『モーダルな事象 桑潟幸一助教授のスタイリッシュな生活』 奥泉光 > 「このミス」完全読破 No.475
「このミステリーがすごい!」完全読破 No.475
『モーダルな事象 桑潟幸一助教授のスタイリッシュな生活』 奥泉光
「このミス」2006年版 : 17位
受賞(候補) :
総合ランキング :
年度ランキング : 「週刊文春ミステリーベスト10」 次点(11位)
「本格ミステリ・ベスト10」 16位
読始:2011.8.19 ~ 読終:2011.8.26
読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"後"
読んだ版 : 単行本 (2005年7月)
モーダルな事象―桑潟幸一助教授のスタイリッシュな生活 (文春文庫) 奥泉 光 文藝春秋 2008-08-05 売り上げランキング : 25624 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
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主人公は、大阪の三流女子短大で日本近代文学を教える、桑幸こと桑潟幸一助教授。
無名の童話作家の遺稿が発見されたということで、偶然にもこの作家と関わりのあった桑幸が紹介文を書くことになったのですが、なんとこの遺稿が大反響を呼ぶことになり、桑幸自身も一躍時の人に。
しかし、この遺稿を発見した編集者が不審な死を遂げたことから、桑幸はこの殺人事件に巻き込まれていくことになるのです。
一方で、時の人となる前の桑幸にインタビューを行っていた女性ジャズシンガー(インタビュアーは掛け持ちの仕事)が、この事件の真犯人は桑幸なのではないかと閃き、元夫と共に素人探偵となって事件の真相に迫っていきます。
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この両者の視点で交互に語られていくのですが、ミステリ的には元夫婦探偵のパートが中心になっていて、元夫婦ならではのコミカルなやり取りを交えつつ、謎が謎を呼ぶこの事件&騒動の真相と全貌を明かしていく役割を担っています。
ただ、明らかに本作のメインとなっているのは、ミステリ的展開のド真ん中にいるはずなのに、ただ翻弄されていくだけで真相解明には全く役に立たないどころか邪魔さえしている感じの、桑幸パートの方なのですね。
とにかく人間的にも大学教師的にもダメさ加減がハンパない人物で、そんな桑幸のどうしようもない思考がじっくりネチネチと描かれていくので、桑幸パートに関しては、エンタメ作品というよりも文学作品的な読み応えとなっています。
さらには、読む人を惑わすような伝奇的・幻想的展開へと徐々に入り込んでいきますし、脱力系のコメディ部分や脱線気味の小ネタも頻発するので、とにかく一筋縄ではいかない作風なのですね。
それが単行本で500ページを超えるほどのボリュームで待ち構えているのですから、かなり人を選ぶ作品であることは間違いないでしょう。
ただ、桑幸のダメ人間っぷりとその思考行動を愛することができるならば、そしてこの幻想奇想入り混じった作風を受け入れることができるならば、本作の魅力を大いに満喫することができるに違いありません。
> 個人的評価 : ★★★★★ ★☆☆☆☆
本格ミステリ度 : ★★★★ 鬼畜グログロ度 : ★★
ビックリ驚愕度 : ★★★ おどろおどろ度 : ★★★
熱アクション度 : ★★ 主キャラ魅力度 : ★★★★★
恋愛ラブラブ度 : ★★★ 人間味ドラマ度 : ★★★
下ネタエッチ度 : ★★ 感涙ウルウル度 : ★★
衝撃バカミス度 : ★★★★★ 気軽に読める度 : ★
* <個人的評価&項目別評価>の説明はこちら!
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