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2009年3月

2009年3月18日 (水)

『ジョーカー・ゲーム』 柳広司 > 「このミス」完全読破 No.162

「このミステリーがすごい!」完全読破 No.162

 『ジョーカー・ゲーム』 柳広司

   「このミス」2009年版 : 2位

   受賞(候補) : 「日本推理作家協会賞」受賞
            「吉川英治文学新人賞」受賞
            (「大藪春彦賞」候補)

   総合ランキング : 「2001-2010新世紀「本格短編」ミステリオールベスト」
                 20位作品 『ジョーカー・ゲーム』 収録
               「時代小説短編オールタイムベスト」
                 52位作品 『XX』 収録

   年度ランキング : 「週刊文春ミステリーベスト10」 3位
               「本屋大賞」 3位
               「ミステリが読みたい!」 8位
               「闘うベストテン」 8位
               「本格ミステリ・ベスト10」 12位

   読始:2009.2.23 ~ 読終:2009.2.25

   読んだ時期 : 「このミス」ランキング発表"後"

   読んだ版 : 単行本 <2008年8月>

ジョーカー・ゲーム (角川文庫)ジョーカー・ゲーム (角川文庫)
柳 広司

角川書店(角川グループパブリッシング) 2011-06-23
売り上げランキング : 16523

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 この「ジョーカー・ゲーム」は、個人的にとても因縁深い作品なのですよね.....。

 というのも、「このミス」2009年版ではランキング発表前に対象作品を何冊か読んでいまして、ランクイン作品を事前に全て読んでしまうくらいの意気込みでいたのですが、「このミス」2位を始め各ランキングで上位に入ったこの作品を、読んでいないばかりかチェックすらもしていなかったのです.....(この話の詳しいことは「「このミス2009年版」対象作品を事前に読んでしまおう!<反省会>」で)。

 なので、この本を目にするたびに自分の痛恨の失態を思い出し、胸中穏やかでなくなってしまうのですが、でもそのおかげで「月別ランクイン候補作品予想」という企画を思い付くことが出来たわけですから、結果オーライなのですけどね。

 そんなわけで、作品の中身以外の面でとても思い出深い作品となったのでした。

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 それで肝心の中身の方ですが、戦前の日本を舞台にしたスパイ小説(短編集)です。

 スパイ養成学校と、そこのボスである中佐が話の軸となるのですが、特にこの中佐の存在感がとてつもなく魅力的ですね。この人が出てくると、あまりの迫力に読んでいる自分までもが背筋を伸ばしてしまいそうなくらいで。

 ただ、ストーリーの中でのこの中佐の関わり方は、それぞれの話ごとに全く趣きを変えているので、存在がよりミステリアスに感じられ、魅力度を増していくのです。

 話ごとに変わるのは中佐の関わり方だけでなく、シチュエーションもストーリーもかなりヴァリエーションに富んでいて、全く関連性がないようにも思うのですが、ただ読み進めていくと、物語の基盤となる部分は全話を通して共通していることがわかるのです。

 そしてミステリ的な面白さも全話共通したもので、派手さはないのだけれど、じっくりと読ませてくれるし、それでいて息つかせぬほどのスリルや捻りの効いた驚きなどを味わうことができるので、これはもう良作という言葉がピッタリな作品でした。

 ただ、“かなりの評価を受けた作品だ”というのを知った上で、期待した上で読んだからか、それほどの傑作を読んだという読後感はありませんでした。もちろんその評価に値するくらいに面白かったのだけれど、クライマックスの盛り上がり的なものや読み切った感が乏しかったとでもいいましょうか。

 そうしたら、現在雑誌の方で続編を連載中とのことでして、つまりは今作で完結したわけではなかったので、この読後感にも納得できました。というか、これで完結しなかったことがもうホントに嬉しかったですねェ。
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  > 個人的評価 : ★★★★★ ☆☆☆☆☆


   本格ミステリ度 : ★★★★    鬼畜グログロ度 : ★★
   ビックリ驚愕度 : ★★★       おどろおどろ度 : ★★
   熱アクション度 : ★★        主キャラ魅力度 : ★★★★
   恋愛ラブラブ度 : ★         人間味ドラマ度 : ★★★
   下ネタエッチ度 : ★         感涙ウルウル度 : ★★
   衝撃バカミス度 : ★★       気軽に読める度 : ★★★

  * <個人的評価&項目別評価>の説明はこちら!


  【 “柳広司” 関連記事 】

  > No.806 「ラスト・ワルツ」
  > No.787 「ナイト&シャドウ」
  > No.679 「楽園の蝶」
  > No.532 「パラダイス・ロスト」
  > No.520 「怪談」

  > No.463 「ロマンス」
  > No.339 「キング&クイーン」
  > No.243 「ダブル・ジョーカー」
  > No.172 「虎と月」
  > No.162 「ジョーカー・ゲーム」


  NEXT MYSTERY ⇒⇒⇒⇒ 「笑うヤシュ・クック・モ」 沢村凛

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  >>> 「このミス」完全読破 説明&読破本リスト <<<

2009年3月17日 (火)

『ブラザー・サン シスター・ムーン』 恩田陸 > 「このミス」完全読破 No.161

「このミステリーがすごい!」完全読破 No.161

 『ブラザー・サン シスター・ムーン』 恩田陸

   「このミス」2010年版 : 投票数0

   受賞(候補) :

   総合ランキング :

   年度ランキング :

   読始:2009.2.24 ~ 読終:2009.2.24

   読んだ時期 : 「このミス」ランキング発表"前"

   読んだ版 : 単行本 <2009年1月>

ブラザー・サン シスター・ムーン (河出文庫)ブラザー・サン シスター・ムーン (河出文庫)
恩田 陸

河出書房新社 2012-05-08
売り上げランキング : 18892

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 2008-2009年版と、現在「このミス」に2年連続でランクイン中の恩田陸の新作です。

 ただ今回の作品は“スタンダードな青春小説”と銘打っているので、「このミス」の対象とはジャンル的にかけ離れているようでしたが、でも実際に読んでみないことにはわからないので、実際に読んでみました。

 そしたらこれがまたシンプルな創りの作品でした。

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 恩田陸の作品はこれまで3作読んでいるのですが、いずれの作品も、謎が多く不安定な場所からスタートし、進むべき道がモヤに掛かって見にくい中で、登ったり下ったり時には斜めになりながら魅力的な道を踏みしめていくと、そこには広々と開放的な空間があったり、感覚が失われるほどの暗闇に迷いこんだり、突如落とし穴に突き落とされたりと、紆余曲折ある道を辿るように楽しませてもらいました。

 ところがこの作品は、スタートの時点から遥か先の方まで障害物などなく見渡せて、「でも恩田陸だからな~」と注意深く歩んでいくも、結局そのまま真っ直ぐにゴールまで辿り着いてしまった、といった感じでしょうか。だからいつもとは別の意味で驚いてしまいました。

 それほどに、ストーリー的にも盛り上がり的にも仕掛け的にも何にもない作品でしたが、ただこの作品の場合、“「何にもない」がある”(by 「よつばと!」)のですねェ。

 この作品全体を漂う空気感といいますか、他人のごく平凡な人生の一部分を覗き見している感じといいますか、この何でもない話が、だからこそ面白く、というか、自然に心の中に染み入るようにこの作品を楽しむことができたのです。

 なので、「このミス」にはランクインどころか1票も入らないとは思いますが、それでも自分としては読んで大満足でしたね。


  > 個人的評価 : ★★★☆☆ ☆☆☆☆☆


   本格ミステリ度 : ★         鬼畜グログロ度 : ★
   ビックリ驚愕度 : ★         おどろおどろ度 : ★
   熱アクション度 : ★         主キャラ魅力度 : ★★
   恋愛ラブラブ度 : ★★★      人間味ドラマ度 : ★★★
   下ネタエッチ度 : ★★       感涙ウルウル度 : ★★
   衝撃バカミス度 : ★         気軽に読める度 : ★★★★★

  * <個人的評価&項目別評価>の説明はこちら!


  【 “恩田陸” 関連記事 】

  > No.1121 「ドミノin上海」
  > No.0954 「八月は冷たい城」(後日更新予定)
  > No.0953 「七月に流れる花」

  > No.0814 「EPITAPH東京」
  > No.0719 「雪月花黙示録」
  > No.0635 「夜の底は柔らかな幻」
  > No.0508 「夢違」
  > No.0317 「私の家では何も起こらない」

  > No.0209 「訪問者」
  > No.0161 「ブラザー・サン シスター・ムーン」
  > No.0131 「きのうの世界」
  > No.0065 「中庭の出来事」
  > No.0064 「Q&A」


  NEXT MYSTERY ⇒⇒⇒⇒ 「ジョーカー・ゲーム」 柳広司

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  >>> 「このミス」完全読破 説明&読破本リスト <<<

2009年3月16日 (月)

「このミス2010年版」月別ランクイン候補作品(09年3月)

 「2009年版」に引き続いて、「このミステリーがすごい!2010年版」でも“ランキング発表前に対象作品を読んでしまおう!”というのをやってみようと思います。

 それで、日頃から“どんな作品がランクインしそうかな?”って色々とチェックしているので、どうせならそれを発売された月別にまとめてしまおう!ということで始めたのがこの「月別ランクイン候補作品」です。

 ここでは、とりあえず「このミス」の対象になりそうな作品をピックアップして、“作者の過去実績”や“なんとなくの前評判”を元に、推測されるランクインの可能性ごとに3段階に分けて並べています。

 なお、これを書いている時点では作品をまだ読んでいない状況になると思うので、この3段階の分類は、作品を読んだ上で決めたものではありませんので、その点ご了承ください。

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 >> 2009年3月発売の最有力候補っぽい作品 <<


 【 疑心 隠蔽捜査3 / 今野敏 】

疑心―隠蔽捜査〈3〉疑心―隠蔽捜査〈3〉
今野 敏

新潮社 2009-03
売り上げランキング : 157

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  > 米大統領訪日の方面警備責任者を命じられた竜崎のもとに、
  > 専用機AF1の到着する羽田空港でのテロの情報が。
  > あの『果断』に続くシリーズ第三弾登場!


 No.57「隠蔽捜査」 No.72「果断 隠蔽捜査2」に続く、シリーズ待望の第3弾です。

 この前2作では、「このミス」では20位→4位と大幅にジャンプアップしていますし、ドラマ化されるなどこのシリーズに対する注目度もかなりのものなので、今作にも上位ランクインが期待されるところです。

 ただ、「果断」が4位と高順位だったのは、警察小説としての面白さに加え、ミステリ的な要素も評価されてのものでした。

 なので、警察小説としてだけでもランクインを期待できますが、上位に入ることができるかどうかは、ミステリ要素がどのくらい注入されているか、そしてそれがどのくらい魅力的か、といった部分が大きく関わってきそうですかね。

 なおこのシリーズは、「果断」「疑心」のあらすじを読んだだけでも第1作「隠蔽捜査」のネタバレとなってしまうので、あまり情報を仕入れない状態で第1作から順番に読んでいくことをオススメします。


 [ この作品の当ブログ感想記事はこちら!! ]
          >> No.188 『疑心 隠蔽捜査3』 今野敏


 【 「このミス」20位以内ランクイン実績 】
   * タイトル部分のリンク先は、当ブログの感想ページです

   > 「蓬 莱」  1995年版 18位
   > 「隠蔽捜査」  2006年版 20位
   > 「果断 隠蔽捜査2」  2008年版 4位

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 【 秋期限定栗きんとん事件 / 米澤穂信 】

秋期限定栗きんとん事件〈上〉 (創元推理文庫)秋期限定栗きんとん事件〈上〉 (創元推理文庫)
米澤 穂信

東京創元社 2009-02
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  > 船戸高校新聞部1年の瓜野君は、
  > 頻発する小規模な放火事件にある共通項を発見し、
  > 独自に調査を開始する。
  > 1年間の放火魔追跡の果てに現れた真実は?
  > シリーズ怒濤の第3弾!


 No.39「春期限定いちごタルト事件」 No.40「夏期限定トロピカルパフェ事件」に続く、“小市民シリーズ”待望の第3作目です。

 「今年中には出るだろう」と言われ続けて何年も経っていた作品で、その間に仮タイトルが二転三転したくらいなので、まさしく“待望”だし、実際に発売されただけでも嬉しくなってしまいますねェ。

 第1作「春期限定~」がランク外だったのに対し、第2作「夏期限定~」が10位と高評価だったのは、やはりミステリ度やそのレベルの違いによるもので、それは実際に読み比べてみればわかると思います。

 なので、この作品も、どのくらいのミステリ度&レベルであるかが、ランクインするかどうか、あるいは高順位となるかどうかに大きく関わってきそうです。

 それに、このシリーズはミステリ部分が作品のメインの魅力というわけでもないので、やはり“面白いかどうか”よりも、ミステリ的度合いにより順位が決まりそうな感じが。

 ちなみに、今回は上下巻の2冊組で(これが延期に次ぐ延期となった理由のひとつであるそうです)、上巻は2月、下巻は3月と分けて発売されました。それで当初は月別ランクイン候補作品予想(09年2月)の方に載せていたのですが、3月のラインナップがかなり手薄な感じだったので、こちらに移動させてしまいました。


 【 「このミス」20位以内ランクイン実績 】
   * タイトル部分のリンク先は、当ブログの感想ページです

   > 「さよなら妖精」  2005年版 20位
   > 「犬はどこだ」  2006年版 8位
   > 「夏期限定トロピカルパフェ事件」  2007年版 10位
   > 「ボトルネック」  2007年版 15位
   > 「インシテミル」  2008年版 10位

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 >> 2009年3月発売の有力候補っぽい作品 <<

 * 作品名部分のリンク先は、「Amazon」の詳細ページです
 * 作者名横のカッコ内は、過去の「このミス」20位以内ランクイン作品数


   ラストラン / 志水辰夫 (6作)
   四隅の魔 死相学探偵2 / 三津田信三 (2作)
   玻璃の家 / 松本寛大  <感想記事はこちら>
   プラ・バロック / 結城充考  <感想記事はこちら>

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 >> 2009年3月発売の候補っぽい作品 <<

 * 作品名部分のリンク先は、「Amazon」の詳細ページです
 * 作者名横のカッコ内は、過去の「このミス」20位以内ランクイン作品数


   捨て猫という名前の猫 / 樋口有介 (2作)
   望郷の道 / 北方謙三
   ホペイロの憂鬱 JFL篇 / 井上尚登
   残酷号事件 / 上遠野浩平
   ふたり狂い / 真梨幸子
   トレジャー・キャッスル / 菊地秀行  <感想記事はこちら>
   アンダードッグ / 海野碧
   悪いことはしていない / 永井するみ
   あれから / 矢口敦子
   天空高事件 / 椙本孝思
   ヨコハマB-side / 加藤実秋
   動物園で逢いましょう / 五條瑛
   入らずの森 / 宇佐美まこと
   殺し合う家族 / 新堂冬樹
   前科あります。 / 津流木詞朗
   祈りのギブソン / 久間十義
   図書館の女王を捜して / 新井千裕
   ブロードアレイ・ミュージアム / 小路幸也
   苛めの時間 / 井上淳
   織姫パズルブレイク / 矢野龍王
   偽りのスラッガー / 水原秀策
   ショットバー / 麻生幾
   臓物大展覧会 / 小林泰三
   一角獣幻想 / 中島望
   二重人体 / 安田賢司
   タロットの迷宮 / 小笠原慧
   死 夢 / 小笠原慧
   わくらば追慕抄 / 朱川湊人
   ロミオとインディアナ / 永瀬直矢
   猿駅/初恋 / 田中哲弥
   ミサキラヂオ / 瀬川深
   ロロ・ジョングランの歌声 / 松村美香
   オバマ暗殺 / 柘植久慶
   空白の桶狭間 / 加藤廣
   宮野村子探偵小説選〈1〉 / 宮野村子
   宮野村子探偵小説選〈2〉 / 宮野村子

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  「このミス2010年版」月別ランクイン候補作品(09年2月) <<<

  >>> 「このミス2010年版」月別ランクイン候補作品(09年4月)


 「月別ランクイン候補作品」の一覧は、「このミス」完全読破 読破本リストにてご覧ください。

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  >>> 「このミス」完全読破 説明&読破本リスト <<<

2009年3月13日 (金)

『無貌伝 ~双児の子ら~』 望月守宮 > 「このミス」完全読破 No.160

「このミステリーがすごい!」完全読破 No.160

 『無貌伝 ~双児の子ら~』 望月守宮

   「このミス」2010年版 : 投票数0

   受賞(候補) : 「メフィスト賞」受賞

   総合ランキング :

   年度ランキング :

   読始:2009.2.17 ~ 読終:2009.2.24

   読んだ時期 : 「このミス」ランキング発表"前"

   読んだ版 : ノベルス <2009年1月>

無貌伝~双児の子ら~ (講談社文庫)無貌伝~双児の子ら~ (講談社文庫)
望月 守宮

講談社 2012-10-16
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 この「無貌伝 ~双児の子ら~」は、第40回メフィスト賞受賞作品です。

 「このミス」とメフィスト賞といえば、過去の受賞39作品中、ランクインしたのはほんのわずかで、No.71「煙か土か食い物」舞城王太郎以来7年間もランクイン作品がないので、あまり相性良いとはいえません。

 ただ、「天帝のはしたなき果実」(古野まほろ)は38位にまで食い込んでいるし、昨年受賞した3作品中2作品には票が入っているので、全くの対象外となっているわけではありません。

 それにこの作品は、近年の受賞作の中でもかなり評価が高いようなので、久々のメフィスト賞受賞作の「このミス」ランクインの期待も込めて楽しみに読んでみました。

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 それで内容の方なのですが、人と“ヒトデナシ”と呼ばれる怪異が共存しているという架空世界が舞台となっています。

 この“ヒトデナシ”という奇怪で不気味な存在に、昭和初期の日本を思わせるような舞台設定も加わって、序盤は妖しい雰囲気が霧のように立ち込めている中を読み進んでいくようでした。

 しかし、話が進むにつれて、驚くほどに正統派な本格ミステリ的展開となっていくのです。でもその本格ミステリ的な部分には、怪奇的な設定が見事なまでに食い込まれているので、この融合具合によりトリックにも独特な味が生み出されていました。

 ただこの作品の魅力というのは、本格ミステリ部分だけではありません。

 探偵にその助手、そしてライバルである怪盗という、とてもオーソドックスな人物たちがメインとして登場するのですが、彼らは皆、作品の冒頭からキャラクターが出来上がっているのではなく、作品を読んでいくにつれて徐々にそれぞれのキャラクターが形作られていく、といった感じなのです。

 そんなわけなので、そういった登場人物達の成長物語的なところもこの作品の楽しみ所だと思います。

 あと、この作品で個人的に一番盛り上がった所は、本文内よりも、奥付の次のページでしたね。

 ここを見たらもう「おぉー!」となりましたから。その内容を書いてもネタバレになるわけではないのですが、まあ知らない方がこの作品をより楽しめるだろうから、あえて書かないでおきましょう。
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  > 個人的評価 : ★★★★★ ★★☆☆☆


   本格ミステリ度 : ★★★★★   鬼畜グログロ度 : ★★
   ビックリ驚愕度 : ★★★       おどろおどろ度 : ★★★★
   熱アクション度 : ★★★       主キャラ魅力度 : ★★★★
   恋愛ラブラブ度 : ★★        人間味ドラマ度 : ★★
   下ネタエッチ度 : ★★        感涙ウルウル度 : ★★
   衝撃バカミス度 : ★★★      気軽に読める度 : ★★★

  * <個人的評価&項目別評価>の説明はこちら!


  【 “望月守宮” 関連記事 】

  > No.254 「無貌伝 ~夢境ホテルの午睡~」
  > No.160 「無貌伝 ~双児の子ら~」


  NEXT MYSTERY ⇒⇒⇒⇒ 「ブラザー・サン シスター・ムーン」 恩田陸

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  >>> 「このミス」完全読破 説明&読破本リスト <<<

2009年3月11日 (水)

JUVES / Diggy-MO' (CD)

JUVES/VEGA(初回生産限定盤)(DVD付)JUVES/VEGA(初回生産限定盤)(DVD付)
Diggy-MO’ JUNKOO

SE(SME)(M) 2009-02-04
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 SOUL'd OUTのメインMC・Diggy-MO'のソロ・シングル第2弾がこの「JUVES」です。

 とにかく、この歌を1回でも聴いてもらえれば、あまりにとんでもないインパクトに衝撃を受けてしまうこと間違いなしです。

 まあ、だからといってこの歌が好きになる人は少数派かもしれませんが、それでも誰もがこのインパクトに度肝を抜かれてしまうことだけは確実でしょう。


 Aメロから何を言っているのかわからない速射砲でたたみ掛け、歌が進んでいくごとに熱が帯びていき、その勢いで突入するサビがこれまた右脳をビンビンに刺激するようなアバンギャルドさで、このイカレっぷり、キレっぷりには圧倒されるくらいに感動してしまいました。

 これまではSOUL'd OUTのシングルしか聴いたことがなかったので、前にもアルバムなどでこういったタイプの作品を発表していたのかもしれませんが、自分はこのタイプの歌は初めて体感したので、聴いていて嬉しくて笑いが止まらなかったくらいでしたからね。ホントに最高です。


 それでこの歌は、アーティストの都合により.....、ってことで歌詞は掲載されていないのですが、所々で日本語らしき単語が聞こえてくるものの、大半は何を言っているのかわからないのです。

 そんなところや、テンションの異常な上がりっぷり、イっちゃってるようなパフォーマンスなどから、“Hip Hop版・マキシマム ザ ホルモン”といった印象を受けてしまいました。

 なので、マキシマム ザ ホルモン好きの方なんかにも、ジャンルは違うとはいえオススメです。


 というわけで、もうかなりの気に入りようなので、年末に発表予定の「MDB的ミュージックアウォード2009」(昨年の記事はこちら)でも、上位ランクインが有力ですね(まあ、このランキングなど誰も注目していないとは思いますが)。

 ただ、発表までまだ何ヶ月もあるので、それまでに聴きすぎて飽きてしまう可能性もあるのです。飽きるまでいかなくても、最初に聴いた頃のインパクトが薄れてしまうのは間違いないので、果たして年末時点でのこの歌の評価はどうなっているのでしょうか。

 もし10月発売とかだったら、1位は間違いなかっただろうけど(まあ、このランキングなど誰も注目していないとは思いますが)。

2009年3月10日 (火)

『倒錯の死角』 折原一 > 「このミス」完全読破 No.153

「このミステリーがすごい!」完全読破 No.153

 『倒錯の死角』 折原一

   「このミス」1988年 : 12位

   受賞(候補) :

   総合ランキング : 「本格ミステリ・ベスト100」 58位

   年度ランキング :

   読始:2009.1.19 ~ 読終:2009.1.23

   読んだ時期 : 「このミス」ランキング発表"後"

   読んだ版 : 文庫本 <1999年10月>

倒錯の死角(アングル)―201号室の女 (講談社文庫)倒錯の死角(アングル)―201号室の女 (講談社文庫)
折原 一

講談社 1999-10
売り上げランキング : 169946

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 アッと驚くどんでん返し系の叙述ミステリというのは、なるべく“そういった作品だ”ということを知らずに読んだ方が楽しめるはずです。

 なので、この“「このミス」完全読破”で感想を書くときも、果たしてそういったタイプの作品であることを書くべきかどうなのか、といったところで悩んでしまうのですよね。

 ただ、中には“叙述トリックの名手”と呼ばれる作家も存在しまして、そういった作家の作品であれば、事前に作品のタイプを知っていたとしても、“騙されるか、見破るか”といった楽しみ方も出来るし、そう易々と見破ることが出来ないくらいにレベルが高いので、安心して“叙述ミステリだ”と書くことが出来るのです。

 そしてこの折原一も、そんな“叙述トリックの名手”として名前の挙がる作家なのです。

 そんなわけなので読むのが楽しみだったわけですが、ただ、最初にどの作品を読むかで少し迷ってしまいました。

 というのも、「倒錯のロンド」という作品で江戸川乱歩賞に応募し、プロの作家となったのですが、最終候補に残ったものの受賞には至らなかったため、この作品でデビューとはならなかったのです。

 その後に手直しされて発表され、「このミス」にもランクインしたわけですが、その前に長編処女作としてすでに発表されていたのがこの「倒錯の死角」だったのです。

 つまり、作品が発表された順番でいくと「倒錯の死角」→「倒錯のロンド」なのだけれど、作品が書かれた順番でいくと「倒錯のロンド」→「倒錯の死角」となるので、どちらを先に読むべきか、これが結構難しい選択となったのですねェ。

 まあ、実際にはそれほど悩みはしませんで、やはり発表順というか、まあ“「このミス」完全読破”ということもあって、「このミス」にランクインした順番に読んでいくことに決めたのでした。

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 というわけでこの作品は、“倒錯シリーズ”の第一弾となる作品です(もちろん書かれた順番でいけば第二弾ですが)。

 “叙述トリックの名手”による評価の高い作品というわけで、“騙されるか、見破るか”といった気持ちで読んでみたのですが、やはりトリックが複雑に絡み合っていて、どこがメインの騙しの部分なのかさえも掴ませないほどの巧妙さだったので、ものの見事に騙されてしまいました。

 ただそれだけに、No.2「葉桜の季節に君を想うということ」歌野晶午No.16「ハサミ男」殊能将之のような“単純ながらも切れ味鋭い驚き”というのはなかったし、そのトリックもかなり強引な印象も受けました。

 なので、この作品は叙述ミステリの玄人向けかな?とも思うのですが、それでも叙述ミステリ初心者の方が評論家ぶらずに素直に楽しめそうな感じだし、どちらとも言えないですかね。

 まあ“どちらにもオススメ”といった結論でいいのではないでしょうか。
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  > 個人的評価 : ★★★★☆ ☆☆☆☆☆


   本格ミステリ度 : ★★★★     鬼畜グログロ度 : ★★
   ビックリ驚愕度 : ★★★★     おどろおどろ度 : ★★
   熱アクション度 : ★★        主キャラ魅力度 : ★★
   恋愛ラブラブ度 : ★★★★     人間味ドラマ度 : ★★
   下ネタエッチ度 : ★★★★     感涙ウルウル度 : ★★
   衝撃バカミス度 : ★★★      気軽に読める度 : ★★★

  * <個人的評価&項目別評価>の説明はこちら!


  【 “折原一”関連記事 】

  > No.691 「潜伏者」
  > No.512 「帝王、死すべし」

  > No.407 「追悼者」
  > No.338 「赤い森」
  > No.325 「倒錯のロンド」
  > No.231 「逃亡者」
  > No.153 「倒錯の死角」


  NEXT MYSTERY ⇒⇒⇒⇒ 「オリンピックの身代金」 奥田英朗

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  >>> 「このミス」完全読破 説明&読破本リスト <<<

2009年3月 6日 (金)

『黒い仏』 殊能将之 > 「このミス」完全読破 No149

「このミステリーがすごい!」完全読破 No.149

 『黒い仏』 殊能将之

   「このミス」2002年版 : 12位

   総合ランキング :

   年度ランキング : 「ベストSF2001」 8位
              「本格ミステリ・ベスト10」 14位

   読始:2009.1.5 ~ 読終:2009.1.6

   読んだ時期 : 「このミス」ランキング発表"後"

   読んだ版 : 文庫本 <2004年1月>

黒い仏 (講談社文庫)黒い仏 (講談社文庫)
殊能 将之

講談社 2004-01
売り上げランキング : 155690

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 No.144「殺戮にいたる病」我孫子武丸の時の反省から、ネタバレを目にしてしまう可能性の高そうな作品を早めに読んでしまうことにしたのですが、No.146「螢」麻耶雄嵩に続いて手にしたのがこの「黒い仏」です。

 まあ、「殺戮にいたる病」や「螢」に比べたらネタバレを見てしまう可能性はそれほど高くはなさそうですが、ただ、この作品のラストはかなりの“とんでもなさ”であると有名なので、そういった作品が好きな自分にとっては、ネタバレを見てしまう前に何としてでも読んでしまいたかったのです。

 ちなみに、2009年に入ってからは感想記事をナンバリング順(つまりは読破順)には更新していないのですが、ここ最近の感想記事を更新順に並べてみると、

 No.158 『殺人鬼フジコの衝動』 真梨幸子
 No.159 『仮想儀礼』 篠田節子
 No.144 『殺戮にいたる病』 我孫子武丸
 No.145 『バッド・チューニング』 飯野文彦
 No.146 『螢』 麻耶雄嵩
 No.147 『殉教カテリナ車輪』 飛鳥部勝則

 と、かなり個性的で問題作的な賛否両論真っ二つになる作品ばかりがずらりと並ぶことになりました(「仮想儀礼」だけはちょっとタイプがちがうかもしれませんが)。

 そんな流れのトリを務めるのに、これ以上ないっていうくらいの作品が、この「黒い仏」なのですねェ。

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 この作品は、「美濃牛」に続く“名探偵・石動戯作”シリーズの第2作なので、クライマックスまでは普通に本格ミステリ風に進んでいきます。

 ところが、ラストの謎解き場面がやってくると、それまでの話を大破壊してしまうようなとんでもなき真相が明らかにされるのです!まあ評判通りに物凄い破壊力でした。

 ただ、この作品がどういったタイプの作品なのか全く知らない状態で読んでいた方が、ビックリ度・破壊力は半端じゃないものになっていたかもな~、とちょっと残念がりもしましたが、でも知らずに読んでいたら、それまでの話を楽しみラストを期待していたこの気持ちを裏切られたと感じていたかもしれませんからね。まあ自分としては、どっちにしても楽しめていたのではないかと思いますけど。

 それと、真相(というかネタ)が明らかにされて、もうそこでドーンと終えてしまってもいいくらいなのに、その後も特別なことなどなかったかのように律儀にきっちりとトリックを解説しようとするその姿勢が、なんともバカらしくて面白かったですねェ。

 というわけで、評判通りのとんでもない作品でしたが、“これからこの作品を初読する人(これからこの衝撃を味わう人)が羨ましいなぁ”と思ってしまうほどの傑作でもありました。


  > 個人的評価 : ★★★★★ ☆☆☆☆☆


   本格ミステリ度 : ★★★★★   鬼畜グログロ度 : ★★
   ビックリ驚愕度 : ★★★★★    おどろおどろ度 : ★★★
   熱アクション度 : ★★        主キャラ魅力度 : ★★★
   恋愛ラブラブ度 : ★★        人間味ドラマ度 : ★★
   下ネタエッチ度 : ★★       感涙ウルウル度 : ★
   衝撃バカミス度 : ★★★★★   気軽に読める度 : ★★★

  * <個人的評価&項目別評価>の説明はこちら!


  【 “殊能将之”関連記事 】

  > No.951 「キマイラの新しい城」
  > No.883 「殊能将之 未発表短篇集」
  > No.149 「黒い仏」
  > No.054 「鏡の中は日曜日」
  > No.016 「ハサミ男」


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2009年3月 4日 (水)

『殉教カテリナ車輪』 飛鳥部勝則 > 「このミス」完全読破 No.147

「このミステリーがすごい!」完全読破 No.147

 『殉教カテリナ車輪』 飛鳥部勝則

   「このミス」1999年版 : 12位

   受賞(候補) : 「鮎川哲也賞」受賞

   総合ランキング :

   年度ランキング : 「本格ミステリ・ベスト10」 3位

   読始:2008.12.24 ~ 読終:2008.12.30

   読んだ時期 : 「このミス」ランキング発表"後"

   読んだ版 : 単行本 <1998年10月>

殉教カテリナ車輪 (創元推理文庫)殉教カテリナ車輪 (創元推理文庫)
飛鳥部 勝則

東京創元社 2001-07
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 この作品は、第9回鮎川哲也賞受賞作にして、飛鳥部勝則のデビュー作です。

 そしてその内容は、美術ミステリ・絵画ミステリといったところでしょうか。

 ただ普通の美術ミステリというのではなくて、この作品がとても珍しいのは、図像解釈学(イコノロジー)という手法を用いてミステリ作品を仕上げているということなのです。

 この図像解釈学というのは、作中のセリフから引用してみますと、「作品の主題や意味だけでなく、作品が創られた理由や意味をも探り、歴史の中に芸術を跡付ける。図像解釈学は、図像学よりもっと総合的な学問だと思ってくれればいい」、ということです。

 と書いてみても意味はよく解からないと思いますが(こう言われた主人公も理解できていなかったし)、つまりは、その絵が描かれた背景、それは時代的なものだったり、描いた画家の個人的なものだったり、そういった奥深い部分まで掘り下げて研究しようという学問なのです。

 まあこれでも解かりにくさは変わらなそうですが、とにかく説明するよりも実際に読んでもらえれば、この図像解釈学のこと、そして図像解釈学とミステリとの融合具合の面白さはすぐに解かってもらえるのではないかと思います。

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 というように、図像解釈学という特殊な効果でもって独特な味わいのミステリ作品となっているのですが、ただその一方で、オーソドックスなミステリ小説としての部分も展開していきます。

 こちらの方もなかなか読み応えあって面白かったのですが、やはり読後に印象に残っているのは図像解釈学が絡んだ部分ですね。

 それは、主人公がその中から真相を見出そうと熱心に検証することになる絵が、とても奇妙で妖しくて薄気味悪い感じなのに、なぜだかわからないんだけど惹かれてしまう、といったところも理由の一つなのではないでしょうか。

 そしてその絵というのは、作品の冒頭(カラー)や作中(白黒)などに掲載されているので実際に見ることができるのですが、なんとこの絵は、作者自身が描いたものなのです。この“自分が描いた絵を利用してミステリ小説を構築する”という企みが、なんとも斬新で面白いですよね(ちなみに、文庫版の表紙絵は作者による作品ではないです)。

 全体的には結構地味めで渋くて玄人好みな感じもしますが、一度読んでみたらこの絵の印象と共に強烈に記憶に焼き付くと思うので、曲者好きの方なんかに特にオススメです。
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  > 個人的評価 : ★★★★★ ☆☆☆☆☆


   本格ミステリ度 : ★★★★★   鬼畜グログロ度 : ★★
   ビックリ驚愕度 : ★★★       おどろおどろ度 : ★★★★
   熱アクション度 : ★★        主キャラ魅力度 : ★★★
   恋愛ラブラブ度 : ★★★★     人間味ドラマ度 : ★★
   下ネタエッチ度 : ★★       感涙ウルウル度 : ★★
   衝撃バカミス度 : ★★       気軽に読める度 : ★★

  * <個人的評価&項目別評価>の説明はこちら!


  【 “飛鳥部勝則” 関連記事 】

   > No.388 「黒と愛」
   > No.147 「殉教カテリナ車輪」
   > No.103 「堕天使拷問刑」


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2009年3月 3日 (火)

週刊少年ジャンプ新連載! 「フープメン」 川口幸範

フープメン 1 (ジャンプコミックス)フープメン 1 (ジャンプコミックス)

集英社 2009-07-03
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 「べるぜバブ」に続く新連載第2弾が、このバスケ漫画「フープメン」(川口幸範)です。

 バスケ漫画といえば、3ヶ月前に「黒子のバスケ」が始まったばかりなので、バスケ漫画が同時に2作品も連載されることとなりました。

 ただでさえ今のジャンプはスポーツ物が不作となっていて、展開的にもうすぐ終わりそうな「アイシールド21」の後釜も全然見つかる素振りもないという状況なのに、支持層を奪い合って共倒れの危険が高いこの“同競技漫画2作投入”となったのは、かなり予想外で驚かされました。

 そのことから考えると、「黒子のバスケ」が連載開始前の時点では編集部的にあまり評価されておらず、早期での打ち切りを見越しての翌クールでの「フープメン」投入決定だったのかな?と勘繰ってしまいます。

 がしかし、そもそもそんな低評価の作品を連載させようなどとは思っていないだろうし、“早期打ち切りを見越す”なんてこともさすがにしないでしょうねェ。

 となると、同じバスケを題材とした漫画がほぼ同時期に連載開始となるマイナス面を考慮した上で、それでも成功する可能性に賭けてみるだけものがこの2作品にはある!という自信の表れなのだ、と見る方が正しいのではないでしょうか。


 そしてその期待に応えるかのように、この第1話はなかなか面白くて、脇目を振ることなく一気に読まされてしまいました。

 これはやはり、主人公・佐藤雄歩の主人公としての特徴・特性が一体何なのかという部分で興味を引かれ、そしてそれが判明した後でその特性を活かした活躍ぶりを楽しむという、この構成により作品世界に惹きつけられたのだと思います。

 そして「黒子のバスケ」との比較でも、「黒子のバスケ」の方はバスケという競技をあくまでメインとして話を進めているのに対し、この「フープメン」の方は、「青春成長バスケ」「素晴らしき青春!!」などの煽りからもわかるように、競技以外の部分にも力が入っているようでして、第1話を読んだ時点ではその部分にも魅力を感じたので、方向性としては別物のように思いましたね。

 それに絵柄などの作風がずいぶんと違うし、バスケが題材という以外はそれほど共通点があるわけではなさそうなので、両立は充分可能なのではないでしょうか。

 ただ、「黒子のバスケ」の方は、第1話の時点で“キセキの世代”という設定を出すなどして第2話以降への興味を持たせようとしていたのに対し、「フープメン」の方は目標設定や今後の流れなどが提示されていなかったので、まだちょっと第2話以降を読んでみないことにはわからない感じですかね。

 まあ自分としては、ここ数年の新人漫画家による新連載第1話と比べると、「黒子のバスケ」「フープメン」もどちらもかなり面白く読めたので、相乗効果で人気がさらにアップするくらいにまでなってくれたら嬉しいですけどねェ。

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 【「川口幸範」関連記事】

  > <JC1巻買い> 「ST&RS -スターズ-」 竹内良輔 ミヨカワ将 (12.1.30)

  > 赤マルジャンプ2010WINTER(「カクバナ」) (10.1.10)

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  > <JC1巻買い> 「フープメン」 川口幸範 (09.7.10)


 【「2009年の新連載」関連記事】

  > 「新世紀アイドル伝説 彼方セブンチェンジ」 麻生周一 (09.11.16)
  > 「ねこわっぱ!」 松本直也 (09.11.9)

  > 「賢い犬リリエンタール」 葦原大介 (09.9.14)
  > 「保健室の死神」 藍本松 (09.9.7)

  > 「わっしょい!わじマニア」 わじまさとし (09.7.18)
  > 「鍵人-カギジン-」 田中靖規 (09.7.14)
  > 「あねどきっ」 河下水希 (09.7.6)

  > 「AKABOSHI -異聞水滸伝-」 天野洋一 (09.5.18)
  > 「めだかボックス」 西尾維新 暁月あきら (09.5.11)

  > 「フープメン」 川口幸範 (09.3.3)
  > 「べるぜバブ」 田村隆平 (09.2.23)

  > 「ぼっけさん」 西義之 (08.12.16)
  > 「黒子のバスケ」 藤巻忠俊 (08.12.9)
  > 「マイスター」 加地君也 (08.12.2)

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2009年3月 2日 (月)

『螢』 麻耶雄嵩 > 「このミス」完全読破 No.146

「このミステリーがすごい!」完全読破 No.146

 『螢』 麻耶雄嵩

   「このミス」2005年版 : 11位

   受賞(候補) : (「本格ミステリ大賞」候補)

   総合ランキング : 「本格ミステリ・ベスト・オブ・ベスト10(1997-2016)」 10位
              「1996-2005オールベスト「本格」ランキング」 13位
              「本格ミステリ・オールタイムベストアンケート」 26位

   年度ランキング : 「本格ミステリ・ベスト10」 3位

   読始:2008.12.27 ~ 読終:2008.12.28

   読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"後"

   読んだ版 : 文庫本 <2007年10月>

螢 (幻冬舎文庫)螢 (幻冬舎文庫)
麻耶 雄嵩

幻冬舎 2007-10
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 No.144「殺戮にいたる病」我孫子武丸の時の反省から、ネタバレを目にしてしまう可能性の高そうな作品を早めに読んでしまうことにしたのですが、それでまず手に取ったのがこの「螢」です。

 この作品も、アッと驚くどんでん返し系の作品として必ず名前が挙がるほどに有名なのですが、まあ麻耶雄嵩ということもあって評価が賛否両論真っ二つになることから、とにかく話題になりがちなので、ネタバレの可能性もかなり高そうですからね。

 内容の方は、大学のサークル一行が訪れた館(もちろんすぐに陸の孤島化)で殺人事件が起きるという、典型的な“館モノ”です。

 そんな中でクライマックスではアッと驚くトリックが判明するのですが、やはり評判になるだけあって、切れ味鋭く巧みな技でした。

 まあ、大筋としてはなんとなく予感出来てしまいそうなものなのですが、伏線の張り巡らせ方がなかなか周到で、思わず二度読みしたくなること間違いなしです。自分もNo.68「イニシエーション・ラブ」乾くるみ以来の二度読みをしてしまいましたから。

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 ただ、このトリックだけでは、★5つの満点評価とはさすがになりません。

 実はこれと並行する形でもう一つのトリックが仕掛けられているのですが、こちらがもうなんとも麻耶雄嵩らしい、とんでもないトリックなのです!!

 これにはホントに驚きましたからね。ただ驚いただけではなくて、今でもその場面を思い出す度に「フフフ.....」とニヤケ笑いしてしまうほどに、なんともバカバカしくも感動的なトリックだったのですから、もうヤラレまくりでした。

 だけどこのトリックは、こういったアッと驚くどんでん返し系の作品をある程度読んでいないと、その面白さ、斬新さ、バカバカしさが理解できないかもしれません。

 つまりは、そういった作品を読み込んでいて、「絶対に騙されない自信がある!!」という人ほど、このトリックの狙い所がわかるのではないでしょうか。

 とはいえ、やはり麻耶雄嵩作品ですから、理解できたとしても、その評価は大きく分かれるでしょうけどね。バカミスっぽい作品が好きな人ほど楽しむことができると思います。

 というわけで、正統派のトリックも魔球のトリックも味わうことが出来る、とても衝撃的で楽しい作品でした。

 そして「イニシエーション・ラブ」同様に凝りに凝った伏線があるので、読み終わった後にはこちらの考察サイト「黄金の羊毛亭」を見て「こんな仕掛けがあったのか!?」と驚いてみて下さい。エピローグの謎についての解説もありますよ。

(後日追記)
 この記事を書いていた時は★5段階評価でしたが、その後に★10段階評価に変更しました。
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  > 個人的評価 : ★★★★★ ★★★★☆


   本格ミステリ度 : ★★★★★   鬼畜グログロ度 : ★★
   ビックリ驚愕度 : ★★★★★    おどろおどろ度 : ★★★
   熱アクション度 : ★★        主キャラ魅力度 : ★★★
   恋愛ラブラブ度 : ★★        人間味ドラマ度 : ★★
   下ネタエッチ度 : ★★       感涙ウルウル度 : ★★
   衝撃バカミス度 : ★★★★★   気軽に読める度 : ★★★

  * <個人的評価&項目別評価>の説明はこちら!


  【 “麻耶雄嵩”関連記事 】

  > No.825 「あぶない叔父さん」
  > No.793 「化石少女」
  > No.765 「さよなら神様」
  > No.696 「貴族探偵対女探偵」
  > No.454 「メルカトルかく語りき」

  > No.373 「隻眼の少女」
  > No.343 「貴族探偵」
  > No.146 「螢」
  > No.113 「翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件」
  > No.038 「神様ゲーム」


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