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2010年9月

2010年9月30日 (木)

『バイバイ、ブラックバード』 伊坂幸太郎 > 「このミス」完全読破 No.367

「このミステリーがすごい!」完全読破 No.367

 『バイバイ、ブラックバード』 伊坂幸太郎

   「このミス」2011年版 : 投票数0

   受賞(候補) :

   総合ランキング :

   年度ランキング : 「ダ・ヴィンチ BOOK OF THE YEAR」
                 (文庫ランキング) 6位

   読始:2010.9.16 ~ 読終:2010.9.16

   読んだ時期 : 「このミス」ランキング発表"前"

   読んだ版 : 単行本 <2010年6月>

バイバイ、ブラックバード (双葉文庫)バイバイ、ブラックバード (双葉文庫)
伊坂 幸太郎

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 ミステリを含む小説本というのは、普通は雑誌や新聞等で連載していたものをまとめたか、書き下ろしかのどちらかなのですが、本作の場合はちょっと特殊な形態です。

 というのも、短編を一つ書き終えるごとに抽選で当たった50名の方に送られていく”ゆうびん小説”という企画から生まれた作品なのですね。

 そして本作は、太宰治の未完の遺作「グッドバイ」から想像を膨らませて創られた作品である、というもう一つの特徴もあります。

 この「グッドバイ」を読んでいなくても問題なく楽しむことができる内容ですが、でも読んでいた方が相違点などがわかってより楽しめるかもしれませんね。

 ちなみに、作者インタビューや作品解説、そして太宰治の「グッドバイ」も収録された「バイバイ、ブラックバード」をより楽しむために(Amazon.co.jp)という本も同時発売されています。

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 それで内容の方ですが、”短編を書き終えるごとに送付する”という形式だからといって短編集というわけではなく、話が一つに繋がった長編作品です。

 ただ、どの章から読み始めてもあまり問題ない連作集的な構成でして、書き下ろしの最終章が加えられることによって長編として完成した、といった感じでしょうか。

 具体的な内容については、特にストーリー的な面白さがある作品ではないので書きませんが、まあとにかく登場人物たちのキャラクターやそのやり取りがとんでもなく面白い作品なのですね。

 特に主人公と共に行動する人物が、読めばあるテレビタレントの姿が容易に思い浮かぶようなキャラクターなのですが、ただでさえ見た目も言動も強烈なタレントの、その強烈な部分のみをさらに何倍にも強烈にしてしまったような、とにかく強烈としか言えないようなキャラクターなのです。

 (後日追記:著者は本作を執筆中にはそのタレント(マツコ・デラックス)の存在を知らなかったそうで、そのために文庫版ではキャラクターの容姿が変更されています)

 この人物と主人公とが織りなす物語も必然的に強烈となるため、構成やストーリーなどシンプルであるにも関わらず、その面白さは奥行きを大いに感じるほどで、ホントに心から楽しみながら読むことができました。


  > 個人的評価 : ★★★★★ ★★☆☆☆


   本格ミステリ度 : ★★        鬼畜グログロ度 : ★
   ビックリ驚愕度 : ★★         おどろおどろ度 : ★★
   熱アクション度 : ★★★       主キャラ魅力度 : ★★★★★
   恋愛ラブラブ度 : ★★★★      人間味ドラマ度 : ★★★★
   下ネタエッチ度 : ★★        感涙ウルウル度 : ★★★
   衝撃バカミス度 : ★★★       気軽に読める度 : ★★★★

  * <個人的評価&項目別評価>の説明はこちら!


  【 “伊坂幸太郎” 関連記事 】

  > No.809 「火星に住むつもりかい?」
  > No.794 「キャプテンサンダーボルト」
  > No.732 「首折り男のための協奏曲」

  > No.695 「ガソリン生活」
  > No.672 「死神の浮力」
  > No.627 「死神の精度」
  > No.618 「残り全部バケーション」
  > No.612 「夜の国のクーパー」

  > No.528 「PK」
  > No.384 「マリアビートル」
  > No.381 「グラスホッパー」
  > No.367 「バイバイ、ブラックバード」
  > No.312 「蝦蟇倉市事件 1」

  > No.310 「オー! ファーザー」
  > No.289 「SOSの猿」
  > No.125 「ゴールデンスランバー」
  > No.084 「アヒルと鴨のコインロッカー」
  > No.021 「重力ピエロ」


 「ふたりの距離の概算」米澤穂信 <<< PREV/NEXT >>> 「七つの海を照らす星」七河迦南

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  >>> 「このミス」完全読破 説明&読破本リスト <<<

2010年9月29日 (水)

『ふたりの距離の概算』 米澤穂信 > 「このミス」完全読破 No.366

「このミステリーがすごい!」完全読破 No.366

 『ふたりの距離の概算』 米澤穂信

   「このミス」2011年版 : 33位

   受賞(候補) :

   総合ランキング :

   年度ランキング : 「本格ミステリ・ベスト10」 11位

   読始:2010.9.14 ~ 読終:2010.9.15

   読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"前"

   読んだ版 : 単行本 <2010年6月>

ふたりの距離の概算 (角川文庫)ふたりの距離の概算 (角川文庫)
米澤 穂信

角川書店(角川グループパブリッシング) 2012-06-22
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 「氷菓」「愚者のエンドロール」「クドリャフカの順番」 No.365「遠まわりする雛」に続く、“古典部シリーズ”の5作目です。

 これまでの4作では古典部部員の1年生時の出来事や事件が描かれていましたが、本作からは2年生時における話に入っていきます。

 それでまあ1年時の話を全て読んでから本作を手にした方が楽しめるのはもちろんなのですが、ただ4作もあるので、事前にそんなに読むのは面倒くさいと思う方もいらっしゃるでしょう。

 そんな方でも、このシリーズの予備知識として、本作の一つ前の「遠まわりする雛」だけでも読んでおいた方がよいと思います。

 その理由については、No.365「遠まわりする雛」の方に書いてあるので、そちらをご覧ください。

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 というわけで本作ですが、2年生に進級した古典部部員を中心とした、新学期に入った直後の話となっています。

 新学期ということで新入部員を勧誘しなければならないわけですが、古典部にも一人とはいえ新1年生が入部することに。

 その新入生は2年生の4人とも上手くやっていけそうな感じだったものの、仮入部期間終了直前になって突然、”入部出来ない”と告げ部室を去っていくのでした.....。

 なぜに突然気持ちが変わってしまったのか、そしてそのきっかけは何だったのか、といった謎を、校内マラソン大会に参加しながら(走りながら)主人公は推理していくのです。

 というわけで、日常の謎にマラソンが組み込まれているというとても変わった外観の作品なのですが、ちょっとした出来事の中に潜む引っ掛かりに気づいていくことで真相への道が造られていく技など、内容的にも相変わらずの素晴らしさ&面白さでした。

 それに、そうやって事実を積み重ねて真相にたどり着いた途端に、ほろ苦い青春物語が浮かび上がってくるところなんかも、やはり米澤作品らしくてさすがですね。


  > 個人的評価 : ★★★★☆ ☆☆☆☆☆


   本格ミステリ度 : ★★★★      鬼畜グログロ度 : ★
   ビックリ驚愕度 : ★★         おどろおどろ度 : ★
   熱アクション度 : ★★        主キャラ魅力度 : ★★★★
   恋愛ラブラブ度 : ★★         人間味ドラマ度 : ★★★★
   下ネタエッチ度 : ★         感涙ウルウル度 : ★★★
   衝撃バカミス度 : ★★★       気軽に読める度 : ★★★★

  * <個人的評価&項目別評価>の説明はこちら!


  【 “米澤穂信” 関連記事 】

  > No.1123 「巴里マカロンの謎」
  > No.1099 「Iの悲劇」(後日更新予定)

  > No.1050 「本と鍵の季節」
  > No.0961 「犬はどこだ」(後日更新予定)
  > No.0942 「いまさら翼といわれても」
  > No.0872 「真実の10メートル手前」
  > No.0828 「王とサーカス」

  > No.0817 「さよなら妖精」
  > No.0777 「ミステリマガジン700 【国内篇】」
  > No.0748 「満願」
  > No.0622 「リカーシブル」
  > No.0402 「折れた竜骨」

  > No.0366 「ふたりの距離の概算」
  > No.0365 「遠まわりする雛」
  > No.0315 「蝦蟇倉市事件2(街角で謎が待っている)」
  > No.0250 「秋期限定栗きんとん事件」
  > No.0227 「追想五断章」

  > No.0140 「儚い羊たちの祝宴」
  > No.0076 「インシテミル」
  > No.0044 「ボトルネック」
  > No.0040 「夏期限定トロピカルパフェ事件」
  > No.0039 「春期限定いちごタルト事件」


 「遠まわりする雛」米澤穂信 <<< PREV/NEXT >>> 「バイバイ、ブラックバード」伊坂幸太郎

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  >>> 「このミス」完全読破 説明&読破本リスト <<<

2010年9月28日 (火)

『遠まわりする雛』 米澤穂信 > 「このミス」完全読破 No.365

「このミステリーがすごい!」完全読破 No.365

 『遠まわりする雛』 米澤穂信

   「このミス」2008年版 : 35位

   受賞(候補) : (「日本推理作家協会賞〈短編部門〉」
               候補作 『心あたりのある者は』 収録)

   総合ランキング : 「短編ミステリ・オールタイムベスト(国内編)」
                58位作品 『心あたりのある者は』 収録

   年度ランキング : 「本格ミステリ・ベスト10」 14位

   読始:2010.9.14 ~ 読終:2010.9.14

   読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"後"

   読んだ版 : 単行本 <2007年10月>

遠まわりする雛 (角川文庫)遠まわりする雛 (角川文庫)
米澤 穂信

角川書店(角川グループパブリッシング) 2010-07-24
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 「氷菓」「愚者のエンドロール」「クドリャフカの順番」に続く、“古典部シリーズ”の4作目です。

 このシリーズ作品はこれまで1つも読んでいなかったのですが、シリーズ5作目であるNo.366「ふたりの距離の概算」が発売されたので、まずは本作を読んでみました。

 まあホントは1作目から順番に読もうと思っていたのです。でも4冊も読む余裕がなかったため、予習も兼ねて1つ前の本作をとりあえず読んでおこうと思ったのですね。

 そうしたら、前もって本作を読んでおいたのは、様々な面で正解でした。

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 これまでのシリーズ3作品が長編だったのに対し、本作は7作から成る短編集です。

 そして内容の方は、“入学→一学期→夏休み→二学期→冬休み→三学期→春休み”と、古典部部員の1年生時における1年間が流れるように短編が続いていきます。

 つまり、前3作の隙間を埋めるような短編集でして、古典部の1年間の出来事がわかるようになっていることもあり、2年生に進級した古典部の話となる「ふたりの~」の前に読むのに最適だったのですね。

 それに、長編シリーズものの番外編的短編集というのは、主要人物のキャラクター面を掘り下げた話が多いものですが、本作もその例に洩れないため、この7つの短編を読むことで古典部の部員4人のキャラクターや4人の関係性を掴むことができたし、特に主人公の1年間における精神面での変化(成長)も窺えました。

 本作の後に「ふたりの~」を読んでみたら、この主人公の精神面における変化が大きなテーマの一つになっていたし、他の部員3人のキャラクターについてはそれほど詳しい説明はなかったので、予備知識として本作を読んでおいたのはまさに大正解だったわけです。

 もちろんこの作品自体としても面白い短編揃いでして、シリーズ最初の2作がラノベ系レーベルから刊行されていたことが窺える青春ミステリではあるものの、日常の謎系ミステリとしてもなかなかの読み応えですし、それが青春物語と絶妙に溶け合わさっていましたからね。

 というわけなので、いきなり「ふたりの~」から読んでみようと思っている方は、1作目から順に読んでいくのが1番なのはもちろんですが、少なくとも本作を事前に読んでいた方が「ふたりの~」をより楽しむことが出来るのではないでしょうか。


  > 個人的評価 : ★★★★☆ ☆☆☆☆☆


   本格ミステリ度 : ★★★★     鬼畜グログロ度 : ★
   ビックリ驚愕度 : ★★★       おどろおどろ度 : ★
   熱アクション度 : ★★        主キャラ魅力度 : ★★★★
   恋愛ラブラブ度 : ★★★       人間味ドラマ度 : ★★★
   下ネタエッチ度 : ★         感涙ウルウル度 : ★★★
   衝撃バカミス度 : ★★★       気軽に読める度 : ★★★★

  * <個人的評価&項目別評価>の説明はこちら!


  【 “米澤穂信” 関連記事 】

  > No.1123 「巴里マカロンの謎」
  > No.1099 「Iの悲劇」(後日更新予定)

  > No.1050 「本と鍵の季節」
  > No.0961 「犬はどこだ」(後日更新予定)
  > No.0942 「いまさら翼といわれても」
  > No.0872 「真実の10メートル手前」
  > No.0828 「王とサーカス」

  > No.0817 「さよなら妖精」
  > No.0777 「ミステリマガジン700 【国内篇】」
  > No.0748 「満願」
  > No.0622 「リカーシブル」
  > No.0402 「折れた竜骨」

  > No.0366 「ふたりの距離の概算」
  > No.0365 「遠まわりする雛」
  > No.0315 「蝦蟇倉市事件2(街角で謎が待っている)」
  > No.0250 「秋期限定栗きんとん事件」
  > No.0227 「追想五断章」

  > No.0140 「儚い羊たちの祝宴」
  > No.0076 「インシテミル」
  > No.0044 「ボトルネック」
  > No.0040 「夏期限定トロピカルパフェ事件」
  > No.0039 「春期限定いちごタルト事件」


 「狩久探偵小説選」狩久 <<< PREV/NEXT >>> 「ふたりの距離の概算」米澤穂信

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  >>> 「このミス」完全読破 説明&読破本リスト <<<

2010年9月27日 (月)

『狩久探偵小説選』 狩久 > 「このミス」完全読破 No.364

「このミステリーがすごい!」完全読破 No.364

 『狩久探偵小説選』 狩久

   「このミス」2011年版 : 24位

   受賞(候補) :

   総合ランキング :

   年度ランキング :

   読始:2010.9.9 ~ 読終:2010.9.11

   読んだ時期 : 「このミス」ランキング発表"前"

   読んだ版 : 単行本 <2010年3月>

狩久探偵小説選 (論創ミステリ叢書)狩久探偵小説選 (論創ミステリ叢書)
狩 久

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 「このミス」では、30年以上前に活躍した幻の作家の作品集が毎年のようにランクインしています。

 そして今年(2011年版)のその枠での最有力候補なのではないかと思われるのが、この「狩久探偵小説選」です。

 作者の狩久(かり・きゅう)は、結核による療養生活中の1951年に雑誌『宝石』の短編懸賞に投稿し、「落石」が優秀作5編に選ばれてデビュー。

 その後は、途中で12年ほどの休筆期間がありながらも、本格推理や官能サスペンス・私小説的作品などを発表し続け、1977年に肺がんのため逝去されました。

 作品集としては、生前に編まれた「妖しい花粉」(1958年)があるのみで、もちろん現在では入手困難なことから、本作は待望の作品集なのですね。

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 狩久作品の特徴として“官能的”という言葉がよく使われるのですが、「妖しい花粉」では“比較的セックスの匂いの強い”(本作解題より)作品が選ばれたこともあり、本作では“幅広い知性に裏づけされたはてしない論理の世界”(同)を描いた作品を中心に選んだのだそうです。

 それでも本作に収録された作品も、しっかりとした本格ミステリの中に官能的な香りが漂っているので、この硬さと軟らかさのバランスが作品の雰囲気を絶妙に仕立て上げているように思いました。

 それに、かなり昔の作品とはいえ、作者の遊び心がふんだんに盛り込まれていますし、過去の作品を前振りに使ってしまうという驚きの作品が出てくるなど、古臭さなどそれほど感じずに素直に楽しめました。

 もちろん本格ミステリとしてもかなりの読み応えがあるので、「このミス」にランクインするかどうかに関係なくオススメしたいですね。

 ちなみに、本作が好評ならば、より官能的な作品や貝弓子名義の創作翻訳作品などを中心とする作品集の刊行もありえるそうなので、そういった意味でも多くの人に読んでもらいたいですねェ。


  > 個人的評価 : ★★★★★ ☆☆☆☆☆


   本格ミステリ度 : ★★★★★    鬼畜グログロ度 : ★★
   ビックリ驚愕度 : ★★★       おどろおどろ度 : ★★
   熱アクション度 : ★★        主キャラ魅力度 : ★★★
   恋愛ラブラブ度 : ★★★       人間味ドラマ度 : ★★★
   下ネタエッチ度 : ★★★      感涙ウルウル度 : ★★
   衝撃バカミス度 : ★★★       気軽に読める度 : ★★

  * <個人的評価&項目別評価>の説明はこちら!


 「獣の樹」舞城王太郎 <<< PREV/NEXT >>> 「遠まわりする雛」米澤穂信

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  >>> 「このミス」完全読破 説明&読破本リスト <<<

2010年9月25日 (土)

『獣の樹』 舞城王太郎 > 「このミス」完全読破 No.363

「このミステリーがすごい!」完全読破 No.363

 『獣の樹』 舞城王太郎

   「このミス」2011年版 : 投票数0

   受賞(候補) :

   総合ランキング :

   年度ランキング :

   読始:2010.9.7 ~ 読終:2010.9.8

   読んだ時期 : 「このミス」ランキング発表"前"

   読んだ版 : ノベルス <2010年7月>

獣の樹 (講談社文庫)獣の樹 (講談社文庫)
舞城 王太郎

講談社 2012-08-10
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 舞城王太郎はこれまでそれほど多くの作品を発表しているわけではないのですが、2010年はかなり精力的な活動となっています。

 特に夏に集中していまして、本作を始め、「NECK」「イキルキス」「魔界探偵冥王星O デッドドールのダブルD」と新刊を4作も発表。

 さらには雑誌掲載も多いし、「NECK」の映画版の公開もあるしで、まあホントに凄いですね。

 そして舞城作品といえば、メフィスト賞を受賞した衝撃のデビュー作No.71「煙か土か食い物」を始めとした講談社ノベルスのイメージが強いと思うのですが、最初の刊行形態が講談社ノベルスだった作品としては2003年の「九十九十九」以来7年ぶりとなるのです。

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 それゆえか内容の方も、舞城王太郎の魅力がたっぷりと詰まった作品となっています。

 馬から少年が生まれるというインパクトある場面から始まって、その後も読む者の想像力など遥かに超越するようなとんでもない展開が繰り広げられていくのです。

 まあ予測不能の疾走感に溢れた魅力があるのですが、ミステリ的な要素はそれほど高くなく、物語的な面白さや人間ドラマの方でグイグイと来る感じでしょうかね。

 もちろん好みの分かれる作風ではありますが、でも好きな人にはもうホントにたまらないくらいのワクワク感を味わうことが出来ると思います。


  > 個人的評価 : ★★★★★ ☆☆☆☆☆


   本格ミステリ度 : ★★        鬼畜グログロ度 : ★★
   ビックリ驚愕度 : ★★         おどろおどろ度 : ★★★
   熱アクション度 : ★★★★     主キャラ魅力度 : ★★★★
   恋愛ラブラブ度 : ★★★       人間味ドラマ度 : ★★★
   下ネタエッチ度 : ★★        感涙ウルウル度 : ★★
   衝撃バカミス度 : ★★★★     気軽に読める度 : ★★★

  * <個人的評価&項目別評価>の説明はこちら!


  【 “舞城王太郎” 関連記事 】

  > No.826 「淵の王」

  > No.593 「JORGE JOESTAR」
  > No.363 「獣の樹」
  > No.274 「ビッチマグネット」
  > No.119 「ディスコ探偵水曜日」
  > No.071 「煙か土か食い物」


 「薔薇を拒む」近藤史恵 <<< PREV/NEXT >>> 「狩久探偵小説選」狩久

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  >>> 「このミス」完全読破 説明&読破本リスト <<<

2010年9月24日 (金)

『薔薇を拒む』 近藤史恵 > 「このミス」完全読破 No.362

「このミステリーがすごい!」完全読破 No.362

 『薔薇を拒む』 近藤史恵

   「このミス」2011年版 : 91位

   受賞(候補) :

   総合ランキング :

   年度ランキング :

   読始:2010.9.6 ~ 読終:2010.9.6

   読んだ時期 : 「このミス」ランキング発表"前"

   読んだ版 : 単行本 <2010年5月>

薔薇を拒む (講談社文庫)薔薇を拒む (講談社文庫)
近藤 史恵

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 人里離れた館で殺人事件が起きるという、本格ミステリの典型的な設定の作品です。

 主人公は孤児である少年なのですが、彼にとっては思いがけないほどの好条件につられて、ある洋館で3年間住み込みで働くことになります。

 ただその洋館にはとても不吉な噂があったり、そこの住んでいるのは謎めいた人物ばかりだったり、主人公と同じ条件で一緒に働くことになる少年にも謎があったりと、とにかく作中には妖しい雰囲気が霧のように漂っているのですね。

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 そんな中で登場人物の一人が奇妙な死を遂げたのをきっかけにして、それまで謎に包まれていた様々な過去が次第に浮かび上がってきて、ミステリ的な展開となっていくわけです。

 ただ一般的な“館ものミステリ作品”のように、殺人事件自体やそこで使われたトリックなどがメインとなっているのではないので、そういった部分を期待しない方がよいでしょうね。

 でもその分、過去から繋がる因縁や愛憎入り混じる人間関係など、謎が解かれていくことで登場人物たち(特に主人公)の内面部分が滲み出て来て、切なく哀しい物語となっていくのです。

 まあとにかく退廃的な美しさで彩られた“青春ゴシックミステリ”なので、この物語を覆う雰囲気を楽しむべき作品だと思うし、そうやって読んでいくと、ラストではドキリとさせられてしまうでしょうね。


  > 個人的評価 : ★★★★☆ ☆☆☆☆☆


   本格ミステリ度 : ★★★       鬼畜グログロ度 : ★★
   ビックリ驚愕度 : ★★★       おどろおどろ度 : ★★★
   熱アクション度 : ★★        主キャラ魅力度 : ★★★
   恋愛ラブラブ度 : ★★★       人間味ドラマ度 : ★★★
   下ネタエッチ度 : ★★        感涙ウルウル度 : ★★
   衝撃バカミス度 : ★★★       気軽に読める度 : ★★★

  * <個人的評価&項目別評価>の説明はこちら!


  【 “近藤史恵”関連記事 】

  > No.648 「サヴァイヴ」
  > No.514 「ホテル・ピーベリー」
  > No.362 「薔薇を拒む」
  > No.327 「エデン」
  > No.079 「サクリファイス」


 「悪の教典」貴志祐介 <<< PREV/NEXT >>> 「獣の樹」舞城王太郎

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  >>> 「このミス」完全読破 説明&読破本リスト <<<

2010年9月21日 (火)

『悪の教典』 貴志祐介 > 「このミス」完全読破 No.361

「このミステリーがすごい!」完全読破 No.361

 『悪の教典』 貴志祐介

   「このミス」2011年版 : 1位

   受賞(候補) : 「山田風太郎賞」受賞
            (「直木三十五賞」候補)
            (「吉川英治文学新人賞」候補)

   総合ランキング :

   年度ランキング : 「週刊文春ミステリーベスト10」 1位
              「ミステリが読みたい!」 2位
              「ダ・ヴィンチ BOOK OF THE YEAR」
                 (文庫ランキング) 6位
              「本屋大賞」 7位
              「AXNミステリー 闘うベストテン」 9位
              「キノベス」 20位

   読始:2010.9.2 ~ 読終:2010.9.6

   読んだ時期 : 「このミス」ランキング発表"前"

   読んだ版 : 単行本(上・下) <2012年8月>

悪の教典 上 (文春文庫)悪の教典 上 (文春文庫)
貴志 祐介

文藝春秋 2012-08-03
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 雑誌連載されていた貴志祐介の新作(「悪の教典」&No.428「ダークゾーン」)は、2作品とも前評判が高く、その分期待の方も高くなっていました。

 この2作は同時期に発売される可能性もあったそうなのですが、まず先にこの「悪の教典」から発売に。

 2年前のNo.126「新世界より」がやはり上下巻の大作で、内容は壮大なスケールのダークファンタジーだったこともあり、本作も異世界的な展開になるのかな~と無意識に感じながら読み始めてしまいました。

 ところが読んでみたら現代の、それも高校を舞台に繰り広げられる物語だったので、ちょっと驚いてしまいましたね。ってまあ自分で勝手に想像していただけですが。

 その高校で多くの生徒から慕われている教師を主人公に、生徒や同僚たちとの一見普通な話が進んでいくのですが、次第に貴志作品らしいダークな部分が垣間見えてくるのです。

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 そういった展開は主に上巻で繰り広げられまして、最初に広がっていた日常が次第に崩れていく感じ、ある人物の本性が明らかにされていくにつれて物語がダークに変貌を遂げていく感じが、もうとてつもない迫力だしスリル満点だしで、読めばグイグイ引き込まれていくこと間違いないでしょう。

 そして下巻では、その上巻を元にしてまたとんでもなくぶっ飛んだ展開に突入していくので、まあとにかく圧倒されまくりの作品なのです。

 ただ個人的には、上巻は物凄く楽しめたものの、No.12「黒い家」や「新世界より」のホラー部分のような“襲われるものの迫力ある恐怖”を期待していたので、逆に“襲う側”がメインとなっていた下巻には少し“あれれ?”ってなってしまいました.....。

 でも最後まで読んでみたら、これはホラー的というよりもサイコスリラー的に楽しむものなんだってことがわかったので、やはり読み方(期待し方)を誤ってしまったようです。

 とはいえ、上下巻の分厚さをほとんど感じさせないくらいにのめり込んでしまいましたし、このダークなのに爽快感ある物語もかなり楽しめたこともまた事実なのですけどね。

 あとこの作品には特設サイトが作られていまして(『悪の教典』 特設サイト)、ここでは第1章を全文ダウンロードできる他、クラス名簿・教員名簿を見たり、ある登場人物のTwitterを見たりフォローしたりできます。

 ただ、このTwitterの内容にはネタバレが含まれているので、作品自体を読む前に見ない方がいいでしょうね。


  > 個人的評価 : ★★★★★ ★☆☆☆☆


   本格ミステリ度 : ★★        鬼畜グログロ度 : ★★★★★
   ビックリ驚愕度 : ★★         おどろおどろ度 : ★★★
   熱アクション度 : ★★★★     主キャラ魅力度 : ★★★★
   恋愛ラブラブ度 : ★★★       人間味ドラマ度 : ★★
   下ネタエッチ度 : ★★★★★   感涙ウルウル度 : ★★
   衝撃バカミス度 : ★★★★     気軽に読める度 : ★★★

  * <個人的評価&項目別評価>の説明はこちら!


  【 “貴志祐介” 関連記事 】

  > No.991 「ミステリークロック」
  > No.698 「雀蜂」
  > No.469 「鍵のかかった部屋」

  > No.466 「硝子のハンマー」
  > No.428 「ダークゾーン」
  > No.361 「悪の教典」
  > No.126 「新世界より」
  > No.012 「黒い家」


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2010年9月20日 (月)

『スリープ』 乾くるみ > 「このミス」完全読破 No.360

「このミステリーがすごい!」完全読破 No.360

 『スリープ』 乾くるみ

   「このミス」2011年版 : 55位

   受賞(候補) :

   総合ランキング :

   年度ランキング : 「週刊文春ミステリーベスト10」 18位

   読始:2010.8.31 ~ 読終:2010.8.31

   読んだ時期 : 「このミス」ランキング発表"前"

   読んだ版 : 単行本 <2010年6月>

スリープ (ハルキ文庫 い 15-1)スリープ (ハルキ文庫 い 15-1)
乾 くるみ

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 「リピート」に続いてのSF作品です。

 その「リピート」ではタイムトラベル物でしたが、今回はタイトルから想像できるように、冷凍睡眠(コールドスリープ)物。

  これは、人体を低温状態に保つことで老化を防ぎ、眠りについた時の状態で数十年後に目覚めるということで、まあ一種のタイムトラベルなのですね。

 本作でも、この冷凍睡眠によってタイムトラベル状態となった人物の、タイトラベル前と後の物語が描かれていきます。

 そして作中には、この冷凍睡眠についてなど科学的・物理的な説明が結構入るので、表紙の感じからするとNo.68「イニシエーション・ラブ」のような軽く読める内容に見えますが、普段SF作品を読み慣れていない人だと少し小難しく感じてしまうかもしれませんね(後日追記:ここでいう表紙とは単行本版のことです)。

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 というわけで今回はSF作品なわけですが、恋愛小説でしかない内容だったものを最後の一行だけでミステリ小説に変えてしまう乾くるみですから、やっぱり本作もミステリ的な要素が次第に出てきます。

 冷凍睡眠から目覚めた後のことなのですが、なんだか状況が掴めないような展開になっていって、モヤモヤした中で話が進んでいくと、最後には全てが明らかになってスッキリとするのですね。

 このようなSFとミステリが見事に融合した作品なので、SF小説好きの人もミステリ好きの人も満足できる内容なのではないでしょうか。

 それに、読み終えた感じが感動物語のようだけど、よくよく考えてみたら.....、というブラックなスパイスが効いた所なんかも乾作品らしくて良かったですね。


  > 個人的評価 : ★★★★★ ☆☆☆☆☆


   本格ミステリ度 : ★★        鬼畜グログロ度 : ★★
   ビックリ驚愕度 : ★★★★      おどろおどろ度 : ★★
   熱アクション度 : ★★        主キャラ魅力度 : ★★★
   恋愛ラブラブ度 : ★★★       人間味ドラマ度 : ★★★
   下ネタエッチ度 : ★★★      感涙ウルウル度 : ★★★★
   衝撃バカミス度 : ★★★       気軽に読める度 : ★★★

  * <個人的評価&項目別評価>の説明はこちら!


  【 “ 乾くるみ” 関連記事 】

  > No.726 「北乃杜高校探偵部」
  > No.560 「カラット探偵事務所の事件簿2」
  > No.501 「嫉妬事件」
  > No.374 「セカンド・ラブ」

  > No.360 「スリープ」
  > No.185 「六つの手掛り」
  > No.168 「カラット探偵事務所の事件簿(1)」
  > No.105 「クラリネット症候群」
  > No.068 「イニシエーション・ラブ」


 「100人館の殺人」山口芳宏 <<< PREV/NEXT >>> 「悪の教典」貴志祐介

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  >>> 「このミス」完全読破 説明&読破本リスト <<<

2010年9月18日 (土)

週刊少年ジャンプ新連載! 「LIGHT WING」 神海英雄

週刊少年ジャンプ 2010年10月4日号 NO.42週刊少年ジャンプ 2010年10月4日号 NO.42
佐々木尚

集英社 2010
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 2010年9月に投入された新連載の第2弾が、42号(9月18日発売)から始まった「LIGHT WING(ライト ウィング)です。


 作者の神海英雄(しんかい・ひでお)は、“赤マルジャンプ2004SUMMER”に「アンサンブル」が掲載されてデビュー。

 その後は、“赤マルジャンプ2005SPRING”に掲載された「Heart Catcher」を経て、本誌2007年9号に「Dodge The Ball」が掲載されて本誌デビュー。

 さらに本誌2008年13号に「Q部!!」が掲載されて、本作にてついに初連載となりました。


 それで内容の方ですが、後ほど追記します。



  投票受付期間:2010.9.18~9.25



  投票受付期間:2010.9.18~10.2

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 【「神海英雄」関連記事】

  > 「バズルジャングル」 神海英雄 > ジャンプGIGA 2017 vol.2 (17.5.13)

  > 「SOUL CATCHER(S)」 神海英雄 > 週刊少年ジャンプ新連載! (13.5.10)
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  > 「LIGHT WING」 神海英雄 <JC1巻買い>  (11.1.14)
  > 「LIGHT WING」 神海英雄 > 週刊少年ジャンプ新連載! (10.9.18)


 >>> 「週刊少年ジャンプ」新連載作品リスト(2010年) <<<

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2010年9月15日 (水)

『100人館の殺人』 山口芳宏 > 「このミス」完全読破 No.359

「このミステリーがすごい!」完全読破 No.359

 『100人館の殺人』 山口芳宏

   「このミス」2011年版 : 投票数0

   受賞(候補) :

   総合ランキング :

   年度ランキング :

   読始:2010.8.27 ~ 読終:2010.8.27

   読んだ時期 : 「このミス」ランキング発表"前"

   読んだ版 : 単行本 <2010年3月>

100人館の殺人100人館の殺人
山口 芳宏

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 “○○館の殺人”といえば、綾辻行人の諸作品を始めとして、本格ミステリの定番的なタイトルです。

 それで本作は“100人館”。今までにありそうでなかった“館”なのですね。

 “100人館”というだけありまして、殺人事件が起きた館には100人近い人物がいて、つまりは容疑者が100人、被害者候補も100人いるという、とんでもない作品なのです。

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 まあとにかく魅力的な設定なのですが、ただこれで本格的な本格ミステリを期待してしまうと、少し物足りなく感じてしまうかもしれません。

 というのも、作者の過去の作品を読んだ人ならわかると思いますが、基本的にパロディー的だったりバカミス的な作風の作家さんなのですよね。

 なので本作も、殺人事件が起こる割には結構ユルい雰囲気があるし、別に100人もいなくても成立しそうな内容なのです。

 ただ、それを踏まえた上で読んだなら、本格的な本格ミステリとはまた違った気楽に楽しめる魅力を味わえるのではないでしょうか。

 それに、冒頭にあるざっと6ページにも渡る登場人物一覧がもうとんでもないインパクトなので、これを見るだけでも充分な価値がありますからね。


  > 個人的評価 : ★★★☆☆ ☆☆☆☆☆


   本格ミステリ度 : ★★★★★    鬼畜グログロ度 : ★★★
   ビックリ驚愕度 : ★★★       おどろおどろ度 : ★★
   熱アクション度 : ★★★       主キャラ魅力度 : ★★
   恋愛ラブラブ度 : ★★★       人間味ドラマ度 : ★★
   下ネタエッチ度 : ★★        感涙ウルウル度 : ★★
   衝撃バカミス度 : ★★★★     気軽に読める度 : ★★★★

  * <個人的評価&項目別評価>の説明はこちら!


  【 “山口芳宏” 関連記事 】

  > No.359 「100人館の殺人」
  > No.157 「豪華客船エリス号の大冒険」


 「シューマンの指」奥泉光 <<< PREV/NEXT >>> 「スリープ」乾くるみ

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  >>> 「このミス」完全読破 説明&読破本リスト <<<

2010年9月13日 (月)

週刊少年ジャンプ読切! 「メルヘン王子グリム(2010年41号版)」 渡邉築

週刊少年ジャンプ 2010年9月27日号 NO.41週刊少年ジャンプ 2010年9月27日号 NO.41
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 * 連載版の「メルヘン王子グリム」に関しては週刊少年ジャンプ新連載! 「メルヘン王子グリム」 渡邉築(11.2.20)の方をご覧ください。

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 週刊少年ジャンプ2010年41号(9月13日発売)に掲載された読切作品が、「メルヘン王子グリム」です。

 作者の渡邉築(わたなべ・きずく)は、赤塚賞(2009年下半期)の佳作を「重装思春機兵ティーンエイザー」で受賞し、今年4月の本誌19号に「メルヘン王子グリム」が掲載されていきなりの本誌デビュー(週刊少年ジャンプ読切! 「メルヘン王子グリム(2010年19号版)」 渡邉築参照)。

 そしてわずか5ヶ月後となる今回、同名作品にて2度目の本誌登場となりました。

 ちなみに、前回の掲載時はセンターカラーではなかったので、今回が初のセンターカラー作品となります。


 内容の方は、メルヘンギャグ漫画です。

 小学6年生の野球少年・磯部達彦は、グラビアアイドルとして活躍する同級生で幼馴染の白雪に、次の試合に勝つことを条件としてデートを申し込むことに。

 一度はOKをもらうものの、磯部が万年補欠であることを白雪が思い出してしまったため、試合に出て活躍するという条件を逆に受けてしまいます。

 どうやって試合に出ようか悩んでいる磯部の目の前に突如現れたのが、メルヘン界の第7王子・グリム。

 十年後の未来からやって来たこのグリムは、磯部が白雪と付き合えないことがきっかけとなって滅んだメルヘン界を救うため、磯部の手助けをすることに.....。


 というわけで、19号版との比較ですが、まずグリムのキャラクターは、未来からやって来たという設定以外はほとんど一緒ですね。

 あと“のび太ポジション”である磯部(イソッペ)は、グリムに助けられつつ振り回されるという役割は同じですが、高校生から小学生に年齢が変わっています。

 そして全体的に見てみると、19号版では男の不良しか出てこない学園ギャグだったのに対し、今回は野球の場面と磯部&白雪の恋愛模様とが絡んだギャグとなっているので、その雰囲気は硬派と軟派でずいぶんと違った印象です。

 この違いでいうと、野球の試合展開と磯部&白雪の恋愛要素によって、ギャグだけでなくコメディ的&ストーリー的な魅力も加えられていたので、ネット上や当ブログの投票などで19号版より今回の方が評判が良いのは、そういったギャグ以外の要素が魅力的に加えられていたことが評価されてのものなのではないでしょうかね。


 ちなみに、扉絵に付けられている煽り文は、

昔々 あるところに… 続きは次のページから!

☆ギャグ世界のスーパールーキーパワーアップして再登場!!
         唯一無二の童話ギャグ読切C(センター)カラー21P!!

というものでした。


 ↓↓ この読切作品が収録されている単行本はこちら! ↓↓
 

メルヘン王子グリム 2 (ジャンプコミックス)メルヘン王子グリム 2 (ジャンプコミックス)
渡邉 築

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  投票受付期間:2010.9.13~9.20

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 【「渡邉築」関連記事】

  > 「殺せんせーQ(2016年16号出張版)」 松井優征/渡邉築/青戸成
     > 週刊少年ジャンプ読切! (16.3.14)
  > 「殺せんせーQ(2016年10号出張版)」 松井優征/渡邉築/青戸成
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  > 「殺せんせーQ(2016年01号出張版)」 松井優征/渡邉築/青戸成
     > 週刊少年ジャンプ読切! (15.12.5)

  > 「放課後・オブ・ザ・デッド」 渡邉築 > 週刊少年ジャンプ読切! (14.1.20)

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  > 「恋するエジソン」 渡邉築 > 週刊少年ジャンプ読切! (12.3.31)

  > 「重装思春機兵ティーンエイザー」 渡邉築 > 週刊少年ジャンプ読切! (10.11.21)

  > 「メルヘン王子グリム」 渡邉築 <JC1巻買い>  (11.7.6)
  > 「メルヘン王子グリム」 渡邉築 > 週刊少年ジャンプ新連載! (11.2.20)
  > 「メルヘン王子グリム(41号版)」 渡邉築 > 週刊少年ジャンプ読切! (10.9.13)
  > 「メルヘン王子グリム(19号版)」 渡邉築 > 週刊少年ジャンプ読切! (10.4.12)


 >>> 「週刊少年ジャンプ」関連記事リスト <<<

週刊少年ジャンプ新連載! 「әnígmә【エニグマ】」 榊健滋

週刊少年ジャンプ 2010年9月27日号 NO.41週刊少年ジャンプ 2010年9月27日号 NO.41
佐々木尚

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 2010年9月に投入された新連載の第1弾が、41号(9月13日発売)から始まった「әnígmә【エニグマ】」です。

 作者の榊健滋(さかき・けんじ)は、“赤マルジャンプ2003SPRING”に「SECOND SWIMMER」が掲載されてデビュー(当時のペンネームは後藤真)。

 その後は、“赤マルジャンプ2005SPRING”に「ビーチ・ボム」、“ジャンプ the REVOLUTION!2006”に「大正警察活劇 百獣夜行」が掲載されて、本作にて本誌デビュー&初連載となりました。


 それで内容の方ですが、学校を舞台とした能力系サスペンス漫画です。

 無意識に未来に起こることを日記に書いているという予知能力(夢日記)を持つ高校生・灰葉スミオが主人公。

 この日記に書かれた運命を変えるために日夜行動しているスミオでしたが、ある日謎のエニグマ・マークを目にし、その直後には予知通りに母親が消失。

 母親を探し出すことを誓うスミオ。しかしその日の夜、幼なじみの女子高生・来宮しげるを含む生徒6人と共に、なぜか出口が封鎖された校舎で目覚め、エニグマによって脱出ゲーム・e-testに参加させられることに.....。


 というわけで、ジャンプでは珍しいサスペンス物となっています。

 第1話の段階で明らかなサスペンス的展開だった作品としては、2007年12月スタートの「PSYREN-サイレン-」(岩代俊明)以来約3年ぶりで、その「サイレン」はすぐに異世界に行ってしまったため、現代の日本を中心としたサスペンスでいうと、2003年12月スタートの「DEATH NOTE」(大場つぐみ・小畑健)以来約7年ぶりとなるのではないでしょうか。

 その「DEATH NOTE」の原作&作画コンビによる「バクマン。」の作中に出てきそうなタイプの作品でもあるので、「バクマン。」の作中作に対して“実際に読んでみたいな~”と思っていた読者に向けてかなりのアピールとなりそうですね。

 そしてストーリー展開としましては、前半では主人公の能力が絡んだ日常場面から、エニグマとの初接触、そして母親の失踪まで流れるように進んでいって、後半では主人公を含む7人が突如校舎内で目覚め、エニグマに課せられたe-testが開始されたところで第1話終了。

 といった感じで、第1話内でも興味を引き立て続け、第2話への期待感をも高める終わり方だったので、新連載第1話としては読者の心を上手く掴めたのではないでしょうか。

 あとは、第2話以降にも興味を湧かせる展開を見せられるかどうかが重要となってくるわけですが、最近の新連載がことごとく短期打ち切りになっている(=既存の連載作品がいずれも固定ファンを掴み打ち切られにくくなっている)ので、数年後にも“あの場面は凄かったな~”と語られるようなインパクトある展開や衝撃を4~5話くらいまでに出しておきたいところですね。

 それに、設定や演出・展開・キャラクター等が「未来日記」「ペルソナ」などの同系先行作品と似ていたり、主人公の決め台詞である「メーデー(緊急事態)」やそれを説明する部分がB'zの『Mayday!』の歌詞そのままだったりと、パクリ的な指摘もされているようなので、第2話以降ではオリジナルの面白さをドカンと出して、“ジャンプのサスペンス漫画”として成功してくれると嬉しいものです。


  

  投票受付期間:2010.9.13~9.20


  

  投票受付期間:2010.9.18~10.2

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 【「榊健滋」関連記事】

  > ジャンプNEXT! 2012AUTUMN(「楽園条例」) (10.10.9)

  > 週刊少年ジャンプ新連載! 「әnígmә【エニグマ】」 榊健滋 (10.9.13)
  > <JC1巻買い> 「әnígmә【エニグマ】」 榊健滋 (11.1.2)


 【「2010年の新連載」関連記事】

  > 「LIGHT WING」 神海英雄 (10.9.18)
  > 「әnígmә【エニグマ】」 榊健滋 (10.9.13)

  > 「逢魔ヶ刻動物園」 堀越耕平 (10.7.12)
  > 「SWOT」 杉田尚 (10.7.5)

  > 「少年疾駆」 附田祐斗 (10.5.24)
  > 「メタリカメタルカ」 水野輝昭 (10.5.17)

  > 「詭弁学派、四ツ谷先輩の怪談。」 古舘春一 (10.3.1)
  > 「LOCK ON!」 土田健太 (10.2.22)


 その他のジャンプ作品の当ブログ記事は、こちらからどうぞ!
               ↓↓↓
 >>> 「週刊少年ジャンプ」関連記事リスト <<<

2010年9月12日 (日)

『シューマンの指』 奥泉光 > 「このミス」完全読破 No.358

「このミステリーがすごい!」完全読破 No.358

 『シューマンの指』 奥泉光

   「このミス」2011年版 : 5位

   受賞(候補) :

   総合ランキング :

   年度ランキング : 「キノベス」 3位
              「週刊文春ミステリーベスト10」 5位
              「本屋大賞」 5位
              「ミステリが読みたい!」 8位
              「本格ミステリ・ベスト10」 30位

   読始:2010.8.25 ~ 読終:2010.8.26

   読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"前"

   読んだ版 : 単行本 <2010年7月>

シューマンの指 (講談社文庫)シューマンの指 (講談社文庫)
奥泉 光

講談社 2012-10-16
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 クラシック音楽、特にタイトルからもわかるようにシューマンを題材とした作品です。

 ちなみに、今年はシューマン生誕200年で、本作は講談社創業100周年書き下ろしの1冊ということで、100年周期記念が2つも込められているのですね。

 自分は奥泉作品を読んだのは昨年のNo.208「神器 軍艦「橿原」殺人事件」以来2冊目なのですが、“戦記物-クラシック音楽物”と全く違うジャンルなのに、その幻想的な作品世界から似たような雰囲気が感じられたのには驚きました。

 とにかく本作は音楽に関する描写が幻想的であり奇想的でありまして、奏でられる音楽を文章で表現しているというよりは、奏でられる音楽からイメージされる情景や感情を文章で表しているようで、その表現力はさすがでしたね。

 ただそれゆえに、こういった文章が苦手な方は、早い段階で読むのが辛くなってしまうかもしれませんが.....。

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 そしてこの作品は単なるクラシック音楽小説というわけではなくて、青春物語という側面もありつつ、実は壮大なるミステリ作品でもあるのですねェ。

 物語の冒頭にはタイトルにも掛けられた魅力的な謎が提示されるのですが、それはひとまず脇に置かれた形でクラシック音楽青春ストーリーが繰り広げられていきます。

 それが物語も中盤を過ぎる頃には、クラシック音楽の幻想性に包まれつつ本格ミステリ的展開を見せていって、最後には真相と驚愕の波が怒涛の如く押し寄せてくるのですから。

 これがそれまで語られてきたクラシック音楽論・主人公の青春物語・シューマンの生き様などと見事なまでに結びついているし、そういった物語を読み抜けてきた上でのこのラストには、心も体も翻弄され圧倒されること間違いなしでしょうね。

 まあ個人的には、さらにとんでもなく幻惑的で混迷的でわけがわからないような驚愕のラストか、はたまた全く驚きのないまま終わった方が、自分好みだったようにも思いました。


  > 個人的評価 : ★★★★☆ ☆☆☆☆☆


   本格ミステリ度 : ★★★       鬼畜グログロ度 : ★
   ビックリ驚愕度 : ★★★★      おどろおどろ度 : ★★
   熱アクション度 : ★★        主キャラ魅力度 : ★★★
   恋愛ラブラブ度 : ★★★       人間味ドラマ度 : ★★★
   下ネタエッチ度 : ★★        感涙ウルウル度 : ★★
   衝撃バカミス度 : ★★★       気軽に読める度 : ★★★

  * <個人的評価&項目別評価>の説明はこちら!


  【 “奥泉光” 関連記事 】

  > No.766 「東京自叙伝」
  > No.610 「虫樹音楽集」

  > No.585 「黄色い水着の謎 桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活2」
  > No.477 「桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活」
  > No.475 「モーダルな事象 桑潟幸一助教授のスタイリッシュな生活」
  > No.358 「シューマンの指」
  > No.208 「神器 軍艦「橿原」殺人事件」


 「写楽 閉じた国の幻」島田荘司 <<< PREV/NEXT >>> 「100人館の殺人」山口芳宏

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  >>> 「このミス」完全読破 説明&読破本リスト <<<

2010年9月10日 (金)

『写楽 閉じた国の幻』 島田荘司 > 「このミス」完全読破 No.357

「このミステリーがすごい!」完全読破 No.357

 『写楽 閉じた国の幻』 島田荘司

   「このミス」2011年版 : 2位

   受賞(候補) : (「本格ミステリ大賞」候補)

   総合ランキング :

   年度ランキング : 「ミステリが読みたい!」 3位
              「週刊文春ミステリーベスト10」 6位
              「本格ミステリ・ベスト10」 7位
              「黄金の本格ミステリー」 選出

   読始:2010.8.17 ~ 読終:2010.8.25

   読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"前"

   読んだ版 : 単行本 <2010年6月>

写楽 閉じた国の幻(上) (新潮文庫)写楽 閉じた国の幻(上) (新潮文庫)
島田 荘司

新潮社 2013-01-28
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 島田荘司は、現実に起きた事件や謎を題材に、独自の解釈を提示することでミステリ小説として仕上げた作品を数多く発表しています。

 そして本作は、タイトルからもわかるように、江戸時代の浮世絵師・東洲斎写楽に関する謎を題材としているのです。

 この写楽というのは、名前だけなら誰でも聞いたことがあると思うのですが、実はその正体に関してはかなり謎に包まれている人物なのですね。

 そんな写楽の真相に、現代の主人公が迫っていくわけです。

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 この主人公には、様々な不幸が雪崩のように襲ってくるのですが、そんな中で巡り合った人物をキッカケにして、写楽の謎を追及していくことになります。

 その過程で、写楽の一体何が謎なのか?どうしてこれまで謎が解明されていないのか?など、写楽に関する謎について読者にも詳しすぎるほどに説明してくれるのですが、これがまたボリュームも凄いし専門的な話になるので、小説というよりもノンフィクションを読んでいるようにも感じてしまいました。

 ただ、それを踏まえた上で明かされる真相というのがホントに衝撃的だし、全く関係ないかに思えていたところにも伏線が張られていたこともわかりますからね(ただそれ故に自分としては珍しく早い段階に気づいてしまったわけですが.....)。

 そして、その現代編の合間に江戸編が少し挟まっているのですが、これがまた面白くて、こちらをメインで読みたいな~と思ってしまったほどでした。

 ただ、これはあとがきで作者自身が言っていることなどですが、700ページ近い大作であるにもかかわらず、特に現代編の話など中途半端なまま終わってしまっているので、完成された作品といった感じではないのです。

 なので、「写楽 閉じた国の幻Ⅱ」の発売はホントに実現してほしいし、今から楽しみですね。

 あと、作者の制作過程がまるで主人公の生き写しのようで面白いあとがき(後日追記:単行本版のことです)も読み応え満点なのですが、写楽の真相についても言及しているので、本編を読む前に目にしないようにご注意を。


  > 個人的評価 : ★★★★☆ ☆☆☆☆☆


   本格ミステリ度 : ★★★★     鬼畜グログロ度 : ★★
   ビックリ驚愕度 : ★★★★      おどろおどろ度 : ★★★
   熱アクション度 : ★★        主キャラ魅力度 : ★★★
   恋愛ラブラブ度 : ★★         人間味ドラマ度 : ★★★
   下ネタエッチ度 : ★★        感涙ウルウル度 : ★★
   衝撃バカミス度 : ★★★       気軽に読める度 : ★★

  * <個人的評価&項目別評価>の説明はこちら!


  【 “島田荘司” 関連記事 】

  > No.707 「星籠の海」
  > No.588 「アルカトラズ幻想」

  > No.461 「進々堂世界一周 追憶のカシュガル」
  > No.420 「奇想、天を動かす」
  > No.357 「写楽 閉じた国の幻」
  > No.276 「切り裂きジャック・百年の孤独」
  > No.273 「異邦の騎士」


 「小暮写眞館」宮部みゆき <<< PREV/NEXT >>> 「シューマンの指」奥泉光

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  >>> 「このミス」完全読破 説明&読破本リスト <<<

2010年9月 7日 (火)

『小暮写眞館』 宮部みゆき > 「このミス」完全読破 No.356

「このミステリーがすごい!」完全読破 No.356

 『小暮写眞館』 宮部みゆき

   「このミス」2011年版 : 8位

   受賞(候補) :

   総合ランキング :

   年度ランキング : 「AXNミステリー 闘うベストテン」 5位
              「週刊文春ミステリーベスト10」 7位
              「ミステリが読みたい!」 17位

   読始:2010.8.11 ~ 読終:2010.8.15

   読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"前"

   読んだ版 : 単行本 <2010年5月>

小暮写眞館I (新潮文庫nex)小暮写眞館I (新潮文庫nex)
宮部 みゆき

新潮社 2016-12-23
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 宮部みゆきの3年ぶりとなる現代エンターテイメント作品です。

 主人公(高校生男子)一家が引っ越してきたのは、かつては歴史ある写真館だった家で、変わり者の両親は、外観をそのままに(看板も外さないまま)移り住むことに。

 そのために、旧写真館時代に関わるある奇妙な物が持ち込まれてしまうのですが、それをキッカケに主人公は、その奇妙な謎について調べていくことになります。

 というわけで、宮部みゆきお得意の“青春素人探偵ミステリ”ですね。

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 ただ、そういったミステリ的な展開が軸にあるものの、物語としては人間ドラマの方により重きが置かれている感じです。

 この一家やそこに絡んでくる人々というのは、どこかほのぼのとした雰囲気があって、読んでいて心地良いような温かさを感じる家族ドラマ・青春ドラマ・恋愛ドラマが展開されていきます。

 ただ、ほのぼのとした中にもそれぞれが心に抱えている闇のようなものがあるので、その部分が次第に表に出てくるにつれて、強烈なインパクトや壮絶な衝撃というタイプではないものの、各ドラマにとても深く胸に響いてくる味わいが生み出されていくのです。

 特に恋愛ドラマが、別に恋愛らしい恋愛というわけでもないし、話の中ではそれほど重要ではない感じだったのに、最後まで読めばこの作品の核であったことがわかるぐらいに、とても切なくて心に残るドラマとなっているのですね。

 “青春素人探偵ミステリ”部分をメインにするのであればもっと短くまとまっていたとは思うのですが、ただ人間ドラマの方をメインに据えて、ミステリ的な部分はあくまで人間ドラマを引き立たせる演出にしたことで、700ページを越えるほどのボリュームとなったのではないでしょうか。

 なので、この人間ドラマの部分を楽しめるかどうかで、この本の厚さに対する感覚も変わってくるのではないですかね。


  > 個人的評価 : ★★★★★ ★★☆☆☆


   本格ミステリ度 : ★★★       鬼畜グログロ度 : ★★
   ビックリ驚愕度 : ★★         おどろおどろ度 : ★★★
   熱アクション度 : ★★        主キャラ魅力度 : ★★★★
   恋愛ラブラブ度 : ★★★★      人間味ドラマ度 : ★★★★★
   下ネタエッチ度 : ★★        感涙ウルウル度 : ★★★★
   衝撃バカミス度 : ★★        気軽に読める度 : ★★

  * <個人的評価&項目別評価>の説明はこちら!


  【 “宮部みゆき” 関連記事 】

  > No.715 「ペテロの葬列」

  > No.638 「桜ほうさら」
  > No.589 「ソロモンの偽証」
  > No.500 「魔術はささやく」
  > No.356 「小暮写眞館」
  > No.174 「英雄の書」

  > No.100 「火車」
  > No.083 「名もなき毒」
  > No.077 「誰か」
  > No.035 「龍は眠る」
  > No.001 「模倣犯」


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  >>> 「このミス」完全読破 説明&読破本リスト <<<

2010年9月 5日 (日)

「このミス2011年版」月別ランクイン候補作品(2010年9月)

 昨年(2010年版)から始めたこの“月別ランクイン候補作品”ですが、「このミステリーがすごい!2011年版」対象作品についても引き続き実施していこうと思います。

 この“月別ランクイン候補作品”とは、自分は日頃から“どんな作品が「このミス」にランクインしそうかな?”と色々とチェックしているので、どうせならそれを発売された月別にまとめてしまおう!ということで始めた企画です。

 ここでは、とりあえず「このミス」の対象になりそうな作品をピックアップして、“作者の過去実績”や“なんとなくの前評判”を元に、推測されるランクインの可能性ごとに3段階に分けて並べています。

 ちなみに、これを書いている時点では作品をまだ読んでいない状況になると思うので、この3段階の分類は、作品を読んだ上で決めたものではありませんので、その点ご了承ください。

 なお、読んだ上でのランクイン予想に関しましては、「このミス2011年版」下半期のランクイン作品予想の方をご覧ください。 

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 >> 2010年9月発売の最有力候補っぽい作品 <<


 【 隻眼の少女 / 麻耶雄嵩 】

 

隻眼の少女隻眼の少女
麻耶 雄嵩

文藝春秋 2010-09
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  > 寒村でおきた殺人事件の犯人と疑われた
  > 大学生・静馬を救った隻眼の少女探偵・みかげ。
  > 事件は解決したが、18年後に再び悪夢が…


 No.38「神様ゲーム」以来5年ぶりとなる長編作品です。

 カルト的な人気を誇る寡作作家の待望の新作長編ですし、何年にも渡って発売が示唆されながらも延び延びとなっていた作品なので、発売されればそれだけでもうランクインは間違いないでしょう.....(たぶん)。


 [ この作品の当ブログ感想記事はこちら!! ]
              >> No.373 『隻眼の少女』 麻耶雄嵩


 【 「このミス」20位以内ランクイン実績 】
   * タイトル部分のリンク先は、当ブログの感想ページです

   > 「翼ある闇」  1992年版 12位
   > 「夏と冬の奏鳴曲」  1994年版 17位
   > 「鴉」  1998年版 16位
   > 「木製の王子」  2001年版 12位
   > 「螢」  2005年版 11位
   > 「神様ゲーム」  2006年版 5位 

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 【 セカンド・ラブ / 乾くるみ 】

 

セカンド・ラブセカンド・ラブ
乾 くるみ

文藝春秋 2010-09
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  > 1983年元旦、僕は春香と出会う。
  > 僕たちは幸せだった。
  > 春香とそっくりな女・美奈子が現れるまでは。
  > 衝撃の恋愛ミステリー再び


 乾くるみといえば、ラストに訪れる驚愕の大どんでん返しが評判となり大ヒットしたNo.68「イニシエーション・ラブ」が代名詞といえるでしょう。

 そして本作は、その「イニシエーション・ラブ」に続く“驚愕の恋愛ミステリー第2弾”ということなので、第1弾に劣らずの衝撃が待ち構えているのであれば、ランクインの可能性も高いのではないでしょうか。


 [ この作品の当ブログ感想記事はこちら!! ]
              >> No.374 『セカンド・ラブ』 乾くるみ


 【 「このミス」20位以内ランクイン実績 】
   * タイトル部分のリンク先は、当ブログの感想ページです

   > 「イニシエーション・ラブ」  2005年版 12位

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 >> 2010年9月発売の有力候補っぽい作品 <<

 * 作品名部分のリンク先は、「Amazon」の詳細ページです
 * 作者名横のカッコ内は、過去の「このミス」20位以内ランクイン作品数


   カウントダウン / 佐々木譲 (9作)
   マリアビートル / 伊坂幸太郎 (8作)  <感想記事はこちら>
   キッド・ピストルズの醜態 / 山口雅也 (8作)
   百発百中 / 司城志朗 矢作俊彦 (1作)  <感想記事はこちら>

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 >> 2010年9月発売の候補っぽい作品 <<

 * 作品名部分のリンク先は、「Amazon」の詳細ページです
 * 作者名横のカッコ内は、過去の「このミス」20位以内ランクイン作品数


   暗殺者の森 / 逢坂剛 (10作)
   ブルー・ゴールド / 真保裕一 (8作)  <感想記事はこちら>
   月と蟹 / 道尾秀介 (7作)  <感想記事はこちら>
   熱 愛 / 香納諒一 (5作)  <感想記事はこちら>
   烈日 東京湾臨海署安積班 / 今野敏 (4作)
   エウスカディ / 馳星周 (4作)
   優しいおとな / 桐野夏生 (3作)
   マンチュリアン・リポート / 浅田次郎 (2作)
   災 園 / 三津田信三 (2作)
   なぎなた / 倉知淳 (2作)
   こめぐら / 倉知淳 (2作)
   魔界探偵 冥王星O デッドドールのダブルD / 舞城王太郎 (2作)
   ノン+フィクション / 古川日出男 (2作)
   単独行者 新・加藤文太郎伝 / 谷甲州 (2作)
   往復書簡 / 湊かなえ (1作)
   ハイ・アラート / 福田和代 (1作)
   黒と愛 / 飛鳥部勝則 (1作)  <感想記事はこちら>
   砂漠の悪魔 / 近藤史恵 (1作)
   琉璃玉の耳輪 / 津原泰水 (1作)・尾崎翠  <感想記事はこちら>
   明日の風 / 梁石日 (1作)
   嘘つき王国の豚姫 / 岩井志麻子 (1作)
   謎解きはディナーのあとで / 東川篤哉
   新世界崩壊 / 倉阪鬼一郎  <感想記事はこちら>
   エンドレス・ガーデン / 片理誠
   サニーサイド・スーサイド / 北國浩二
   ダブル / 深町秋生
   ジークフリートの剣 / 深水黎一郎
   抱 影 / 北方謙三
   四月の橋 / 小島正樹
   見当たり捜査官 / 戸梶圭太
   W(ダブル) / 本城雅人
   お台場アイランドベイビー / 伊与原新
   女騎手 / 蓮見恭子
   脱出迷路 / 上甲宣之
   告解者 / 大門剛明
   背表紙は歌う / 大崎梢
   竜が最後に帰る場所 / 恒川光太郎
   潜行捜査 一対一〇〇 / 安東能明
   硝子の葦 / 桜木紫乃
   壱里島奇譚 / 梶尾真治
   共 謀 / 大村友貴美
   死の犬 / 三咲光郎
   キッド / 木内一裕
   ガラスの煉獄 女刑務官あかね / 壇上志保
   神隠し / 翔田寛
   ゴッホ死す / 小林利延
   交番の夜 / 名取佐和子
   完全・犯罪 / 小林泰三
   暗号名『鳩よ、翔びたて』 / 井上卓也
   僕のエア / 滝本竜彦
   さくらの丘で / 小路幸也

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  「このミス2011年版」月別ランクイン候補作品(2010年8月) <<<

  >>> 「このミス2011年版」月別ランクイン候補作品(2010年10月)


 「月別ランクイン候補作品」の一覧は、「このミス」完全読破 読破本リストにてご覧ください。

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  >>> 「このミス」完全読破 説明&読破本リスト <<<

2010年9月 2日 (木)

『闇の喇叭』 有栖川有栖 > 「このミス」完全読破 No.355

「このミステリーがすごい!」完全読破 No.355

 『闇の喇叭』 有栖川有栖

   「このミス」2011年版 : 147位

   受賞(候補) :

   総合ランキング :

   年度ランキング : 「本格ミステリ・ベスト10」 15位
              「週刊文春ミステリーベスト10」 17位

   読始:2010.8.9 ~ 読終:2010.8.10

   読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"前"

   読んだ版 : 単行本 <2010年6月>

闇の喇叭 (講談社文庫)闇の喇叭 (講談社文庫)
有栖川 有栖

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 有栖川有栖といえば、“学生アリス”や“作家アリス”などのシリーズものが人気ですが、本作はノンシリーズものと(今のところは)なっています。

 舞台は現代の日本、なのですが、太平洋戦争末期に史実とは違った出来事が起きたことをキッカケにして、現実世界とは少し違った姿に成長した、パラレル日本が舞台なのです。

 この作中の日本では、北海道がおかしなことになっていたり、ある制度が残っていたり、使用する言葉も制限があったりするのですが、この設定によって、現代日本に対する社会風刺が効いていたりもしますね。

 そしてそんな日本において、主人公を含めた高校生3人が活躍する、ミステリーYA!らしい青春ミステリでもあるのです。

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 ただやはり本格ミステリとして読むならば、一番影響のあるこの世界ならではの設定は、“探偵行為が法律により禁止されている”ということでしょう。

 “探偵が禁止された世界”において謎の殺人事件が起きることで、物語はより謎を深め、“探偵”という職業的存在が自然とクローズアップされていくのです。

 ただ、この設定が最大限に活かされていた、といった感じでもないのですよね。

 というのも、この設定が最大限に活かされた展開がこれから始まるか?と感じさせられるところで話が終わってしまうからなのです。

 なので序章を読み終えたような感覚で、作者自身もあとがきでそのようなことを書いているのですが、ただ続編があるのか(発表するのか)をはっきりとは書いていないので、ホントに序章だったのか、序章的な作品として完結したのかは、ちょっとわからないですね.....。

 ただもし続編が出たのならば、この1作目を下地としてとんでもなく面白くなるだろうことは本作を読めば想像出来るので、もちろんこの作品単体でもかなり楽しめるものの、発売が期待される続編に向けて今のうちに読んでおくべきだとも思いますね。

[後日追記]
 本作は、元々は理論社の叢書“ミステリーYA!”から発売されたのですが、その約3ヶ月後に理論社が民事再生法の適用を申請(いわゆる倒産)したため、翌年(2011年)に講談社から続編のNo.503「真夜中の探偵」と共に本作の再発版も発売されました。


  > 個人的評価 : ★★★★☆ ☆☆☆☆☆


   本格ミステリ度 : ★★★★★    鬼畜グログロ度 : ★★
   ビックリ驚愕度 : ★★         おどろおどろ度 : ★★★
   熱アクション度 : ★★        主キャラ魅力度 : ★★★
   恋愛ラブラブ度 : ★★★       人間味ドラマ度 : ★★★
   下ネタエッチ度 : ★★        感涙ウルウル度 : ★★
   衝撃バカミス度 : ★★★       気軽に読める度 : ★★★

  * <個人的評価&項目別評価>の説明はこちら!


  【 “有栖川有栖” 関連記事 】

  > No.959 「狩人の悪夢」
  > No.853 「鍵の掛かった男」

  > No.727 「江神二郎の洞察」
  > No.677 「論理爆弾」
  > No.503 「真夜中の探偵」
  > No.422 「長い廊下がある家」
  > No.355 「闇の喇叭」

  > No.216 「赤い月、廃駅の上に」
  > No.093 「女王国の城」
  > No.081 「双頭の悪魔」
  > No.067 「孤島パズル」
  > No.061 「月光ゲーム」


 「死ねばいいのに」京極夏彦 <<< PREV/NEXT >>> 「小暮写眞館」宮部みゆき

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  >>> 「このミス」完全読破 説明&読破本リスト <<<

2010年9月 1日 (水)

『死ねばいいのに』 京極夏彦 > 「このミス」完全読破 No.354

「このミステリーがすごい!」完全読破 No.354

 『死ねばいいのに』 京極夏彦

   「このミス」2011年版 : 12位

   受賞(候補) :

   総合ランキング :

   年度ランキング : 「週刊文春ミステリーベスト10」 9位
              「ミステリが読みたい!」 19位

   読始:2010.8.9 ~ 読終:2010.8.9

   読んだ時期 : 「このミス」ランキング発表"前"

   読んだ版 : 単行本 <2010年5月>

文庫版 死ねばいいのに (講談社文庫)文庫版 死ねばいいのに (講談社文庫)
京極 夏彦

講談社 2012-11-15
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 まあとにかくなんといっても、このとんでもないタイトルですよね。

 あまりに衝撃的なタイトルなため、どうやら広告を拒否されたりもしたそうですからねェ.....。

 それでこういったインパクトあるタイトルの作品の場合、内容はそれほどでもなくて名前負けしていることが多そうなので、あまり期待せずに読んだのですが、まあ内容の方もかなり衝撃的なものでして、名前負けなど全く感じないほどの問題作でした。

 ただやっぱり、タイトルを見ただけではどんな内容なのかわからないだろうし、こんなタイトルの小説の中身は一体どんなものなのか?といったドキドキ感と共に読んだ方が絶対に楽しめると思います。

 なので、これから読んでみようと考えている方は、この記事のこれより下、および他サイトや雑誌などにおける書評・感想・あらすじなどを目にせずに、まずはこの作品自体を読んでしまった方が良いでしょうね。

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 そんなわけでここからは、ネタバレとまではいきませんが、内容の方にもほんのちょっとだけ触れてみたいと思います。

 謎の男が、ある殺人事件の被害者女性と関わりがあった人々の元を訪ね、女性のことについて一人一人聞いてまわることから、連作集的な構成でもありますね。

 この謎の男というのは、無教養で無愛想で無礼なため、訪問される側の人間は自然と上から目線で応対するわけですが、それが会話が進んでいくにつれていつの間にか立場が逆転し、訪問される側の人間の負の本性・醜い感情がさらけ出されていくところが、鮮やかなほどに切れ味鋭いのです。

 そこの場面なんかはまさに「笑ゥせぇるすまん」のごとしで、“ドーン!!!!”と同じような効果のある決め台詞には、読んでいる自分までもが心を刃で貫かれるかのようでしたから.....。

 そう、出てくるのは確かに読んでいて嫌悪してしまう部分を持つ人々なのですが、ただこれだけ強調されると醜く見えるものの、普通の人が普通に抱えているようなレベルのものなので、自分の所にもしこの主人公が訪ねて来たら.....と考えると、やっぱり例の決め台詞を言われてしまうと思うのですよねェ。

 そんな考えさせられてしまうような内容で、なかなか難解なテーマとなってはいるものの、切り口はとてもシンプルで読み進めやすいですし、主人公が関係者に会っていくごとに事件の様相が明らかになっていくというミステリ的な展開もあるので、このタイトルにビビビッときたなら迷わず読むべきでしょう。

 ただやはり本作は“問題作”と言ってよいと思うので、好き嫌いははっきりと別れるでしょうけどね。


  > 個人的評価 : ★★★★★ ★★☆☆☆


   本格ミステリ度 : ★★★       鬼畜グログロ度 : ★★★
   ビックリ驚愕度 : ★★         おどろおどろ度 : ★★★★
   熱アクション度 : ★★        主キャラ魅力度 : ★★★★
   恋愛ラブラブ度 : ★★★       人間味ドラマ度 : ★★★★
   下ネタエッチ度 : ★★★      感涙ウルウル度 : ★★
   衝撃バカミス度 : ★★★       気軽に読める度 : ★★★

  * <個人的評価&項目別評価>の説明はこちら!


  【 “京極夏彦” 関連記事 】

  > No.716 「書楼弔堂 破暁」
  > No.354 「死ねばいいのに」
  > No.300 「数えずの井戸」
  > No.094 「魍魎の匣」
  > No.066 「姑獲獲の夏」


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  >>> 「このミス」完全読破 説明&読破本リスト <<<

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