自供。
その殺害した相手というのが、我妻の現在の恋人であり、かつて我妻に奪われた主人公の元恋人だったのです。
というわけで約35年前の時代設定での警察小説なのですが、足を使った捜査や犯人相手のアクションシーンがあるわけではなく、“二条 vs 我妻”の取調シーンがほとんどなのですよね。
我妻は素直に罪を認めていることから、事件はすぐにでも収束するかに思われたものの、一見穴のないように感じた二条の供述には不審な点が見つかり、そこからは上司や同僚の協力を得て真相を引き出そうとする二条と、真実を隠したまま罪を受けようとする我妻との、スリル溢れる知略戦が繰り広げられていくのです。
この知略戦というのが論理の応酬となっていまして、かつての親友でありながら遺恨もあるという特殊な関係性もあり、公務と私情とが入り混じった駆け引きや探り合いがとても激しく迫力あるので、取調シーンがほとんどであるにもかかわらず、ダレることなく緊迫感を保ったまま進んでいきます。
そんな展開の末に暴かれる人間ドラマがこれまた凄まじいものがあるので、ミステリ小説としても、そしてもちろん警察小説としても、とてつもなく読み応えのある作品でした。
ちなみに、“まほろ節”とも呼ばれる独特の文体や台詞回し等は、前作よりも控えめになっているので、“革学労・革人戦”などのオリジナル用語は気になるかもしれませんが、前作以上に一般向けになっているのではないでしょうかね。
> 個人的評価 : ★★★★★ ☆☆☆☆☆
本格ミステリ度 : ★★★★ 鬼畜グログロ度 : ★★
ビックリ驚愕度 : ★★★★ おどろおどろ度 : ★★
熱アクション度 : ★★ 主キャラ魅力度 : ★★★
恋愛ラブラブ度 : ★★★★ 人間味ドラマ度 : ★★★★
下ネタエッチ度 : ★★★ 感涙ウルウル度 : ★★★
衝撃バカミス度 : ★★★ 気軽に読める度 : ★★★
* <個人的評価&項目別評価>の説明はこちら!
【 “古野まほろ” 関連記事 】
> No.533 「絶海ジェイル Kの悲劇'94」
> No.478 「命に三つの鐘が鳴る Wの悲劇'75」
> No.436 「群衆リドル Yの悲劇'93」
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