『氷の森』 大沢在昌 > 「このミス」完全読破 No.435
「このミステリーがすごい!」完全読破 No.435
『氷の森』 大沢在昌
「このミス」1989年 : 14位
受賞(候補) :
総合ランキング :
年度ランキング :
読始:2011.2.24 ~ 読終:2011.2.26
読んだ時期 : 「このミス」ランキング発表"後"
読んだ版 : 文庫本 <2006年8月>
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大沢在昌といえば、説明するまでもないと思いますが、1990年に発表されたNo.27「新宿鮫」で一躍大ブレイクを果たし、その後もヒットを連発して大物作家の仲間入りとなり、現在に至ります。
しかし、デビューから「新宿鮫」が発売されるまでの10年間は、“永久初版作家”と自称するくらいに売れない時代が続いていました。
本作はそんな時代のラスト付近に位置する作品なのですが、これまで書いてきたハードボイルドの集大成として、強い思いを込めて書かれた作品でもあるのです。
しかし、作者の思いとは裏腹に、周囲の反応はこれまでの作品の時とほとんど変わらず。
この冷たい反応にガッカリし不貞腐れた作者は、それならば面倒くさいことなど考えず、自分が楽しめるものを書こう、と思うに至り、そうして出来上ったのが「新宿鮫」なのですねェ。
そんな立ち位置の作品ということもあって、今では“新宿鮫シリーズの原点”という評価もされているのです。
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主人公は私立探偵なので、その時点ですでに“新宿鮫シリーズ”以上のハードボイルド度がうかがい知れるのではないでしょうか(ちなみに“新宿鮫シリーズ”の主人公は刑事)。
失踪した女子大生の捜索を依頼された主人公が調査を進め、捜索人に近しい若者たちと接触していくのですが、その接触した人々に対し次々に魔の手が伸びていきます。
見えない敵に追い込まれていく主人公は、自らの危険も顧みず、いくつもの謎と罠をかいくぐりつつ、真相と真犯人へと迫っていくのです。
やはり“これまで書いてきたハードボイルドの集大成”というだけあって、主人公のキャラクターも古き良きハードボイルド探偵を思わすような渋カッコ良さを身に付けているのですが、この捜索の中で主人公の精神にダメージを与えるような事態が次々に襲ってくることもあり、それにより生まれる哀愁さとそれをはね退ける力強さも、主人公の大きな魅力となっていたように感じました。
主人公だけでなく、事件の関係者や主人公側の人間たちなど、脇を固めるキャラクターたちも個性の立った人物揃いで、特に霊感でもってアドバイスを与える主人公の友人などは、この人物主役の作品を読んでみたいと思わせるものがありましたね。
そしてやはり本作の魅力となるのは、主人公が迫っていく真犯人、いわゆるラスボスでして、実際に存在するのかさえわからないくらいに謎に包まれているにも関わらず、浮かび上がってくる犯罪は冷酷で人間の心を感じさせないようなものなので、より冷血で非道な存在として、物語に張りつめた恐怖や刺激を演出しているのです。
まあ、ラストが実験的というか少々捻りが加えられていて、そこを楽しめるかどうかで評価が大きく変わってしまうので、誰もが安心して味わえるハードボイルド作品というわけではありませんが、それでも“新宿鮫シリーズ”と共通する魅力が存分に盛り込まれていると思うので、“新宿鮫シリーズ”好きなら読み逃してはならない作品、と言えるのかもしれません。
> 個人的評価 : ★★★★★ ☆☆☆☆☆
本格ミステリ度 : ★★★ 鬼畜グログロ度 : ★★★
ビックリ驚愕度 : ★★ おどろおどろ度 : ★★★
熱アクション度 : ★★★★ 主キャラ魅力度 : ★★★★
恋愛ラブラブ度 : ★★★ 人間味ドラマ度 : ★★★
下ネタエッチ度 : ★★★★ 感涙ウルウル度 : ★★
衝撃バカミス度 : ★★ 気軽に読める度 : ★★★
* <個人的評価&項目別評価>の説明はこちら!
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