『雑司ヶ谷R.I.P.』 樋口毅宏 > 「このミス」完全読破 No.444
「このミステリーがすごい!」完全読破 No.444
『雑司ヶ谷R.I.P.』 樋口毅宏
「このミス」2012年版 : 66位
受賞(候補) :
総合ランキング :
年度ランキング :
読始:2011.4.7 ~ 読終:2011.4.8
読んだ時期 : 「このミス」ランキング発表"前"
読んだ版 : 単行本 <2011年2月>
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No.253「さらば雑司ヶ谷」に続く、“雑司ヶ谷シリーズ”の2作目です。
作者の樋口毅宏は、そのシリーズ1作目で作家デビューを果たしたわけですが、デビューから3作目となるNo.445「民宿雪国」(前年12月発売)が書評に取り上げられるなどして注目が高まってきている、そのタイミングで本作が発売となったのですね。
そして本作に関しては、公立図書館向けに“2011年8月25日までの貸し出しの猶予”をお願いする著者からのメッセージが巻末に掲載されていることで、発売前後に少し話題になりました(MSN産経ニュース『図書館貸し出し「待った」 作家の樋口さんが自著で要望』参照)。
ちなみに、貸出の自粛をお願いするようなメッセージが作品自体に掲載されるのは、過去に例のない出来事のようです。
これはいわゆる“図書館の新刊貸出問題(大雑把に言うと、新刊でも発売直後に図書館で無料貸し出しされるのは売り上げ/印税に大きな影響があるのではないか、という問題)”に関することでして、作者は前作「民宿雪国」の図書館における予約がかなりの数になっているのを知り、この問題について考えるようになり、本作の巻末にこういった文章を載せるに至ったのだそうです。
この“図書館問題”は、もう何年にも渡って議論され続けているものなのですぐに答えが出る類の話ではないのですが、作家側でも意見が分かれていて、例えば、樋口発言(本作刊行前の発言)を受けて白石一文が同調する意見をTwitterで発信したり(Togetter『作家白石一文氏の図書館についての発言と、それに対する反応』参照)、それに対して佐々木譲が違う立場からの意見をTwitterやブログに掲載するなどしています(佐々木譲の備忘録『読者を育てる制度』および『表現形式の原点』参照)。
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とまあこれらは作品の外側の問題でして、中身の方は樋口節が遠慮なく炸裂された作品です。
大教祖であり雑司ヶ谷の主的存在だった祖母の死により、その後を継ぐことを決意した主人公を中心にして、激しい後継者争いが繰り広げられていく物語が、映画「ゴッドファーザーPART2」を下敷きにして語られていきます。
映画・音楽・漫画・小説・プロレスなどなど、あらゆる方面のサブカル系の話題やネタがごった煮のように溢れかえっているのは前作以上の凄まじさでして、作者がリスペクトする存在を固有名詞や実名を使ってオマージュしているのはもちろん、今まさに人気絶頂を迎えているアイドルグループなど(こちらは実名は出していません)をかなり酷い有り様で揶揄していたりもするので、現実メディアに対するパロディ化が強烈すぎる刺激となっているのです。
なので、サブカル系の知識をどれぐらい持っているかで、面白く感じる度合も変わってくるかもしれません。
それに、先が全く読めない破天荒で無軌道なストーリー展開に翻弄されてしまいますし、漫画的なぶっ飛んだキャラクターが次々に登場してはとんでもない行動を取りまくるので、万人受けは絶対にしないだろうけれど、型破りな作品が好きな人なら間違いなくハマってしまうのではないでしょうか。
そんな前作と同じような流れの話と交互に、逝去した祖母が大教祖になるまでの物語も戦時とその前後を中心に描かれていきまして、また違った意味でぶっ飛んだ話となっているのですが、こちらは「民宿雪国」に近いような雰囲気があるので、「さらば雑司ヶ谷」と「民宿雪国」の魅力を両方共に味わうことのできる作品といえるのかもしれませんね。
ちなみに、本作からでも楽しめると思いますが、人物関係などが少々ややこしいので、前作を読んでいた方がより楽しむことが出来るのは確かでしょう。
> 個人的評価 : ★★★★☆ ☆☆☆☆☆
本格ミステリ度 : ★★ 鬼畜グログロ度 : ★★★★
ビックリ驚愕度 : ★★ おどろおどろ度 : ★★
熱アクション度 : ★★★★★ 主キャラ魅力度 : ★★★★
恋愛ラブラブ度 : ★★ 人間味ドラマ度 : ★★
下ネタエッチ度 : ★★★★ 感涙ウルウル度 : ★
衝撃バカミス度 : ★★★★ 気軽に読める度 : ★★
* <個人的評価&項目別評価>の説明はこちら!
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