『光媒の花』 道尾秀介 > 「このミス」完全読破 No.311
「このミステリーがすごい!」完全読破 No.311
『光媒の花』 道尾秀介
「このミス」2011年版 : 22位
受賞(候補) : 「山本周五郎賞」受賞
(「直木三十五賞」候補)
総合ランキング :
年度ランキング : 「ミステリが読みたい!」 15位
「週刊文春ミステリーベスト10」 16位
読始:2010.4.2 ~ 読終:2010.4.4
読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"前"
読んだ版 : 単行本 <2010年3月>
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道尾秀介といえば、終盤でそれまでの世界観が反転するようなどんでん返しが炸裂するという、読者を騙すようなトリックが仕掛けられた作品を書く作家である、という感じですっかり定着しているのではないかと思います。
ただ、前作のNo.294「球体の蛇」は、作者自身が「ミステリーではない」と言うほどに、それまでとは明らかに方向性の違う作風の作品だったのです。簡単に言えば“文学的”といった感じでしょうか。
そして本作も、作風的にはこれまでの作品よりも「球体の蛇」に近いタイプと言えるでしょうね。
なので、過去の作品のような“どんでん返し”を楽しみにしている方なんかは、「球体の蛇」も本作も期待外れな内容と感じてしまうかもしれませんが、それでも両作共にミステリ作品としても素晴らしい内容であると自分は感じましたね。
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本作は6つの短編が収録されているのですが、話自体は別物であるものの、前の話に登場した人物が次の話では語り手になって.....、といった形で繋がっていきます。
そしてこれら6つの話全体を傍観する存在があることから、短編集に近い形の連作集、といった感じでしょうか。
とても哀しい物語ばかりなので、読んでいてとても切なくなり、心の涙を流し続けているような気持ちになりました。
ただ、そんな哀しい物語の中には優しさに包まれた希望が静かに満ち溢れているので、様々な感情がしんみりと自分の心に染み込んでくるかのようでした。
ミステリ的には、各話によってその比重が違うのですが、最もミステリ度が高い話でも、あくまで物語を引き立たせるためのスパイスとして使われているくらいなものでしょうか。
だからといってミステリ作品として物足りないというわけではなくて、過去の道尾作品とはミステリの方向性が変わっただけなのだと思うのですよね。
これまでの作品は、物語の中にミステリ的な仕掛けを紛れ込ませることで、読者に騙しの効果を与えて終盤でアッと驚かせるどんでん返しに繋がっていました。
一方で本作や「球体の蛇」は、物語の中にミステリ的な仕掛けを紛れ込ませることで、物語の中に込められたドラマ性やテーマを効果的に浮かび上がらせる役割を果たしていたように思います。
前者の方が、ベクトルが読者に直接向けられていることもあり、その効果がはっきりとした形で表れるわけですが、でもわかりにくいとはいえ後者における巧みな技の方が、自分としてはずっしりと心に響くほどの衝撃を受けましたし、むしろこちらの作風の方が好きなのかもしれませんねェ。
> 個人的評価 : ★★★★★ ★★★☆☆
本格ミステリ度 : ★★★ 鬼畜グログロ度 : ★★
ビックリ驚愕度 : ★★ おどろおどろ度 : ★★
熱アクション度 : ★★ 主キャラ魅力度 : ★★★
恋愛ラブラブ度 : ★★★ 人間味ドラマ度 : ★★★★★
下ネタエッチ度 : ★★★★ 感涙ウルウル度 : ★★★★
衝撃バカミス度 : ★★ 気軽に読める度 : ★★★★
* <個人的評価&項目別評価>の説明はこちら!
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