『桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活』 奥泉光 > 「このミス」完全読破 No.477
「このミステリーがすごい!」完全読破 No.477
『桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活』 奥泉光
「このミス」2012年版 : 17位
受賞(候補) :
総合ランキング :
年度ランキング : 「週刊文春ミステリーベスト10」 13位
読始:2011.8.27 ~ 読終:2011.9.3
読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"前"
読んだ版 : 単行本 (2011年5月)
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No.475「モーダルな事象 桑潟幸一助教授のスタイリッシュな生活」に続く、“桑幸シリーズ”の2作目です。
前作のラストがあんなだったので、一体どんな続編になっているんだ?と興味深々でしたが、あのシーンは幻想であったか、はたまた本作から数年後の場面だった、ってことなんでしょうかね。
それでシリーズものといえば、やはり1作目から順番に読んでいくのが最良だと思うのですが、本シリーズに限っていえば、いきなり本作から読んでもそれほど問題ないどころか、むしろ前作を読まずにいきなり本作を手にしてしまった方が良いのかもしれません。
というのも前作は、伝奇・幻想入り乱れた異色作で、しかもダメ人間主人公の思考が多くの文量で語られているし、それでいて単行本で500ページを超えるほどの大作に仕上がっているので、気軽に“前作を読んでおこう”などとは決してできないような作品なのです。
なので、まず2作目である本作を読んでみて、“この主人公の物語をもっと読んでみたいな~”と思った人のみが1作目にも手を出す、といった感じがいいのではないでしょうか。
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というわけで、前作は大長編でしたが、本作は中編3作から成る連作集です。
主人公は、日本近代文学を教える大学教授、桑幸(クワコー)こと桑潟幸一(2005年に発売された前作では助教授でしたが、2007年に助教授職階が廃止されたこともあってか、本作では准教授に)。
廃校の危機に瀕していた大阪の最底辺短大から千葉の大学へと転勤になり喜び勇む桑幸。しかし、やっぱり移った先も負けず劣らずの最底辺大学で、桑幸は新たなる地獄の日々を過ごすことになるのです。
そんな桑幸の身に起きた謎や騒動について語られていく“日常の謎系ミステリ”ですが、もちろん前作と同様、人間的にも大学教師的にもダメさ加減がハンパない桑幸のどうしようもない思考と行動がじっくりネチネチ可笑しく描かれていくので、ミステリ・エンタメ作品というよりも文学作品的な読み応えとなっていますね。
そして今回は、桑幸が押しつけられるように顧問となった文芸部の学生たちが登場しまして、桑幸と絡んだり絡まなかったりしながら、とんでもないバカバカしさを演出しているのです。
この文芸部のメンバーは、桑幸とは違う方向にぶっ飛んだキャラクター揃いなのですが、桑幸とは全く別世界の人間達のようであるのにも関わらず、その輪の中に(どこにも誰にも馴染むことはできないであろうと思われた)あの桑幸がぎこちないながらもハマり込んでいたので、その意外性に驚いたのと同時になんとも微笑ましかったですねェ(特に前作の終盤における桑幸のことを思うと.....)。
それに、前作である意味重要な役割を果たした“春狂亭猫介”の話題が再び登場していたのも、かなりの嬉しさでした。
そんなわけで、ミステリ作品を期待して読んでしまうと拍子抜けしてしまうだろうし、だからといってNo.421「謎解きはディナーのあとで」東川篤哉タイプのキャラ重視ライトミステリを期待してもガッカリしてしまいそうではありますが、このダメ人間・桑幸の思考行動を愛することができるならば、そんなジャンル分けなど全く意味をなさないほどの魅力を味わうことができるのではないでしょうか。
あと、前作のサブタイトルと本作のタイトルがほとんど一緒、というのもなんか桑幸的狂気が感じられてなんか凄いですね。
> 個人的評価 : ★★★★★ ★★★☆☆
本格ミステリ度 : ★★★ 鬼畜グログロ度 : ★
ビックリ驚愕度 : ★★ おどろおどろ度 : ★
熱アクション度 : ★★ 主キャラ魅力度 : ★★★★★
恋愛ラブラブ度 : ★★ 人間味ドラマ度 : ★★
下ネタエッチ度 : ★★ 感涙ウルウル度 : ★
衝撃バカミス度 : ★★★★★ 気軽に読める度 : ★★★
* <個人的評価&項目別評価>の説明はこちら!
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