『風の時/狼の時』 天城一 > 「このミス」完全読破 No.187
「このミステリーがすごい!」完全読破 No.187
『風の時/狼の時』 天城一
「このミス」2010年版 : 75位
受賞(候補) :
総合ランキング :
年度ランキング :
読始:2009.5.25 ~ 読終:2009.6.3
読んだ時期 : 「このミス」ランキング発表"前"
読んだ版 : 単行本 <2009年4月>
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「天城一の密室犯罪学教程」、「島崎警部のアリバイ事件簿」、「宿命は待つことが出来る」に続く、天城一傑作集の第4弾にして最終刊です。
そして、前作と今作の間に作者が亡くなったこともあり、追悼出版でもあります。
内容の方は、「風の時/狼の時」「沈める濤」の2本の長編に加え、ほぼ1ページのみの超短編も含めた12本の短編、そして巻末には自作解説、山沢晴雄による寄稿、日下三蔵による編者解題が収められています。
長編が2本というところからもわかるように、この最終刊は、前3作よりも値段もボリュームも格段にアップしていますね。
それでホントは、前3作が全て「このミス」にランクインしていることからも、続き物ではないとはいえシリーズ第1作から順に読んでいこうと思っていましたが、新作が発売されたとなったら順番を守っている場合ではないので、いきなり今作から読むことにしました。
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まず第1部は、長編の「風の時/狼の時」。この作品は、1955年に発表された「圷家殺人事件」(「このミス」2004年版で12位にランクインした「「密室」傑作選」に収録)を大幅に改稿したものです。
太平洋戦争前の時代が舞台となっているのですが、途中で語られる西洋の軍事関連の逸話が大変難しく、一生懸命に字面を追っても全く頭に入ってこないほどだったので、これにはホントに苦労しました.....。
なので、ミステリとしての本筋の部分もなかなか難解だったのに、そういった逸話の方の難解さに比べたらまだ理解できるものだったので、ミステリ部分をそう難しく感じることなく読めたのは良かったのかも。
第2部は、長編の「沈める濤」。この作品は、「島崎警部の~」に収録の「特急<<あおば>>」の長編化作品です。
なお、この長編と短編「感傷的対話」と評論「クィーンのテンペスト」の3部構成(この3作に繋がりはなし)で作られた私家版「沈める濤」がそのまま収録されています。
こちらの話も戦時中の逸話が多く出てきますが、ただ日本における話がほとんどだったこともあってか、「風の時/狼の時」よりも理解し楽しむことができました。
ミステリ部分も、表現などが難しかったことは難しかったですが、でもその難解さを楽しむことが出来ましたからね。それに「風の時/狼の時」もこの作品も、いまいちよく理解していなくても、“読み切った!!”という読後感を強引に押しつけられるような有無を言わせぬパワーがあるので、全てを理解していないというモヤモヤ感などはありませんでした。
第3部は、短編12作品。収録作は、「奇蹟の犯罪(初稿版)」「メチール時代の一神話-あの世のどこかで」「誤算」「三つの扉」「神の言葉」「噂はそよ風のように」「朧月夜」「失われたアリバイ/時計塔」「埋葬」「失われた秘薬」「失われた秘宝」「失われた秘報」。
いずれも戦中・戦後が舞台で、ミステリ部分も含めてやはり長編同様に難解でしたが、短編ならではの鋭さや鮮やかさを楽しむことができました。
それに、長編2作もそうですが、この短編集にもシリーズ前3作に収録されている作品の改稿版がいくつもあるので、前3作を読む時の楽しみが出来たのも嬉しいですね。
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> 個人的評価 : ★★★★☆ ☆☆☆☆☆
本格ミステリ度 : ★★★★★ 鬼畜グログロ度 : ★★
ビックリ驚愕度 : ★★★ おどろおどろ度 : ★★★
熱アクション度 : ★★ 主キャラ魅力度 : ★★★★
恋愛ラブラブ度 : ★★★ 人間味ドラマ度 : ★★
下ネタエッチ度 : ★★ 感涙ウルウル度 : ★★
衝撃バカミス度 : ★★★ 気軽に読める度 : ★
* <個人的評価&項目別評価>の説明はこちら!
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